原発優遇あからさま 「原子力発電の事業環境整備」を求める電気連会長を批判(経済産業委員会 参考人質疑)
2015/06/09
参院経済産業委員会は9日、電気・都市ガス・熱供給事業の市場を全面自由化する電気事業法等改定案について、電気事業連合会(電事連)の八木誠会長(関西電力社長)らを参考に招き質疑を行いました。
八木氏は「原子力発電は他の電源と比べて優れた特性を有す」とまで述べ「自由化までに国策民営の新たな方向性を示してほしい」と、国に対してさらなる原発優遇策をあからさまに求めました。
日本共産党の倉林明子議員は、電事連が強く要望し、政府が1日に了承した2030年度の電源構成案で明記されている「原子力発電の事業環境整備」について質問。
八木氏は「原子力事業や原子燃料サイクル事業を進める強い気概を持っている」と強調した上で「廃炉等で今後負担が押し寄せてくる」「事業者側が費用を確実に回収できるように」などとして、国にさらなる負担増を求めました。
倉林氏は、福島第1原発事故がなかったかのように原発再稼働、核燃料サイクルに固執し、その負担を国と国民に押しつけることを当然のように主張する八木氏に対し「ひとたび原発事故が起これば、被害の甚大さだけでなくコスト負担も膨大であることが明らかになった」として、原発の即時ゼロを目指すべきだと主張しました。
電気事業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)
〇委員長(吉川沙織君) 電気事業法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、六名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、電気事業連合会会長八木誠君、全国電力関連産業労働組合総連合会長岸本薫君、一般社団法人日本ガス協会会長・一般社団法人日本熱供給事業協会会長尾崎裕君、全国ガス労働組合連合会中央執行委員長辻英人君、東京工業大学特命教授・名誉教授柏木孝夫君及び公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問杉本まさ子君でございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
それでは、議事の進め方について申し上げます。
まず、八木参考人、岸本参考人、尾崎参考人、辻参考人、柏木参考人、杉本参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、参考人、質疑者共に御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず八木参考人にお願いいたします。八木誠参考人。
〇参考人(八木誠君) ありがとうございます。
電気事業連合会の八木でございます。
本日は、このような機会を賜り、誠にありがとうございます。先生方におかれましては、平素、私ども電力会社の事業運営に関しまして多大な御理解、御協力を賜っておりますことに、この場をお借りしまして厚く御礼を申し上げます。
まず初めに、本年三月で東日本大震災から四年が経過いたしましたが、福島第一原子力発電所の事故により、今なお多くの皆様に多大なる御迷惑と御心配、御負担をお掛けしておりますことを、同じ電気事業に携わる者として、改めておわびを申し上げます。
福島の復興につきましては、国の方針の下、一歩一歩取組が進められているところでございますが、私どもといたしましても、更なる復興の進展を切に願うとともに、業界全体でできる限りの支援をしてまいりたいと考えております。
それでは、今回御審議されています電気事業法等の改正案につきまして、私どもの考えを申し上げたいと思います。
電力システム改革につきましては、三段階に分けて進められることとなっていますが、本年四月には、その第一段階である電力広域的運営推進機関が発足し、その運用が開始されたところでございます。
本機関は、広域的な電力運用や需給逼迫時の対応、さらには送配電業務における公平性や透明性を高めていく上で中心的な役割を担うことが期待されており、今後、電力システム改革が進展していく中で、一層その役割が重要になるものと考えております。
私どもは、これまで本機関の発足準備に積極的に協力してまいりましたが、今後は会員会社として、安定供給の確保や中立性の向上といった改革の目的を達成できるよう、円滑な業務運営に貢献してまいりたいと考えております。また、電力システム改革の第二段階に当たる来年の小売全面自由化につきましても、お客様に真の利益となる改革となるよう、詳細制度設計に引き続き協力してまいる所存であります。
その上で、今回の改正法案は、電力システム改革の第三段階として、送配電部門の一層の中立化を図るため、私ども一般電気事業者の送配電部門を法的分離するとともに、小売料金の経過措置の解除、つまり料金規制の撤廃を主たる内容とするものであると理解しております。
さらに、本改正法案は、電気事業のみならず、総合的なエネルギー市場の創設を目指し、ガス事業における小売全面自由化、導管事業の中立性確保及び電力・ガス市場の監視を行う行政組織の新設等を規定するという、エネルギー事業の枠組みを大きく変革するものであると理解しております。
本改革によって、電力市場、ガス市場等への全面的な参入が可能となり、エネルギー市場全体における競争が活性化していくことは、お客様にとってより最適なエネルギーを選択する機会が広がり、望ましいものと考えております。
ただし、小売全面自由化以降、私ども一般電気事業には小売料金規制が課せられることになっており、制度変更に伴う需要家保護策の一環としての暫定的な措置と理解しておりますが、これらの措置は私どもにとって非対称とも言える規制であります。
今回の法改正には、この料金規制の撤廃に係る規定が盛り込まれておりますが、中立公平な競争環境の確保を狙いとする本改革の趣旨に鑑み、諸情勢を総合勘案した上で早期にこれらの措置を撤廃していただくようお願いしたいと思います。
こうした電力システム改革の実施に当たり、実務を担う事業者としましては、お客様の真の利益につながる改革とするためには、いまだに課題や懸念が残されていると考えております。
具体的には、安定供給の仕組み、ルールの整備、電力需給の改善及び原子力事業環境の整備という三つの課題について、その課題解消の実現度合いを検証し、必要な措置を講じつつ進めていく必要があると考えております。
まず、課題の一点目である安定供給の仕組み、ルールの整備について申し上げます。
今回の電事法改正法案は、一般電気事業者の送配電部門を法的に分離する、つまり別会社化することを義務付けるものであります。私どもは、これまで、発送電一貫体制の下で、高品質な電気を安定的にお届けするよう全力で取り組んでまいりました。このため、今回の発送電分離によって安定供給が損なわれることのないよう、分離を補完する仕組みやルールを慎重に整備することが大変重要であると考えております。
具体的には、電気の周波数を調整するための仕組みを確実に機能させることで電気の品質を低下させないことや、平常時はもとより、非常時に発電側と送電側が協調するためのルールを策定することが必要であります。
さらに、小売全面自由化により競争が進展し、送配電部門の法的分離が実施される中で、将来にわたっての供給力や調整力、予備力といった機能を担う電源が確実に確保されるような具体的な方策等について検討を行った上で、実効性の確認を行っていくことが必要と考えております。
加えて、再生可能エネルギーの導入が現在急速に進んでおり、今後更に拡大することが見込まれる中、供給力確保や需給運用の点で送配電機能の一層の強化が求められているところであります。
こうした点を踏まえ、改革に当たり、安定供給の仕組みがしっかりと構築されるよう私ども事業者も引き続き協力してまいりますので、詳細制度設計を着実に進めていただけますようお願いいたします。
二点目は、電力需給状況の改善についてであります。
電力システム改革を実効的なものとするためには、電力の安定供給が確保され、需給状況が安定していることが大前提であると考えております。しかしながら、東日本大震災以降、電力の供給力に余力がなく、夏と冬の電力需給がピークとなる時期につきましては、毎期、政府において需給見通しを検証するという状態が続いております。
これまでのところ、各社における最大限の供給力の積み増し努力と多くの皆様からの節電の御協力によりまして、何とか安定供給を維持することができている状況にありますが、この夏につきましても、とりわけ西日本地域では厳しい需給状況が想定されているところであります。
供給力のベースである原子力プラントの再稼働につきましては、現在、十一社二十四基のプラントが新規制基準に対する適合性審査の過程にあり、このうち九州電力の川内一、二号機が使用前検査を残すのみとなるなど、少しずつ前進しておりますが、いずれも再稼働には至っておらず、大変厳しい状況が続いております。
また、こうした事態により、東日本大震災以降、火力燃料費等が大幅に増加した結果、電力各社の収支は非常に厳しい状況が続いております。そのうち電力七社が電気料金の値上げを実施し、さらには北海道電力及び関西電力では二度目となる値上げを実施するという非常に心苦しい状況であり、お客様には大変な御負担をお願いしております。
今般の電力システム改革は、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大を図り、電力の安定供給の確保及び電気料金の最大限の抑制を目指すものと理解しております。
私どもとしましては、安全の確保を大前提として、できる限り早く原子力プラントを再稼働し、その結果、電力需給の安定が確保されるよう引き続き最大限の努力を続けてまいる所存であります。国におかれましても、全面自由化及び法的分離の実施に当たり、それに適した需給状況にあるか慎重に見極めていただきたいと考えております。
三点目は、原子力事業環境の整備についてであります。
原子力発電は、他の電源と比べて三つのEの観点から優れた特性を有しており、昨年四月に閣議決定された国のエネルギー基本計画でも、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源と位置付けられました。一方で、巨額の投資を要し、建設から運転期間中はもとより、運転終了後も、廃炉や使用済燃料の処理処分に至るまで、安全性を確保しつつ長期にわたる事業を確実に遂行しなければならないという特殊性を有しております。
これまで私どもは、国の原子力推進政策の下、総括原価方式等の諸制度によって長期安定的に事業に対する一定の予見性が得られることで、こうした特殊性を有する原子力発電の活用を図ってまいりました。
しかしながら、原子力依存度を可能な限り低減させるという政策の方向性が示されるとともに、小売全面自由化や発送電分離といった電力システム改革が進められ、今後、原子力発電の事業予見性が大きく低下することとなります。
こうした環境変化の中にあっても、国として重要な電源と位置付けられた原子力発電を私ども民間の事業者が担っていくためには、引き続き、予見性を持って長期の事業を計画し、実行できる環境整備は不可欠だと考えております。この点、昨年末に政府の原子力小委員会がまとめられた中間整理においても同様の考えが示されているところであります。
国におかれましても、是非とも民間事業者が長期にわたり原子力事業を担うことができるよう、新たな国策民営の在り方を検討していただき、小売全面自由化の実施に先駆けて制度の方向性を示していただきたいと考えております。
例えば、これまで原子力事業者が一体となって支えてきたバックエンド事業等の原子燃料サイクルの推進に当たっては、競争が進展していく中でも長期にわたる処理処分のプロセスに支障を来さないよう、新たな官民の役割分担に基づく仕組みの構築などが必要と考えております。
また、先頃、原子力委員会において検討が開始された原子力損害賠償制度につきましても、事業者の予見性を確保するという観点から、事業者負担の在り方等について適切な見直しが必要であると考えております。
政府におかれましては、こうした原子力事業環境の整備に向け、一日も早く検討の場を立ち上げ、検討に着手していただきますようお願いしたいと思います。
以上、改革を進める上での三つの課題について述べさせていただきました。
低廉で安定した電力供給は、我が国の国民生活、産業活動の基盤となるものであり、電力システム改革は決して失敗が許されるものではありません。この電力システム改革が真に国民の皆様の利益につながる改革となるため、私どもとしましても、これらの課題や懸念を払拭できるよう最大限の取組を行ってまいります。
その上で、国におかれましては、改革の各断面におきまして、取組の成果や課題解消の実現度合いをしっかり確認、検証いただき、その結果に応じて必要な措置を確実に講じていただくことをお願いしたいと考えております。その際、技術的課題や需給状況、事業環境に問題が生じている場合には、スケジュールありきではなく、実施時期の見直しも含め柔軟に改革を進めていただきますようお願い申し上げます。
最後になりますが、今回の法改正により、電気事業のみならずガス事業のシステム改革についても、今後、需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大といった観点から、大きく進展することが期待されます。
私ども事業者といたしましても、電力、ガスといったエネルギー種別の垣根を越えた総合エネルギー事業へと進化し、我が国エネルギー事業全体の競争力強化と発展をリードするという強い気概を持って事業に取り組んでまいりますので、今後の詳細制度設計について、是非整合性の取れた形で進めていただくようお願いしたいと思います。
こうした私どもの考えも含め、十分な御審議を賜りますようよろしくお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。
ありがとうございました。
〇委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
次に、岸本参考人にお願いいたします。岸本薫参考人。
〇参考人(岸本薫君) ありがとうございます。
電力総連の岸本でございます。
本日は、働く者の立場からこうした御意見を述べさせていただく機会を賜りました。ありがとうございます。
私ども電力総連は、発電から送配電、設備や部材、部品の製造、建設から保守メンテナンス、保安、お客様サービスに至るまで、電力関連産業に携わる労働者で組織をいたします労働組合でありまして、加盟組合数は約二百三十組合で構成されています。
さて、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から四年三か月が経過をいたしました。この間、電力関連産業の現場第一線におきましては、綱渡りが続く電力需給の下での安定供給の確保、電気料金値上げに伴うお客様対応や人件費を含めたコスト削減の徹底、原子力施設の新規制基準への対応や福島第一原子力発電所の廃止措置、近年相次いでおります大規模災害における復旧作業など、多くの課題に対しまして全職場各部門が一丸となって懸命の努力を重ねてまいったところであります。
他方では、各職場におきましては、なかなか出口の見えない閉塞感の中で、モチベーションの低下、将来の不安の広がり、若手人材の流出などによります現場力の低下など、働く者の使命感だけをよりどころとしてしまっている現状に労働組合として強い危機感を抱いているということも偽らざる事実であります。
本日は、こうした現場実態も踏まえた上で、一昨年の第一弾、昨年の第二弾に続く、第三弾の電気事業法改正案を始めとするエネルギーシステム改革法案の審議や、今後の課題の解決に向けまして、お手元にお配りをした資料に沿って、働く者の立場から大きく二点につきまして意見を申し上げます。
まず一点目は、資料の一枚目でありますが、電力システム改革を進めるに当たっては、労働者の権利の保障や雇用の安定、安定供給に不可欠な現場力の維持、継承が図られるような検討をお願いしたいということであります。
このうち、今般の法案の柱であります発送配電分離に伴い講じられる従業員の人事管理規制につきましては、過度な行為規制によって、働く者の職業選択の自由や安定供給の確保に不可欠な人材の確保、育成に支障が生じないよう、是非とも御留意をお願いをいたします。
人事管理規制を始めとする行為規制の詳細につきましては、今般新たに設置をされます電力・ガス取引監視等委員会において議論されることになろうかというふうに思いますが、その際は、先ほど申し述べました留意点を踏まえた検討をお願いをしたいというふうに思いますし、規制対象の当事者であります労働者の意見にも耳を傾けていただきますようなそうした進め方を是非お願いをしておきたいというふうに思います。
なお、これまでの発送配電垂直一貫体制から発送配電分離という、これまでにない強い中立性確保措置が講じられる中で、経営に係る意思決定は行わず、経営者の指揮監督や指示、命令に基づき業務を行う存在にすぎない従業員に対する人事管理規制は、法案で規定される兼職の禁止で十分であるというふうに考えます。
既に本委員会でも議論があったと伺っておりますが、今般の法案に係る制度検討を進めてこられました経済産業省の審議会におきましては、従業員に対する人事管理規制として、兼職の禁止に加えて異動、再就職の禁止も検討されていました。
これに対しまして私ども労働組合は、憲法で保障される職業選択の自由を制約しかねず、また安定供給に不可欠な人材の育成にも支障が生じかねないとの観点から意見提出をさせていただきましたが、残念ながら、異動、再就職も規制をするという審議会の結論が変わることはございませんでした。
ところが、審議会の結論を踏まえた法案策定の過程におきましては、内閣法制局から、私どもが意見提出をいたしました趣旨と同様に職業選択の自由との整合性の観点から懸念が示され、閣議決定直前に法案条文から削除されたということは本委員会でも明らかになったところであります。
なお、残念ながら、経済産業省は、内閣法制局が懸念を示されました異動、再就職の禁止につきまして、法律に基づく罰則付きの規定とはしないものの、法律上の明文化規定がないまま、行政指導などによりまして事後的かつ実質的に規制をしていくことを検討していると聞き及んでいるところであります。
恐らく、都市ガス大手三社さんの導管分離に際しましても同様の事後規制が検討されていくものと推測をいたしますが、同じ競争中立性の確保といった点で、情報通信におけるNTTさん、あるいは郵政事業におきましても、また電力改革を先行して進めておられるEU諸国におきましても、異動、再就職規定は要請されていないと承知をしています。
私どもとしましては、それが罰則付きであろうがなかろうが、明確な法律上の根拠なくこうした規制が講じられることは、法治主義にも沿わないというふうに思いますし、職業選択の自由との整合性などの観点で余りに過剰な規制ではないかと考えておりますことを御理解いただきたいというふうに思います。
次に、今後の改革プロセスにおける労使自治、スト規制法の在り方について申し上げます。
この度の改革は我が国電気事業の歴史上かつてない大きな変革でありますが、私ども労働組合としては、国の政策変更によって、今日までの電力の安定供給を支えてまいりました労働者の雇用の安定、現場力に支障が生じるようなことは何としても避けなければなりません。そのためにも、当該労使間で今後の事業体制の変更や企業の再編などに際しまして、丁寧な交渉、協議などを通じ、全ての職場とそこで働く労働者の合意形成を図っていくことができますよう、今後数年間の改革プロセスにおきまして、憲法や労働基準法、労働組合法に基づく労使自治と団体交渉を保障いただきますようお願い申し上げます。
次に、一昨年の第一弾改正以来、本委員会でも真摯な議論をいただきましたスト規制法の在り方につきましては、昨年の本委員会で採択をいただきました附帯決議を踏まえ、厚生労働省の審議会で検討が進められてまいったところであります。申すまでもなく、私ども電気事業で働く者には、ガスや情報通信、運輸、郵便など、他の公益事業で働く方々とともに労働関係調整法における公益事業規制が課せられておりますが、これに加えて、私どもの労働組合に加盟をする一般電気事業者、いわゆる電力会社で働く労働者と日本原電、電源開発で働く労働者だけがスト規制法の規制対象となっています。したがいまして、新規参入者である新電力さんで働く皆さん、今回、同様にシステム改革が進められるガス事業やNTTさんなど情報通信事業などで働く方々には、このような規制が存在しないわけであります。
また、私ども電力労働者は紛れもない民間労働者でありまして、公務員の皆さんのような雇用保障も人事院勧告制度のような代償措置もございません。国民の日常生活に不可欠な公共財を扱うという意味で同じ公益事業に働く民間労働者のうち、なぜ私ども電力労働者だけに限定をし、諸外国でも例を見ないような規制が課せられているのか、強い問題意識を持ちながら、厚生労働省の審議会におきましても、憲法に定める生存的基本権である労働基本権はひとしく私どもに保障いただきたいと、同法の廃止を訴えてまいったところであります。
しかしながら、同審議会では、電力需給が逼迫をし供給不安が残っている、システム改革の進展と影響が不透明であるといった、ある意味、憲法上の権利との関わりとは直接的に関係しないような理由から、現時点では同法は存続やむなしと結論付けがなされたことは大変残念であります。なお、審議会報告書では、スト規制法の在り方については、システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で今後再検討すべきとされています。
一方、今回の法案では、附則第七十四条におきまして、今後の段階的な改革の実施に際して、厚生労働省がスト規制法の存続理由として懸念を示されておりました電力需給の状況、改革の進展状況などが検証されることになっているわけであります。
この検証規定の趣旨は、今後の各段階の改革を進めるに当たりまして、電力需給の状況、改革の進展状況をしっかりと検証、確認をし、課題があるならこれをしっかりと克服をした上で実施をするというふうに理解をいたしておりますし、そのような検証、確認がなされた上で、例えば二〇二〇年から発送配電分離が実施をされるとするならば、それはその時点で厚生労働省がスト規制法の存在理由とした課題が解決をされるということを意味するものであると考えます。
つきましては、法案附則の検証規定に基づく検証に併せ、少なくとも発送電分離の実施までにスト規制法の在り方につきましても再検討をいただき、私ども電力労働者の労働基本権の回復に向けた結論を導いていただきますようお願いを申し上げます。
大きくもう一点は、二項目でございます。
先ほども申し上げましたとおり、我が国電気事業の歴史上かつてない大きな変革を伴う今般の改革は、決して後戻りが許されないものであります。その一方で、るるお手元に記載をいたしてございますが、原子力発電所の長期停止に伴う電力需給の逼迫と電気料金の値上げの二重リスクをいかに解消していくか、大規模災害への対応を含めて、これまで発送配電一貫体制の下で実施をしてまいりました各部門の協調連携を発送配電分離以降どのように維持をしていこうとするのか、原子力をめぐる課題が山積をする中で、今後の競争環境において安全確保を大前提にこうした課題解決を担う現場力をどのようにして守っていくのかなど、一昨年の第一弾改正法のプログラム規定あるいは第一弾、第二弾改正時の附帯決議などで提起をされました多くの課題が未解決、あるいは現在検討中、これから検討するといった位置付けにあると受け止めています。
電力の安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、お客様の選択肢や事業機会の拡大という今般の改革の目的の実現に向けた大前提として、是非ともこうした課題を確実に克服をしながらステップ・バイ・ステップで進めていただきたいということをこの場で強くお願いを申し上げたいというふうに思います。
最後になりますが、私ども働く者といたしましても、今般の改革は真に中長期的な国益やお客様利益にかなうものとなるよう願うものでありますし、国民の皆様の御期待をしっかりと受け止めまして、改革後の新たな環境の下で変化をばねとし、気概を持ってチャレンジをしていく所存であります。申し上げるまでもなく、いついかなるときも電力の安定供給は決して無機質なシステムではなくて、二十四時間三百六十五日、現場第一線で働く人の営みによって成り立っています。
本日は貴重な時間を頂戴をいたしまして、今般の法案の審議や今後の諸制度の検討に当たり、是非とも対応いただきたい課題につきまして御意見を申し上げました。これまで長年電力の安定供給に携わってまいりました現場第一線で働く者の総意といたしまして、これから課題に対するしっかりとした対応がなされないままに改革が進められたり、あるいは改革の矛盾やゆがみが働く者にしわ寄せされることは決してあってはならないと考えておりますことを最後に申し上げまして、私からの意見といたします。
ありがとうございました。
〇委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
次に、尾崎参考人にお願いいたします。尾崎裕参考人。
〇参考人(尾崎裕君) ありがとうございます。
日本熱供給事業協会及び日本ガス協会の尾崎でございます。
本日は、説明の機会をいただき、誠にありがとうございます。また、平素より私どもの事業運営について御協力、御理解を賜り、厚くお礼を申し上げます。
本日は、熱供給及びガスのシステム改革について、お手元の資料に基づき、意見を述べさせていただきます。
まずは、三ページを御覧ください。
熱供給事業について御説明をいたします。
熱供給事業とは、一か所で水を加熱又は冷却し、温水、冷水、蒸気として導管を通じて複数の建物に供給する事業であります。まとめて製造、供給するため、省エネ、省スペース等のメリットがございます。
次に、四ページを御覧ください。
熱供給事業は全国各地で行われており、現在、七十六社、百三十七地区でございます。地区別では、関東、近畿、中部、特に東京、大阪、名古屋等の需要密度の高い地区に集積しています。供給面積は国土の〇・〇一%、事業者規模は平均で資本金八億円、従業員十七名と小さく、周辺エリア一帯に供給するというよりは、地点型のビジネスであると言えます。
事業主体としては、ガス、電力などのエネルギー事業者や不動産会社、鉄道会社、自治体などが参画しています。原燃料の多くは都市ガス、電力ですが、清掃工場の廃熱や河川水、コージェネ廃熱など、未利用エネルギーも一三%程度活用されています。
次の五ページは、熱供給導入の効用について記載しております。
個別熱源システムと比較して、約一〇%の省エネや省CO2に貢献いたします。未利用エネルギーを活用できれば、その効果は倍増します。また、お客様先の熱源機が不要なために、省スペースや景観の向上にも寄与いたします。さらに、地域防災への貢献が可能なサイトもございます。
次に、六ページを御覧ください。
六ページでは、改正法案に対する意見を述べさせていただきます。
まず、今回の法改正については賛同いたします。また、事業者としては引き続き安定的なサービス提供に努めていく所存でございます。加えて、多様なサービスの提供を通じて、一層の顧客サービス向上を目指してまいる所存でございます。
一方、更なる熱供給事業の推進政策の追加的な措置、例えば各地の都市開発における熱供給を推奨する制度などを期待しております。
このような事業者の努力と推進政策等の御支援により、熱供給事業の更なる発展を通じて、省エネ、省CO2やレジリエンスに配慮した町づくりへの貢献など、社会的要請にもしっかりと応えてまいりたいと存じます。
熱供給事業については以上でございます。
続いて、都市ガス事業について述べさせていただきます。
一ページ飛ばして、八ページを御覧ください。
まずは、都市ガス事業の概要から説明いたします。法案審議に当たり、都市ガス固有の状況を御理解いただきたいと思いますので、他のエネルギーとも比較しながら説明をさせていただきます。
まず、都市ガス事業とは、導管によりガスを供給する事業であります。したがって、需要が多く、導管の利用効率が高い都市部から普及が進んでいます。地図の着色部分が都市ガスの供給区域ですが、その面積は国土の六%弱にすぎません。お客様件数は二千九百万件です。ボンベでガスを供給するLPガスよりやや多く、電力の半分程度でございます。また、電力会社は十社ですが、都市ガスは全国で二百七社存在します。全国のガス販売量の四分の三を大手四社が占めており、ほとんどのガス事業者は中小規模の事業者です。
続いて、九ページを御覧ください。
左の図は、主な都市ガス導管の整備状況を示しています。
ガス事業は、原料の大半を海外のLNGに依存しています。したがって、ガス導管は、海岸部のLNG受入れ基地を起点に、需要拡大に応じて延伸されてきました。日本の場合、大都市と大都市の間は需要密度が低く、かつ導管コストも高額となるため、必ずしも導管整備が進んでいません。都市間を結ぶ導管網を充実させるには、導管整備とガス需要の拡大を一体的に進めることが不可欠です。
十ページを御覧ください。
ここでは、都市ガスの利用拡大の歴史を説明させていただきます。
百四十年前、横浜のガス灯から始まったガス事業は、電気や石油、LPガスとの激しい競争の中で、照明から厨房、給湯、暖房へと、また、家庭用から商業用、工業用へと用途を拡大してきました。特に一九七〇年代以降は、天然ガスへの転換とともに、ガス事業者が主体となって機器の開発や需要の開拓を進めてまいりました。ボイラーや空調、天然ガス自動車、コージェネレーション等へ用途が広がり、工業用を中心に販売量も大幅に増加しました。
次に、十一ページを御覧ください。
このページは、都市ガスのエネルギーとしての特徴を記載しております。
主原料である天然ガスは、安定供給と安全性、経済効率性、環境適合性の全てに優れ、いわゆる3EプラスSをバランスよく実現できるエネルギーと考えております。
十二ページを御覧ください。
ここでは、私どもが二〇一一年に公表しました二〇三〇年ビジョンを記載しております。
電気、熱、輸送など、天然ガスはまだまだ普及の可能性があり、3EプラスSの実現に大いに寄与できるものと考えています。特にコージェネレーションは、発電と廃熱利用を同時に行うため、省エネルギー性が高く、電力需給安定やCO2の削減等に大いに貢献できると考えています。
十三ページを御覧ください。
ここからは、競争状況について御説明をいたします。
ガス事業は、電力に先駆け、二十年前から段階的に自由化を行ってまいりました。現在では、年間使用量十万立方メートル以上、販売量ベースで六割のお客様が自由化されています。
引き続き、十四ページを御覧ください。
このグラフは、都市ガス市場における新規参入の状況を示しております。青色が都市ガスの新規参入シェアですが、現在一二%に達しています。新規参入者のうち特に電力会社などは、LNGや基地を保有しているためガス事業への参入が比較的容易で、強力なライバルであります。
次いで、十五ページを御覧ください。
ここでは、都市ガスの保安制度を説明します。
日本では、ガス事業者がお客様資産であるガス管や消費機器まで保安責任を担っており、欧米よりも高い保安水準を保っています。現在は、お客様設備の保安を担う小売部門と、ガス導管や緊急時の保安を担う導管部門が一体となって保安に当たっております。全面自由化後も保安水準を維持するには、小売事業者と導管事業者の密接な連携が重要です。日頃から情報連携、共同訓練などを通じ、切れ目のない保安体制を維持することが望ましいと考えております。
次いで、十六ページを御覧ください。
災害時においては、両者の一体的な連携が特に重要であります。地震は休日、夜間に発生することも多く、必ずしもルールどおりに災害体制が構築できるとは限りません。現在、地震発生時は、小売、導管、スタッフなどが本来の仕事とは関わらず、経験と知識を生かして臨機応変に対応しています。このとき、導管部門の経験ある社員が特に力を発揮します。法的分離により人事異動や兼職に制限が掛かると経験者の適切な配置が難しくなりますので、十分配慮いただきたいと思います。
次に、十七ページを御覧ください。
このページは、総合エネルギー企業の取組について記載しております。
ガス事業者は、従来の都市ガス供給に加え、エネルギーマネジメントやエネルギー融通、制御を行うスマートコミュニティーなど、熱と電力の最適なソリューションへと事業フィールドを拡大しています。全面自由化後は、更に電力事業への参入や生活サービス等を通じて地域に根差した総合エネルギー企業へと進化してまいります。
次のページからは、法案についての私どもの考え方を記載しております。
十八ページを御覧ください。
まず、小売全面自由化については積極的に対応してまいりたいと考えます。また、先ほどの総合エネルギー企業の取組も加速してまいります。
次に、導管部門の法的分離については、調達、導管投資、災害対応等の点で懸念がありますが、今後は、懸念の解消に向け、円滑な事業運営に支障を来さない行為規制の検討や検証規定と責務規定を確実に実施していただきたいと思います。さらに、改革の重要な目的である天然ガス利用拡大については、各事業者が利用拡大に取り組む仕組みや需要と一体での導管整備について議論を進める必要があると考えます。
十九ページを御覧ください。
最後に、こうした点を踏まえ、私どもの課題認識を述べさせていただきます。
最も重要と考えているのは、天然ガスの利用拡大であります。天然ガスは、先ほども述べたとおり、3EプラスSをバランスよく実現できるエネルギーであり、目下のエネルギー制約を克服する最も有力な選択肢と考えます。天然ガスの利用拡大のためにコージェネレーションや燃料電池、産業用等の普及拡大が重要であることは、エネルギー基本計画や先日の長期エネルギー需給見通しにも記載されたところです。
これまで我が国のガス事業は、需要が導管の建設を促し、技術が需要開拓を促進するというサイクルの下で発展してきました。今後、小売事業者と導管事業者に分かれ、それぞれが部分最適を追求したとしても、天然ガスの利用拡大を支えるサイクルの維持、すなわち全体最適が重要であり、そのための方策が必要だと考えます。
二十ページを御覧ください。
このページは、法的分離についての意見です。
一つ目は、行為規制についてであります。ガス事業では、災害対応や供給オペレーションや導管投資等において、導管部門と小売、製造部門が密接に連携しています。特に保安については、両部門が一体となって高い水準を維持してまいりました。行為規制の検討に当たっては、公平な競争を阻害しないことを前提に、安定供給や事業運営の効率を損なわないよう最大限配慮していただきたいと思います。
二つ目は、検証規定についてです。ガス市場は現在でも新規参入が一二%まで進んでいますが、新規参入が一層進展した場合、保安に対する懸念が残るような場合、こういう場合は、あらゆる可能性を排除せず必要な措置を講じていただきたいと考えます。
二十一ページを御覧ください。
このページは、全面自由化に向けた準備についてです。
小売全面自由化は、公布から二年六か月以内に施行するとされています。この期間に制度の詳細を詰め、その後、情報システム対応も行わなければなりません。制度設計については、ガスは電気に比べ二年遅れてのスタートとなります。法案成立後は、一体的な改革の実現に向け、まずは早急に制度設計に取り組んでまいりたいと思います。一方、ガスの場合、保安制度についても十分かつ慎重な検討が求められます。拙速な対応となり、お客様に御迷惑をお掛けしないよう、情報システム対応を含めた十分な準備期間の確保についても御配慮いただくよう、お願いいたします。
最後になりますが、私ども既存ガス事業者は、今回の法改正で都市ガス事業がどのように変化しようとも、安定供給、保安の確保に全力で取り組んでまいります。
私からの説明は以上です。どうもありがとうございました。
〇委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
次に、辻参考人にお願いいたします。辻英人参考人。
〇参考人(辻英人君) ありがとうございます。全国ガスの辻でございます。
本日は、ガス関連産業で働く者の声を聞いていただく機会を設けていただき、御礼申し上げます。
お手元の資料を用いながら意見を述べさせていただきます。
一ページには、今回のガスシステム改革に対する私どもとしての全体的な受け止めを記載しております。
まず、ガスシステム改革全般については、お客様、社会の総合的な利益増大という改革の最終的な目的に真にかなうものであれば、働く者として精いっぱい対応してまいります。改革の目的に真にかなうかどうかという点が極めて重要であり、常に目的に立ち返ることが大切であると認識をしております。
次に、小売全面自由化については、お客様サービスの一層の向上や保安レベルの維持向上に向けて、働く者として前向きに対応してまいります。様々なプレーヤーが切磋琢磨する市場環境の中で、私たち自身がお客様から選択いただけるために努力してまいる所存であります。
導管部門の法的分離につきましては、働く者として幾つかの懸念を抱いており、適切な行為規制などについて十分な検討が必要と考えます。加えて、今後、検証規定、責務規定を確実に実施していただくことで働く者の懸念を払拭していただく必要があると考えております。
二ページ、三ページには、今後の課題認識を大きく四点挙げております。
一つ目は、働く者の雇用の安定、現場力の維持、継承についてです。
システム改革の成否の鍵を握るのは最終的には人材であると認識しております。そうした観点から、ガス関連産業に働く者の雇用の安定や人材の確保、育成、関連技術、技能の継承といった視点を十分考慮していただきたいと考えます。
加えて、改革の過程においては、労使自治の原則を尊重するとともに、労働者の声、現場実態を十分踏まえていただきたいと考えております。
二つ目は、産業特性を踏まえた制度設計についてであります。
保安の重要性が高い、中小事業者が多い、導管網が整備途上にある、家庭用も含め既に競合が厳しいといったガス産業の特性を十分踏まえて制度設計を行っていただきたいと考えます。
特に、保安の重要性という点では、小売全面自由化以降においても保安、災害時対応のレベルが低下することのないよう、新規参入者も含めた全ての関係者が協働して各々の役割、責任を果たすための詳細な制度設計を行っていただきたいと考えます。
加えて、中小事業者が多いという点では、中小ガス事業者は地域密着型企業として各地域の生活や経済を支えている重要な担い手であることも念頭に置いた制度設計を行っていただきたいと考えます。
三つ目は、Sプラス3Eのバランスについてです。
システム改革の最終的な目的は、お客様、社会の総合的な利益増大にあると認識しております。料金の最大限の抑制は大切な視点ではありますが、安全性や供給安定性、環境適合性も含めたSプラス3Eの視点をバランスよく踏まえた制度設計を行っていただきたいと考えます。
加えて、システム改革の目的の一つである天然ガスの利用拡大につながる各種施策を講じていただきたいと考えております。
四つ目は、法的分離に伴う懸念事項の払拭についてです。
今回の法律案には法的分離の前後で検証を行う規定が盛り込まれておりますが、様々な観点から十分な検証を行っていただき、その上で、あらゆる可能性を排除することなく必要な措置を講じていただきたいと考えます。また、政府の責務規定として示されている内容についても、必要な施策を確実に行っていただきたいと考えます。
行為規制については、保安、災害時対応への影響にも配慮し、人事などの面において過度な行為規制とならないようにしていただきたいと考えております。
四ページ以降は、今申し上げた課題認識を補足する資料として添付をしております。
まず、四ページにつきましては、先ほど触れたガス産業の特性を電気事業との違いという観点からまとめております。詳細はお読み取りをいただければ幸いであります。
五ページになりますけれども、ここは法定上の保安責任範囲について、欧州のガス事業や日本の電気事業との比較を示しております。
日本では、ガス事業者が建物内も含めた全てのガス管の保安責任を負っております。このほか、ガス機器の使用時の危険性をお客様に周知する義務や、建物内に設置された湯沸器等の一部の機器について調査や点検を行う義務を負っております。このように、日本のガス事業においては、保安面での関わり方が他に比べてより広く深いという点が大きな特徴であります。
六ページは、お客様、社会からの期待という切り口から整理したSプラス3Eの視点であります。
お客様、社会からの御期待には、エネルギーを安全に使いたい、いつでも安定的に供給してほしい、より安価で多様なサービスを受けたい、あるいは環境性を重視したいという様々な御期待があるものと認識をしております。
私どもガス関連産業に働く者は、こうした御期待に応えるべく、記載のとおり、これまでに様々な取組を行ってきております。今後もそうしたお客様からの御期待にしっかりとお応えをしていくという観点で見た場合、特に導管部門の法的分離については現場で働く者として大きく三つの懸念があります。
七ページを御覧ください。
一つ目の懸念は、保安、災害時対応への影響であります。これが最も大きな懸念になります。
今回の法律案では、災害時などに全てのガス事業者が連携協力する旨の努力義務規定が盛り込まれていますが、法的分離後においても、特に災害時対応における連携の仕組みが十分機能するために、これからの詳細検討が大切であると認識をしております。
今後の詳細検討に当たり、現場から寄せられている声を紹介をさせていただきます。まず、大規模災害時には、複数の部門で必要なスキル、経験を身に付けてきた人材の確保が重要となることから、法的分離後も導管部門と他部門との人事交流が可能となる制度設計としていただきたいということ。また、非常時に組織の垣根を越えて柔軟かつ機動的な人員配置ができるよう、指揮命令系統が混乱しないよう、導管部門と小売部門が十分連携できる環境を整備していただきたいということ。加えて、仕組みではカバーし切れない現場の一体感や働く者の気持ちの連携、現場の肌感覚といった面をこれからも大切にしていただきたいということであります。
こうした声の背景には、次のような働く者の意識が根底にあると捉えております。例えば、いずれ別々の採用、育成を経ていくことになれば、共通の価値観や高い保安マインドの醸成、さらには現場の勘といった暗黙知の継承が本当にできるのか、常日頃から顔が見える、人物を知っていることによる円滑なコミュニケーションや情報共有を今後も保っていけるのか、相互の業務内容を知る機会がなくなれば業務の隙間をカバーしにくくなるのではないか、こういった意識であります。
二つ目の懸念は、導管網整備への影響です。ガス管がなければお客様にガスをお届けすることはできませんし、お客様を獲得できる見込みがなければ導管投資の判断は難しくなってしまいます。法的分離後も導管網の整備に向けて投資意欲が湧くような仕組みを整備していただく必要があると考えます。
三つ目の懸念は、企業体力への影響です。働く者としても前向きにチャレンジしていこうとしている天然ガスの利用拡大や総合エネルギー企業化の道が遠ざかってしまうことがないよう、企業体力への影響も含め、十分な検証を行っていただきたいと考えます。多様な背景や持ち味を持った事業者が総合エネルギー企業として切磋琢磨することが、エネルギー市場の活性化や健全性の確保の観点からも重要であると認識をしております。
以上が法的分離に関して働く者として抱いている懸念事項であります。
八ページには、大規模な地震が発生した際の現行の部門間の連携状況を示しております。
地震が発生しますと、出社基準に従い、社員が自動的に出社する決まりになっており、出社したメンバーで緊急組織を編成します。また、初動対応において必要なスキル、経験を身に付けた要員を一人でも多く確保することが重要なため、導管部門以外からも応援をもらうことになります。初動体制の中で赤字で示しております被害情報の収集や電話受付、あるいはガス漏れの位置を確認するといった業務には、小売部門と導管部門の社員が交ざった混成部隊が編成され、現場での作業に当たるケースがあります。
これまでの経験から言えることは、二次災害の防止や早期の復旧には迅速かつ的確な初動対応が極めて重要だということであります。初動対応に当たるのは基本的には自社の社員であるため、法的分離に当たっても十分配慮が必要になると思っております。実際に、東日本大震災の際には、小売・スタッフ部隊も含め全社を挙げて緊急電話受付を行ったことで、導管部隊がガス漏れ対応等の現場作業に専念でき二次災害を防止できたケースや、小売部門に従事している者の中からスキル、経験を有する社員を臨時で集めて現場作業に当たり、復旧を早期化できたケースもありました。
資料の説明は以上であります。
今日段階では改革の骨格が示されたにすぎず、詳細はこれからという内容が多くあります。国会での御審議に加え、省令等の詳細において十分な御検討を行っていただくようお願い申し上げます。また、懸念点が解消されないまま改革を進めては、かえってお客様、国民の皆様に御迷惑をお掛けすることにもなりかねないと感じております。真に実効性ある検証を行っていただくよう、改めてお願いを申し上げます。
最後になりますが、私たちガス関連産業で働く者の中には長年培ってきたDNAがあると思っております。それは、いかなるときもお客様の安心、安全を守るという強い使命感と、いざというときに仲間を助け合うという一体感であります。今回の法律改正によってエネルギー市場がどのように変わろうとも、そうしたDNAをしっかり継承していけるよう努力してまいります。
以上、私からの意見とさせていただきます。ありがとうございました。
〇委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
次に、柏木参考人にお願いいたします。柏木孝夫参考人。
〇参考人(柏木孝夫君) 東京工業大学に勤務しております柏木でございます。専門はエネルギーシステム並びに技術開発と、エネルギー一般の技術開発を専門としております。特に電力のシステム改革あるいはガスのシステム改革、両方に絡んでおりまして、そういう意味でニュートラルな立場から発言を申し上げたいと、こう思います。
先生方はもう御存じだと思いますけれども、エネルギーには一次エネルギーと二次エネルギーがあると。一次エネルギーというのは、石炭、石油、天然ガス、原子力、太陽光、風力なんかは太陽光に属するわけですけれども、こういう一次エネルギー源と。それから、それを変換して何らかの形で使いやすい形にしていく二次エネルギー、これはやっぱり電力が一番二次エネルギーの筆頭になるでしょうね、使いやすいですから。それから、水素なんかもそうですよ。水素というのは、これは単体では存在しないわけですから、酸化した水という形で広く地球に、民に公平に与えられているわけですから、これからの水素社会というのはそういう意味では非常に重要になるということになります。ですから、どうやって水素を持ってくるかと、こういう話になりますね。
熱というのがあるわけですよ。今のエネルギーミックスやっているときに、あれよく御覧になりますと分かりますけれども、電気は二六%、電力量でね、七五%は熱なんです。今のこの法律というのはどちらかというと全部をトータルしていますから、そういう意味では極めて重要な法案と。
こういう一次エネルギー、二次エネルギー、熱用に最終エネルギーという、こういう分け方をした上で法律体系をぐっと俯瞰的に眺めてみますと、明らかにこれをパラレルに捉えていた今までのこの法体系。例えば、電気事業法、一次エネルギーのガス事業法、最終エネルギーの熱供給事業法。これパラレルに捉えているというのは、何らかどこかでやっぱりゆがみができてくる。
ですから、特にアメリカなんかはガス・アンド・ワイヤーと言いますよね、あるいはガス・アンド・パワー。ガス会社と電力会社が一体化して、合理的な需給構造を構築していくということになりますと、どうしてもこれパラレルからシリアル、シリーズというかシリアルというか、一次エネルギー、二次エネルギー、最終エネルギー、こういうものを一体化して捉える法律体系に変えていくということは私は非常に重要だと思っておりまして、そう考えますと、一体化してこの法案を出してきたということは極めて意義深いと、こういうふうに思うわけです。
そうなりますと、どうしてもインフラというのが重要になってきて、インフラは、今までガスはガスで、電力は送配電でやってきたわけですよね。ところが、これからやっぱり一体型になる可能性がありますね、ガス・アンド・ワイヤー・アンド・ファイバーと。それに今、さらに、技術開発を考え合わせれば、あくまでもファイバーまで、もうこれだけインターネットが発達しているわけですから、パイプラインのところにワイヤーが引けて、そこにファイバーも引けると。これスマートグリッドそのものですよね。
こういう統合型インフラになったときに、このインフラの扱い方をどう考えていくのかというのが今度のこの法律の要の一つだと私は思っているわけですよ。ですから、そう考えますと、こういうインフラの中立性をどう担保するのか、どう担保すれば我が国の国益が増大し、かついろんな業種がそこに参入しやすくなって、そして日本全体が発展するかと、極めて重要な課題を抱えているわけです。
じゃ、どういう課題があるのかと。今までそういうことを考えてきたわけですけれども、私は、ネットワークの中立性ということに関して、この意見書にも、意見書というか、今まで発言した内容が書いてありますから、それを覆すわけにいきません、自分の主義は主義ですのでね。慎重にやはりやるべきだということを言っています。
それは、中立性の担保のためには、例えば会計分離があると。会計分離をしっかりやって、それでも駄目なら今度は法的分離だと、分社化すると。分社化すればいろんな経費はそこに入ってきませんから、比較的託送料も透明化するし、ある意味では公平性担保の一つの有力な手段であることは間違いないと。もう少し強烈になれば、御存じのように所有権分離と。ただ、所有権分離の場合には、大体国営のものを民営化する、プライバティゼーションですね、民営化するときに自由化するわけですから、そういうときにはやはり所有権分離はあり得ますと。
電力なんて、一九五一年に、日本が発展するためにまず一体化してやれとアメリカからの指令が掛かり、で、所有権を与えて、民間がしっかりやるんだということでやってきたわけですから。それで五十年たって、さあその所有権を分離しろなんてこれはおかしな話で、ですから、そういう意味では、まあいっても、やはり分社化して、法的分離をすることがニュートラル性を担保するには一つの有力な手段であることは間違いないということです。今度の法案はそれが出ているというふうに理解しているわけですね。
私、個人的には、電力の場合には、これはBツーBからBツーCまでありますよね。ですから、全面自由化の法律が去年通り、そして家庭部門に例えばエネファームだとか太陽光、太陽光は今固定価格買取りで買っていますけれども、こういうものが入ってくれば、それはディマンドリスポンスを掛けて需要を減らせば、で、発電システムを最大限に持ってくれば電力がたくさん出てくるわけですから、家庭からも電力は売ることができる。キャッシュの流れがディマンドサイドにできてくるということは、これ極めて日本の合理的なエネルギーシステムを構築する上では重要なことだと私は思っていまして、自由化というのはだからそのぐらい大きなインパクトがあることなんだと、こう私は思うわけです。
そうなりますと、電力は、BツーBそれからBツーC、新規参入者がたくさん出てきますので、ある意味では、今、八木会長がおっしゃったように、法的な分離をするのであれば、きちっと検証した上で、新規参入者が自由にちゃんとアクセスできるように、そして日本の発展につながっているということをきちっと検証した上でこういう方向の法律を作っていくということに関しては、私もおおむね賛成をしているわけですよ。
一方、ガスに関しては、ガスはどちらかというとガスパイプラインを、家庭からガスが出るかというと、そう簡単には出ないだろうと私は思っていまして、出せるとすればバイオガスで発酵させて、フェルメンテーションといいますね、発酵させたガスをメタンガスに、自分の中に入れてやるといったって、それは大変なことですから。まあ普通は、ガスパイプラインを分社化するということになりますと、電力はガスたくさん使っていますから、電力がそのパイプラインを借りてガスを売りに出る、あるいは石油会社がガスを輸入して売りに出ていくと。あるいは、商社が電力会社の基地を借りて、そしてガス会社のパイプラインを、託送料を払って、そしてそれを借りて出していく。
だから、非常にBツーBが多いわけで、そういう意味では、決して分社化することが新規参入者を増やし、日本の合理的なシステムを、保安の問題とかいろんなことを考えたときには、まず会計分離をしっかりして透明性を保って、きちっと検証した上で、それでも駄目なら法的分離をやるべきだということを一貫して言ってきたわけですよ。ですから、そういう意味では一応慎重論にはなるわけです。
そうなりますと、やはりそういうことをずっと踏まえて今度の政府がきちっとこういう形で、電力、ガスも一体化して、同じような形でパイプラインのニュートラル性をこの法的分離という形で年数を限って、これまでによく検証した上で、いろんな可能性を排除しない形でこの法律をお出しになったということに関しては、私は異論はないですよ。異論はないです。ただ、慎重にやはり考えていく必要があるんだろうと、こう言っているわけですね。
ですから、もしこの法律が通るということになりますと、私としては、今までの経緯からして幾つかのやはり注文があるということになります。注文と言ったら大変失礼な言い方かもしれない、自分の私見があると。
今、ちょっと七つ、今日、朝起きて一生懸命考えてきました。七つほど書いてありまして、一つ目が、ガスシフトということが今度のエネルギー基本計画に書いてありますから、そのガスシフトがちゃんと行われるように、すなわち、ガスシフトが行われるということは、広い地域でいろんなガスの需要家が、例えば電気に変換するとか、あるいはほかの、水素を取り出すとか、こういうふうなことができるように、やはりガスシフトが、法的分離をしたときに、きちっとガスの新規導管が伸びて、きちっとできるようなインセンティブを与えるようなことも併せてポリシーミックスでやっていかないとうまくいかないんじゃないかと、私はそう思うわけですね。
今、ガスパイプラインが日本の国内でカバーしている面積は五%ですから。電力は大体オールジャパン、全部網羅されている。たった五%しかカバーされていないわけですから。それを例えば、先週まで私、ドイツへ視察行ってまいりまして、ドイツで今、パワー・ツー・ガスというのが導入を、ドイツの場合には原子力をやめた後、再生可能エネルギーだと言っているわけですね。
再生可能エネルギーは北部に多いですから、北部に風力はがんがん回っていますよ。それで、電線は細いですから、それで全部それを南の旧西ドイツの中に運ぼうということになると、これまた電線一本引き、二本引きというと、国民負担が、それじゃなくたって固定価格買取りのサーチャージでかなりの額を支払っているにもかかわらず、また更に系統強化かということになりますと、そう簡単じゃありませんから、それじゃ、今までの既存の系統の連系線ですね、送配電システム、送電線ですよ、送電線を使えるだけ使って、ふらふらしている風力の残りは、水を電気分解使って水素と酸素に分けると。酸素はどこかに、病院に売るもよし、いろんな売り方があります。水素は、パイプラインは充実していますから、EUの中でパイプラインは網羅されていますから、そういう意味では、そのパイプラインの中に水素を混入して南の方に運んできてタービンを回すと。そうすると、水素の分だけはパワーアップして、かつCO2が出ない。よって、低炭素型のエネルギーシステムがこのパワー・ツー・ガスという手法を使うことによって成立してくる。
これ一つの、再生可能エネルギーを進めるということであれば、そういうことまで考えた上でやっていかないと、ただ再生可能エネルギー何でもいいからやれと言ったって、全く間違い。こんな非常に不安定性があるものがばんばん入ってきたら、太陽光だって昼間はあるけど夜はないわけですから。そういう意味では、そこら辺のことを全て頭に入れた上で、全体を見渡した中で最適な法律はどうあるかということをやっぱり考えていただくことが非常に重要だと、こう思っています。それがガスシフトを進めるためのインセンティブ付与。
それから二番目が、電力自由化というのはもう既に通っていますから、電力の自由化をすると大体電源不足になりますね。今までは総括原価方式でちゃんと建てて、その代わり電力会社は大変な努力をして安定供給をして、それで日本はここまで発展してきたわけですよね。ですから、それは私は全く否めない事実だと思っていますが、これ、自由化ということになると市場原理でいきますから。例えば東京電力管内で一年間八千七百六十時間の八十八時間しか動かない電源が全体の七・五%あるんですよ、全体の。八十八時間って一%しか。だから、盆暮れの三、四日しか走らない車が百台のうち七、八台持っている運送業だったら潰れますね、普通は。
電力の今まではもう需要ありきでやってきましたから、これに対してはもう文句はないんです、私は。だけど、これからはその延長線上にエネルギーシステムがあるという保証は全くありません。いかにコンパクト・アンド・ネットワークを図っていくかということがこれからのエネルギービジョンを実現する、先進的に世界をリードしていくためには工業国家としては必要不可欠なんじゃないでしょうか。
そういうふうに考えますと、今言ったように、電力自由化になりますと市場原理で電源を建てるわけですから、そう簡単には電源はありません。電力不足になります。そうなると、分散型電源のコジェネレーション、熱電併給ですね。ですから、熱需要のあるところに電源立地をしてくる。こういうコジェネが、ある効率の悪い大規模集中型の代わりに分散型がディマンドサイドに下りてくるわけですよ。ディマンドサイドでインターネットと一体化してスマートグリッドのような形になってきめ細かな制御が行われると、そこにコジェネと再生可能エネルギーがうまく機能して、最大限国民負担を少なく、再生可能エネルギーを最大限取り込むことも可能になると、こういうふうに私は思っているんです。
そういう意味では、そのコジェネレーションに対するインセンティブ。今度の基本計画の中では、コジェネは、画期的だと思いますね、コジェネレーションに関してきちっとした記述がなされました。さんざん手を挙げて言いましたからね、あの審議会の中で。千百九十億キロワットアワー、今パイは大体一兆ちょっとですから、一兆キロワットアワーちょっと多いですから、そのちょっとです、それが、その中の一二%弱がコジェネからの電力、熱を使い切るコジェネからの電力で、二〇三〇年度にそれを目標達成したいということまで書かれたということは画期的なことだと。私は一五%は行くと思っていますけれども、BCPの観点が今入っていませんから、そういう意味ではそう。そういうコジェネレーションなんかも、まず天然ガス主導、ガス主導で動くことになります。だから、電力会社もこれからはコジェネをやるようになると私は思っております。そういう分散型に対するインセンティブ、これがきちっと与えられるということが重要。
それから、そうなりますと、この三つ目の熱供給事業法、これ、この中で、許可から登録制という格好になりましたよね。これ、私は非常に、もっと気楽に熱供給、熱だけではそれほど爆発するとかということはありませんから、熱供給に関しては気楽に熱供給ができるような形で規制緩和を行うと。ですから、熱の部分が七割も占めているわけですから、そういう意味ではこの熱供給事業法も今のコジェネと一体化した形で規制改革を行っていただく、その制度設計をきちっと行っていただくということが重要になる。
四つ目が、そうなりますと、熱導管を誰が引くかと。なかなか熱導管高いですから、熱導管を私は、一つの箱物行政というか公益性のある事業から、エネルギー関連の公益性のある事業、これの中に、熱導管そして自営線とファイバー、ですから、熱導管アンド・ワイヤー・アンド・ファイバーという形で一体型のエネルギーインフラ、こういうものをやはり新しい形の公共事業として捉えるということも私は必要になってくるんじゃないかと、こう思うわけです。
〇委員長(吉川沙織君) 柏木参考人、恐れ入ります、陳述時間過ぎておりますので、簡潔におまとめ願います。
〇参考人(柏木孝夫君) ああ、そうですか。どうも大学だとつい長くして、申し訳ありません。もうすぐ、あと一分で。
あと三つあるんですけれども、これの……
〇委員長(吉川沙織君) それは質疑の中でお願いいたします。
〇参考人(柏木孝夫君) 分かりました。
私、十五分までと思って、今十二分と来ているんですけれども、前の人が少し早く終わっていたからそれをもらおうと思って。
それで、五つ目は、そういう意味でスマートコミュニティーを需要地でいかにつくっていくかということが大事で、六つ目は何かというと、もう既にこれをシュタットベルケという形で自治体が主導してこういう動きが走り出しているということを私は申し上げたい。これは総務省と経済産業省が一体化してやっている。最終的には、こういうことをやるということは、ある意味ではローカルアベノミクスの成功につながっていって、地域が発展して日本の国力増強になると。
以上です。
〇委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
次に、杉本参考人にお願いいたします。杉本まさ子参考人。
〇参考人(杉本まさ子君) 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会の杉本と申します。
本日は、電気事業法等の改正法案の審議で、消費者の意見を申し上げる機会をいただいたことに感謝申し上げます。
主にガス自由化に関する家庭用ガス料金の消費者保護について発言いたします。
なお、今回の法律改正に含まれる電気の議論は、私と同じ団体の辰巳常任顧問が参加しております。私は制度の経緯に詳しくありませんので、御質問には家庭の電気消費者の感想程度となります。御容赦ください。
電気は、国民の意識調査も行い、昨年に家庭用自由化の法改正をしましたが、ガスは、電気の一年半遅れの審議開始で、多くの内容が急ぎ足で議論された感があります。
電力の自由化は、東日本大震災による電力不足や、値上げに際して地域独占への不信感もあり、小売の選択肢拡大には家庭消費者からの期待が大きかった点はガスの自由化と背景が違うと思います。
審議会での事業者ヒアリングが終了した四月に、経産省有識者会議でガス料金規制撤廃大筋了承と全国紙に報道されました。それに対して、主婦連合会の学習会では、電気と違い消費者の誰がガス自由化を望んだのか、消費者の知らない改革だ、自由化で保安は大丈夫か、料金が下がるのかと紛糾しました。同様の意見は、ガス保安審議会でも、複数の消費者委員からも噴出しました。
また、消費者活動をしている方たちへの緊急アンケートでも、七割がガス自由化を知りませんでしたし、八割以上が料金規制や供給義務など消費者保護の維持を希望しておりました。
家庭における電気とガスの受け止めは違い、ガスは安全で安定的な安い料金のための選択肢の拡大だと思います。お手元の資料の二ページ、「参考」に家庭用における電気とガスの違いを整理してありますので、御覧ください。
私は、資料末尾にもありますように、各消費者団体の強力な御支援、御協力をいただき、また、緊急内部アンケート結果を踏まえてガス審議会に臨みました。
それでは、お手元の資料三ページから、ガスシステム改革に関する意見を申し上げます。
三ページです。
生活に必需のガスと家庭消費者保護。
全国五千万世帯の暖房は灯油やエアコンが多いのですが、都市ガス約三千万、LPガス約二千万世帯の台所やお風呂ではガスが利用されております。いずれのガスも、他エネルギーに転換しにくく、日常生活に必要不可欠なライフラインです。
そのガスは、一般ガス二百社、簡易ガス約千社、またLPガス二万社が供給しています。大手ガス会社が大都市圏で供給する約二千万世帯と同様に、ほかの一般、簡易ガスやLPガスが供給される残り三千万世帯も消費者利益を得るべきです。
海外では、自由化当初、料金メニューが多いなど苦情も多発しました。今回の法律では、悪質な小売事業者による被害防止のため、書面交付義務など消費者保護策や、電力・ガス取引監視等委員会による監視制度があり、非常に安心しております。
他方、書面交付義務があり自由化しているLPガスでは、料金など不透明な取引に数千件も相談があります。我慢できずに相談する件数は氷山の一角で、潜在的な不信は大きいと思います。二十九日の本会議で、総理や大臣の御発言に、エネルギーの一体改革で縦割り市場の垣根を越えて消費者メリットを享受できる、電力・ガス取引監視等委員会では自由化後の消費者利益保護に万全を図るとありました。そのとおりに消費者が安心してLPガスも選択できるよう、縦割り行政ではなく、LPガス販売もその委員会で監視して、自由化による不利益な実態を撲滅する制度にしていただきたいと思います。
五ページです。
地方の家庭消費者は、一般ガス会社を選択できるか。
ガスは、電気や水道と同じく、配管や器具の設備負担をして安くて安全で継続した供給を望んできましたので、公益事業として料金や保安規制があります。それにより、低所得者や高齢者など生活弱者も含めた家庭消費者全体が、安心して一般や簡易ガスを利用してきた背景も大切です。
台所や風呂のガス消費量は、世帯の収入ではなく人数により異なります。生活保護、年金生活など生活弱者も年々増加しており、自由化に伴う料金値上げは打撃となり、本末転倒です。
ガス自由化は、一般ガス会社同士の活発な競争が起こり、その結果、多数の家庭消費者に安くて安全にガスが継続的に供給されるのであれば賛成です。しかし、電気は風力など地方でも発電され、送電線は全国につながります。大半が輸入のガスは、輸入者も限られ、全国に輸送導管もつながらず、大口の新規参入件数は全国でも僅か二%のみです。特に輸送導管から孤立した地方一般ガスには、新規事業者は参入のしようがないと思います。
また、約五十の地方卸先一般ガス事業者の約三百万世帯につながる国産天然ガス導管の託送料金には認可制による事前査定もなく、更に卸先ガス事業者圏内は託送料金が累積加算されます。その地域では少量かつ利益の少ない多くの家庭まで戸別にLPガス会社などの新規参入が進出すると思えません。その意味で、小売自由化で新たに二千四百万軒を超える一般家庭が都市ガスの供給事業者を自由に選択できるようになるとのガス審議会報告は、絵に描いた餅のような気がいたします。
七ページを御覧ください。
自由化に関する地方家庭消費者の不安は。
ガス審議会では、あるガス会社が、料金はある程度シークレット部分が自由化のだいご味で、それを明確にしたら自由化ではない、消費者が納得しなければほかに行くのが自由化という発言をしました。それを聞きまして、自由化とは、消費者が事業者を選択できる一方、事業者にも値上げや公開情報、消費者自体を取捨選択する自由があるもろ刃の剣だと再認識させられました。
地方で一般ガスへの新規参入がないまま自由化すると、LPガス販売と同様に、既存の一般ガス会社の独壇場となります。料金コストなど情報公開もせず、他燃料との競争が激しい大口の値下げコストを交渉力のない生活弱者や少量使用世帯に転嫁した値上げや、それに難色を示すと供給拒否をするなど、家庭消費者に不利益が生じる懸念があります。簡易ガスでも戸建て世帯は同じLPガスの事業者変更は比較的容易ですが、アパートでは戸別に転換が困難なため一般ガス世帯と同じような課題があります。
LPガス自由料金は、削減し難い硬直的な小売費用のために料金規制のある一般ガスの約二倍です。今年二月の北海道新聞でも社会問題として一面に大きく報道されました。地方の家庭や飲食店、中小企業の一般ガスや簡易ガスの料金が自由化で値上げされれば、アベノミクスの地方創生に大きく逆行すると思います。
十一ページです。
一般ガスの競争がなくてもガス料金は下がるのか。
海外は、自由化後も家庭用ガス料金が上昇し、欧州ではガス自由化の効果を検証しているとの大和総研のレポートがあります。複雑な自由料金で、透明性も低下しているようです。海外でも小売競争による原料費高騰や公租公課を除いた小売費用が低減したデータを示されれば、消費者の納得感もあると思います。しかし、自由化した結果、それらが情報公開されないので、規制料金の残る国のほとんどの消費者は、自由料金ではなく規制料金を選択していると思います。日本でも、原料等による値上げが抑制されたとの抽象的な説明だけで、固定的な小売費用が低減した客観的データが情報公開されなければ、家庭用消費者はメリットを実感できません。
そもそも自由化の目的は、都市ガス同士の競争活性化を通じ、ガス事業者の選択肢拡大と低廉な料金の実現であったはずです。電力同様に供給者変更の費用が不要なことも大前提です。それを、都市ガス同士の競争の可能性が低い従来のガス事業者も他燃料との競争があり料金規制は不要と決め付けて、他燃料転換の負担を前提として、都市ガス間競争のない事業者にも料金規制の廃止対象を拡大したことは、消費者目線とは言えず、到底納得できません。
例えば、賃貸やマンション五階の世帯は、配管等の造作で家主の了解を取ることも、また戸別でベランダにLPガスや電気温水器の設置やそのための電源引込みは困難です。新築時と違い、持家戸建てでも他燃料設備への変更に負担を感じ、また継続的に一般ガスを利用せざるを得ない大半の既存住宅に住む家庭消費者の利益を考えるべきだと思います。
十三ページに移ります。
自由化に伴う家庭消費者の今後の不安は。
昨年も、ガス器具関連では四百件以上の事故と三十人以上の死傷者との報告があります。家庭消費者は保安知識が乏しく、ガス漏れや器具の誤使用着火、無臭の一酸化炭素中毒など、ガス事故対応は料金低下よりも最優先です。
自由化後は、家屋に立ち入る器具点検は小売事業者や委託会社となります。しかし、点検能力が低いと、リコール器具の一斉巡回点検不備、マンションや飲食店等の一酸化炭素中毒は広範囲の死傷事故になり、また高齢者への点検詐欺も予想されることから、点検員はLPガスと同様に国家資格にすべきです。
ガスは一般商品と違い、品質が同一で給湯などに代替性もないために、安全を前提での消費者の期待は、低廉な継続料金を選択できることです。最大の不安は歯止めのない料金値上げですが、今回、経過措置として海外の多くと同様に規制料金が残り、それより安い料金設定も自由に可能となり、安心しました。
しかし、今後の最大の懸念は、経過措置の対象及び解除となる既存の一般ガス事業者の選定基準となる競争状態に関する指標の実質的な骨抜きです。例えば、競争状態の指標は、都市ガスの利用率七五%以下との意見もあります。そうなると、家庭消費者が百万件の西部ガスも含めた九割のガス事業者の料金規制は一斉に廃止されることになり、七五%が独占率の基準とは全く容認できません。
十四ページに移ります。
料金規制経過措置の撤廃基準は骨抜きにならないか。
台所などでは一般ガスの競争力も大きく、家庭消費者件数も順調に増加している導管卸ガス事業者も多数あります。また、同じガス事業者でも地方により供給区域内の市街地と郊外では独占力も違うことから、特に一般ガスの新規参入がない地方ガス事業者に対する他燃料との競合基準による経過措置の対象範囲は、電力料金のような事業者エリア全体ではなく、市区町村単位でのガス利用率や新築ベースの都市ガス採用率など、きめ細かく厳格な基準とすべきだと思います。
既存一般ガス事業者に関する独占率の基準策定は、消費者団体とともに公正取引委員会や消費者庁も参加した委員会で決めると事務局からも御明言いただいています。その上で、経過措置の撤廃後も電力・ガス取引監視等委員会で競争状態を監視して、再び基準未達となった場合は速やかに経過措置に戻すことを国会附帯決議していただくよう強くお願いする次第です。
最後に、熱事業は都市ガスに比べ約三万世帯と少ない家庭消費者ながら、集合住宅給湯の必需性や熱料金への受け止めを十分に踏まえた安心できる改革案だと評価いたします。
以上です。ありがとうございました。
〇委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。様々御協力いただき、ありがとうございます。
質疑のある方は順次御発言願います。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
今日は参考人の皆さん、ありがとうございます。
今もお話がありましたけれども、ガスについて私の方から杉本参考人と辻参考人にお伺いしたいと思うんです。
私たちも委員会として視察に東京ガスに行かせていただきまして、保安体制の状況を見せていただいて、ああ、すごい規模で投資をして安全の確保に努力されているというところを目の当たりにもさせていただいたんですね。ガスはやっぱり安心して安全に使えるというこの安心感が本当に大事だと思うんですね。
その上で、先ほど辻参考人のお話を聞いていても、導管部門の分離について非常に懸念が示されたというふうに思うんですね、保安を確保していくという上で。お話を伺って、伺えば伺うほど、まだこの保安体制どうしていくのかということは、まさにこれから検討することになっていて、固まっているものは何もないという状況にあるということもよく分かりました。
とりわけお聞きしたいなと思うのは、大規模災害への対応ということで、一朝一夕にこの保安体制ができたものじゃないということを改めて視察の中で感じもしたんですけれども、どういうふうにこの保安体制、いざ大規模災害というときに対応できるような仕組みにつくられてきたのか。要は、一体となっていく、肌感覚ということもおっしゃったんだけど、現実にそれを実現するために、訓練等も含めて日常的な取組もあったろうと、積み重ねがあったろうと思うので、そこら辺、辻参考人についてはお聞きしたいなと。
そういう努力のところを教えていただきたいと思うのと、杉本参考人には、家庭用需要家からこの保安について御意見を改めてお聞きしたいと思います。
〇参考人(辻英人君) ありがとうございます。
先生御指摘のとおり、本当に安全第一というのは、特にガスの場合はそのとおりだというふうに思います。
我々、例えば私の経験からいいますと、ガス事業に、会社に入社したその瞬間から、新人のときから、やはりガスは安全が第一ということで、それに関わる基礎的な訓練は受けてまいっております。それから、若いうちは特に現場に出まして、いろいろお客様の御要望なりニーズを保安面のサイドからもお聞きしながら、やり取りをすることでまたその経験値が上がってくる。さらには、これはまあ人によって違いますけれども、幾つかの部門をまたがったローテーションを組むことによって、いろんな角度からまた改めてお客様の安全を守るという切り口の要素を積み重ねてくるということ。それから、会社としては、当然定期的に防災訓練等も積み上げておりますので、おっしゃるとおり、一朝一夕にはいかない、長年の積み重ねでここまで来ているというふうに認識をしております。
〇参考人(杉本まさ子君) 私たち消費者に、需要家にとりましては、料金よりも何よりも安全が第一の希望です。
それで、これを今まで導管事業者が家の中まで全部点検をして、一気に全部情報も持っていたわけですけれども、これが会社が分離してしまうと、先ほど辻参考人の方からも、働く者同士の一体感や気持ちの連携が重要という御発言もありましたけれども、例えば、今まで一緒に暮らしていた家族が、子供が成長して別に住んでしまった、コミュニケーションがなくなると、だんだん意思の疎通、うまくいかなくなるということもありますので、やはり電気と違って、広範囲の道路や敷地でのガス漏れによる二次被害が心配されますので、元のガス会社から分割した導管等工事事業者で、想定外が多い大震災の混乱時にうまく提携、機能するか、不安に感じています。でも、これは今後のガス小委員会の議論の方にお任せいたします。
〇倉林明子君 杉本参考人に続いて質問させていただきたいと思います。
安全第一ということなんですけれども、消費者にとっては料金の問題も非常に大きいウエートを占めるかと思います。そういう観点から、届出制については駄目だということで明確な意思表示もされていたかと思うんですけれども、その理由について紹介していただければと思います。
〇参考人(杉本まさ子君) ちょっと昔のことで、済みません。
〇倉林明子君 昔のことになりましたか。
料金についての御意見で結構です。
〇参考人(杉本まさ子君) 済みません、先に発言してしまって。
料金は、やはり安くて安定的な供給というのがガスのもう一つの条件だと思っていますので、安い方がいいわけです。先ほどFITの負担金が高くてもいいというふうに申し上げましたけれども、やはりそれは消費者に納得のいく説明があってこそ支払に納得ができるんだと思うんです。ですから、ガスの方でも、やはり料金がどうして上がるのかということをちゃんと説明をしていただかないと納得ができないというふうに思っています。
〇倉林明子君 消費者の立場から、続きで杉本参考人、お願いしたいんですけれども、既にガスでいいますと自由化されているLPガスのところで詳細な資料も付けて御説明いただいたんですけれども、非常に相談件数等も多くて、今もいろんな問題あるんだということだったと思うんです。
時間も短かったので、その部分、追加的に、資料の説明も含めてしていただければと思います。
〇参考人(杉本まさ子君) LPガスはもう既に自由化されていまして、この自由化が皆さんの納得いくようなことで行われていればそれがお手本に、今回の都市ガスの自由化にもお手本になったと思うんですけれども、とても先ほどの資料にありますように苦情も多いですし、何千件という、二千何百件という苦情があります。
それで、いろいろな形の販売方法があって、例えば、委員会の中でも紹介されていたように、アパートなんかの建設時に、全部のところにエアコンを付けるからそのガス事業者からということで勧誘しているとか、それは、でも、それだけではなくて、後に支払うのは消費者なんですね、料金が高くなってくるわけですから、それを払うのは消費者なので、そういう売り方もあったりとかということで苦情が多発しているというふうに思います。
〇倉林明子君 ありがとうございます。
八木参考人に伺いたいと思います。
今回の意見陳述の中でも述べられておりましたところと、今回の電事法の改正の中でも指摘させていただいていたところでもあるんですが、原子力発電の事業環境整備ということが繰り返し指摘されておるわけで、私、この具体的な中身をはっきりさせていく必要があるんじゃないかというふうに思っているわけです。
昨日でしたか、朝日新聞にも、核燃料サイクルについての八木参考人の発言が載っていたかと思うんですけれど、様々なことが挙げられているんだけれども、具体的にどこまで整備される必要があるというふうにお考えなのか、できるだけ具体的に御説明をお願いします。
〇参考人(八木誠君) ありがとうございます。
原子力発電の環境整備というのは、基本的には、まずスタンスとして、これは国の政策の下に民間がこれまでどおり長期の事業の予見性を持ってこの事業を遂行していきたいと、そのための環境整備をお願いしたいと、こういう趣旨でございます。
大きく申し上げると二点あるかなと思っております。
一点目は、いわゆるサイクル事業全体に対して、これは、サイクル事業というのは非常に超長期にわたる、また費用も相当掛かる、なおかつこれは十社の共同体制でやっている共同事業でございますが、こうした事業というのがいろんな今環境変化が起こっております。いわゆるシステム改革もございますし、原子力依存度を下げていくと、こうした環境の中で、今後とも我々が事業の予見性を持っていくに当たっては、やはりここの、国のいわゆる関与強化といいますか、言ってみれば、国と事業者との役割分担の在り方、新たな国策民営の在り方、これをお願いしたいというふうに思っております。
これは、ある意味では、日本原燃がいわゆる再処理事業等々を中心でやって電力十社が支えているわけでございますが、例えば日本原燃が費用を確実に回収しながら投資ができるような環境、あるいは、そうした事業をやるに当たってこれからもいろいろ規制強化あるいは規制の変更等々も出てくる可能性あります。そうしたときに、そうした費用が、確実に回収できるというのはおかしいけれども、事業者側にとって一時の負担にならないように、事業が継続的にできるような費用の回収方法、例えばこういうようなことがあります。
それからもう一点は、原子力損害賠償制度の関連でございます。
この原子力損害賠償制度につきましては、御指摘のように、今世界でも余り例のない、事業者に対して無限の無過失の責任が掛かっている状態でございますが、私どもといたしましては、その部分について、例えば有限責任化という概念、あるいは免責事項を明確化するというような概念、あるいは、今電力十社が一般負担金という形で、相互扶助の形で原子力損害賠償の費用を出させていただいていますが、これについて今後の負担の在り方ですね、例えば事業者が廃炉をするとか、事業者が原子力を撤退していくとなるとその負担の考え方は他に負担が押し寄せていきますので、こうしたことについてやはりきちっと負担をどうするかという、そういう中において、例えば国と事業者との負担のバランスとか、そういったことについて御検討いただけないかというふうに考えているところでございます。
以上でございます。
〇倉林明子君 今おっしゃった部分だけでも、額が確定できないような部分も含めて入っておったかと思うんですね。
総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会に八木参考人も参加されて、その中でもこの事業環境整備について挙げられて説明されているくだり読ませていただきました。三つ目に挙げられていたのが、巨額の投資回収の見通しが立つ措置ということで、参考人の発言記録を読ませていただいた中には書き込まれておりました。
現状では、こうした原発に掛かるコスト負担、相当になるということから、投資回収の見通し、このままでは立たないというお考えなのかどうか、いかがですか。
〇参考人(八木誠君) 私申し上げましたのは、原子力事業の事業の特殊性として、フロントからバックエンドも含めまして非常に長期にわたる事業であり、その間における投資というのは非常に多大な投資が要るということ。こうした費用を民間事業者が確実に、適正に、失礼、表現を変えます、適正に回収していけるような制度ということで、実はこれまでは総括原価制度という制度があったわけでございますが、今回の電力システム改革の中でそうした制度がなくなって事業環境が非常に不透明な状況になっています。そういう中で、民間事業者として、あくまでもやはりこの原子力事業及び原子燃料サイクル事業、これを進めていきたいという強い気概を持っております。
ただ、そういう事業を進めるに当たって、長期の事業の予見性を立てるということが是非とも必要であると。そういう意味では、原子力の事業の特殊性を考えた上でいろいろな環境整備をお願いしたいと、こういう考え方でございます。
〇倉林明子君 改めて説明するまでもないとは思いますが、我々、原発はゼロに即時判断すべきだという立場ではあるんですが、事故の危険性と事故が及ぼす被害というものの甚大さを考えるだけでなくて、コスト面からもやっぱり検証していく必要があるし、今後とも予見性が立たないような中身があるんだということを今日改めて教えていただきましたので、議論の参考にさせていただきたいと思います。
今日は終わります。
- 日時
- 2024/11/22(金)
- 場所
- 内容