倉林明子

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中間報告書とりまとめへの意見表明(国の統治機構に関する調査会)

2015/05/20

 参院国の統治機構に関する調査会は、5月20日、中間報告書をとりまとめるのあたり、各党が意見表明を行いました。
 同調査会は2013年8月に設置され、「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」を調査テーマにし、2年目にあたる本年は「国と地方の関係」を調査項目としました。「平成の大合併」を推進してきた東京大学名誉教授の西尾勝氏や地方分権改革有識者会議の座長を務めている神野直彦氏などを参考人として意見聴取を行い、4回にわたって質疑を行ってきました。
 倉林議員は意見表明に際して、「住民自治のあり方を問うこの間の二つの出来事、大阪市の住民投票と沖縄の辺野古新基地建設の問題をとりあげ、「住民の声も、地方自治体の声にも耳を傾けない政府の姿勢は民主主義を求める多くの国民の怒りをさらに広げることになる」と厳しく指摘しました。
 5月17日に行われた大阪市の地方自治のあり方を問う住民投票については「この住民投票は、大阪市をなくすという地方自治の統治機構のあり方ではなく、住民の福祉の向上が図れるのかどうか、どんな自治体になるのかが問われた。大接戦の末、大阪市存続という結果となったことは住民自治が発揮された結果だ」と述べました。
 また、沖縄の辺野古新基地建設では、辺野古新基地建設反対の声が今や経済界含めオール沖縄の民意になっていることに触れ、「憲法が定めた地方自治の精神にのっとり、政府はこの沖縄の民意を尊重し、辺野古新基地建設の中止を決断すべき」と主張しました。
 そのうえで倉林議員は「地方から問われているのは、国と地方の統治機構の変更ではなく、政府が憲法の定める地方自治を尊重し、民主主義を徹底することだ」と重ねて主張しました。

議事録を読む
第189回国会 国の統治機構に関する調査会 第5号 2015年5月20日(水曜日)

国の統治機構等に関する調査(「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、国と地方の関係)

〇会長(山崎力君) 国の統治機構等に関する調査を議題といたします。
本日は、これまでの調査を踏まえ、中間報告書を取りまとめるに当たり、「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、「国と地方の関係」について委員間の意見交換を行います。
議事の進め方でございますが、まず各会派からそれぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員間で意見交換を行っていただきたいと存じます。
意見のある方は、挙手の上、会長の指名を受けてから御発言いただくようお願いいたします。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、意見を表明される方は順次御発言願います。

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、二年目のテーマである「国と地方の関係」について調査を進める調査会の冒頭、私は、憲法での位置付けを踏まえた議論が必要だと意見を表明いたしました。
そもそも、地方公共団体のことは当該地方公共団体が決める原則、地方公共団体のことは住民自身が決める地方自治の原則が発揮され、地方自治体が住民福祉の増進という地方自治の目的を果たすことが要請されております。そのために国はどんな役割を果たすべきか、参考人質疑を通じて明らかになり、国会が学ぶべきだと考える点を指摘したいと思います。
第一に、地方分権改革と一体に進められた三位一体改革は、地方自治を後退させたということです。
湯崎広島県知事は、三位一体改革は明らかに非常に悪い影響を与えているとして、ますます我々の自治というのは奪われている状況だと述べられました。
井戸兵庫県知事は、三兆円の税源移譲を評価しながらも、国の財源不足の解消に使われただけ、それで、しかも財源不足解消以上に交付税を切り込まれてしまったとの結果に落ち着いてしまったという意味ではうまく活用されたと思いを語られています。
政府に地方分権の提案を行ってきた当事者の発言にも学ぶべきです。
西尾氏は、三位一体改革について、結果を見て唖然とするような、こんなはずではなかったといいますか、惨めなる結果に陥ったわけで、大失敗としか言いようがありません、政治主導で進められる事柄の恐ろしさというものを実感しましたと述べられています。
自ら三位一体改革に関与したとして、神野氏は、自主財源である地方税を増やすことによって一般財源、つまり地方税プラス交付税を増やそうというのがそもそも意図だったと、関与した私の責任ですけれども目的とは逆の方向になってしまったと述べられています。
一九九三年、地方分権改革のスタートとなった地方分権の推進に関する国会決議は、全会一致で可決されました。その内容は、東京一極集中を排除し、国民が等しくゆとりと豊かさを実感できる社会を目指し、国から地方への権限移譲、地方税財源の充実強化等地方公共団体の自主性、自律性の強化を図るとしていました。政府が行った三位一体改革は、地方分権を保障する財源を確保するどころか大幅に削減したものであり、国会決議にも反するものであることを改めて指摘するものです。
第二に、平成の大合併は、住民福祉の後退、地方の疲弊を招いている点です。
井戸兵庫県知事は、平成の合併では新しい市役所に機能が集中したため周辺部の住民の利便性が低下し、旧役場所在地周辺のにぎわいの喪失をもたらした、合併された市町村の役場所在地の疲弊は非常に著しい、あるいは公共施設などの身近なサービス施設が合体することによってなくなる、サービスが遠くなるというようなひずみが出てくる、こういうところの対策が十分に行われてこなかったと指摘されました。
自らゴーサインを出した責任者の一人だという西尾氏は、いずれはやらざるを得なかったと言われながらも、結局、余りメリットのない結果に終わったといたしまして、やはり財政的な締め付けが一番利いてしまったのではないかと述べられました。
佐々木氏は、失敗だとは思わないとされながらも、結局、地方分権の主体をつくるんだと言いながら財政支援に釣られた合併に終わったので、結果がよく見えないものになっていると指摘ありました。
平成の大合併は、交付税の優遇措置で小さな基礎自治体を解体させ、地方自治の機能を弱体化させる結果を生んだ事実を直視すべきです。
井戸兵庫県知事は、コンパクトシティー構想について、中心部だけが繁栄して周辺部の衰退を加速させる、一極集中構造を全国各地に広げようとするもので反対だと明確に述べられたことも大いに学ぶべきです。
第三は、道州制について、多くの参考人から慎重な意見が示された点です。
人羅氏は、道州制の基本法について、手続面のみを先行させようとしている点に危惧を感じる、都道府県の再編は国民投票に値する重要な案件であり、十分な議論が必要だと指摘されました。
秋月氏は、米軍基地を例として、分権議論においては、国は外交、防衛に特化してその他の事務権限は地方が担うべきだと過剰に単純化した議論について、基地問題は、経済、労働、治安等、地方自治体にとっての課題にも関わる、過剰に単純化した議論は適切ではないとしまして、より柔軟に多様性を許容する方向性が必要、先ほど紹介されたとおりの発言をされております。
西尾氏は、国会議員の道州制の議論に対して、思い切ってできるだけたくさんのものを下ろしてしまおうと思っている、その発想が非常に危ないと思っているといたしまして、集権的な道州制になることに反対だと明確に述べられました。さらに、道州制の導入とセットで市町村を更に減らせという議論も、関東や関西など巨大な道州制をつくることも非現実的だという指摘を国会は重く受け止めるべきです。
最後に、国と地方の関係を考える上で二つの大きな出来事を紹介したいと思います。
先ほどもありました、五月十七日、大阪市で地方自治の在り方を問う住民投票が実施され、大接戦の末、大阪市を残すという結果は、自分たちの町のことは自分たちで決めるという住民自治が発揮されたものでした。
この住民投票で争点となったのは、大阪市をなくすという地方自治の統治機構の在り方というより、それによって住民の福祉の向上が図れるのかどうか、どんな自治体になるのか、ここが問われたのではないかということを指摘したいと思います。
同日、沖縄では辺野古への新基地建設に反対する県民大会が開かれ、三万五千人が集結しました。翁長県知事は、訴えの中で、安倍総理、菅官房長官との会談内容を国民が注目することになり、世論調査の変化は本土の沖縄の理解が深まったと支援に感謝されています。さらに、基地問題の原点は普天間基地が戦後米軍に強制接収されたことであり、沖縄は自ら基地を提供したことは一度もない、自ら土地を奪っておきながら、普天間の危険を除去するためには辺野古への移転しかない、代替案はあるのかと沖縄に迫ることは政治の堕落だと厳しく日本政府の姿勢を批判しました。
沖縄で示された辺野古新基地建設反対の声は、今や沖縄の経済界も含めたオール沖縄の民意となっています。憲法が定めた地方自治の精神にのっとり、政府はこの沖縄の民意を尊重し、辺野古新基地建設の中止を決断すべきです。
今、地方から問われているのは、国と地方の統治機構の変更でしょうか。憲法が定めた地方自治をいかに政府が尊重し、民主主義を徹底するかではないでしょうか。この道しかないとして、そこに住む住民の声も地方自治体の声も聞かない政府の姿勢は民主主義を求める多くの国民の怒りを更に広げるものとなることを強く指摘しまして、意見表明といたします。

日時
2024/11/22(金)
場所
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