倉林明子

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原発再稼働を担保に 電事法改定案 審議入り 本会議で批判(本会議 対総理質疑)

2015/05/29

 電気・ガス・熱供給事業の一体的全面自由化をねらう電気事業法改定案が5月29日、参院本会議で審議入りしました。日本共産党の倉林明子議員が質問しました。
 倉林議員は冒頭、東京電力福島第1原発事故の収束と原因究明、被害の完全賠償の責任を果たすよう要求。法案がめざす電力システム「改革」は、原発の再稼働を担保し事故を起こした東電をはじめとする電力会社、原子炉メーカー・石油・大手商社などがエネルギー市場で活躍できる「成長戦略」の具体化だと批判しました。
 安部政権が2030年の電源構成で原発の比率を2割に引き上げるなど「原発回帰」を強めていると指摘。再稼働反対が国民の多数の声だという現実から出発し「原発ゼロ」を改革の土台にすえるべきだと提起しました。
 公聴会の廃止により、公共料金にかかわる情報が隠される危険があるとして、自由化後も電源構成を含む原価情報と合わせて料金決定に至る情報公開を徹底するよう要求しました。
 安部晋三首相は「消費者の立場からどのような情報公開を求めるか検討していく」と答弁しました。

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第189回国会 本会議 第22号2015年5月29日(金曜日)

電気事業法等の一部を改正する等の法律案

〔倉林明子君登壇、拍手〕

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
私は、日本共産党を代表して、電気事業法等の一部を改正する等の法律案について総理に質問します。
本法案は、東日本大震災と福島第一原発事故を契機として、戦後六十年以上続いてきた発送電一貫、地域独占の電力供給体制を抜本的に見直す必要があるとして進められてきた電力システム改革の総仕上げとなっています。
総仕上げに当たって、福島第一原発事故の実態を踏まえることは当然です。事故から四年以上たった今も、汚染水をめぐるトラブルは後を絶たず、事故収束の見通しは全く見えておりません。総理が前面に立ってやるべきは、原発の再稼働や輸出を進めることではなく、原発事故の収束と原因究明ではありませんか。
避難生活を続ける福島県民はいまだ十一万人。放射能の受け止め方の違いで深刻な亀裂が入った家族、賠償の違いで分断された集落など、原発事故はふるさとも家族の大事なきずなも引き裂き、なりわいの見通しも立っていません。原発事故さえなければ被ることのなかった深刻な被害はいまだに続いているのです。
ところが、自民党東日本大震災復興加速化本部によれば、帰還困難区域を除く区域は避難指示を解除し、一律二〇一七年度で賠償を打ち切り、営業損害賠償も原則二〇一六年度で終えるとした案をまとめ、総理に提言すると報道されています。
総理は、地元の意見をよく聞いて、被害者に寄り添った対応を行うことが重要と答弁されています。そうであるなら、一律の賠償打切りなど実施すべきではありません。東京電力と国は、事故を起こした加害者として被害の完全賠償の責任を果たすべきです。総理の見解を求めます。
津波による深刻な事故が起こることを知りながら必要な対策も取らず、事故を起こした後もトラブル、隠蔽を繰り返す東電に原子力を扱う当事者能力がないことは明らかです。さらに、除染費用や賠償を出し渋る東電は福島再生の障害となっています。本法案の附則第七十四条では、原子力政策の変更による電力会社の競争条件の悪化に対し必要な改善措置等を講ずるとして、原子力の事業環境整備を行うなどもってのほかです。東電を破綻処理し、大株主とメガバンクの責任を問うことを強く求めるものです。いかがですか。
原発は可能な限り低減させるとしながら、原発をベースロード電源と位置付けたエネルギー基本計画を受け、二〇三〇年の電源構成案は、原発比率を二〇から二二%としています。老朽原発の稼働を前提として、原発の運転期間は四十年とした法の原則さえ無視するものであり、到底容認できません。原発事故後、一時稼働した大飯原発が停止した二〇一三年の九月以降、一年八か月間、稼働している原発はゼロなのです。福島原発事故などなかったかのように原発比率を二割に引き上げるなど、原発回帰の再稼働宣言ではありませんか。
政府は、新たな規制基準に適合した原発は再稼働を進めるとする一方、新たな規制基準を満たしても事故は起こり得ると規制委員長は繰り返し発言しています。
一旦事故を起こせば、国民の人格権、生存権を侵害するのが原発事故です。原子力発電に対する国民の不安と不信は大きく広がり、再稼働には反対だ、この声が多数だという現実から出発すべきであり、原発ゼロを電力システム改革の土台に据えるべきです。総理の答弁を求めます。
原発と同じくベースロード電源に位置付けた石炭火力発電所は、出力五十万キロワットを超える大規模発電所計画がめじろ押しです。原発の稼働率が政府の見通しを下回れば、大規模石炭火力発電所の稼働率が上がることは明らかです。EUやアメリカなどでは、石炭火力発電所の建設を認めない動きが広がっています。原発の代替に石炭火力を使うやり方は地球温暖化防止対策にも逆行するもので、きっぱり決別すべきです。いかがですか。
原発事故を経験した国民は、再生可能エネルギーの爆発的な普及を期待しました。再生可能エネルギー特別措置法、いわゆるFIT法でその可能性が大きく広がりました。一般電気事業者の地域独占を廃止する電力システム改革は、広域で運用すればするほど、その変動を緩和できる再生可能エネルギーの普及促進を加速させる機能を果たすはずでした。
ところが、全国大で需給調整機能を果たす広域的運営推進機関の運用が始まる前に、政府は、一般電気事業者が再生可能エネルギーの接続を拒否できるFIT法の規則改正を行いました。接続義務の原則と例外を逆転させるもので、既に再生可能エネルギー普及のブレーキとなっています。
総理は、接続可能量は、原子力も含め、ベースロード電源の長期的な稼働計画を前提としていると答弁していますが、動いていない原発が最大限稼働することを前提としていることが問題なのです。再生可能エネルギーの最大限の導入という方針と矛盾するではありませんか。
エネルギーを自由に選べるとしていますが、公共料金である電気やガス料金の中身がきちんと消費者にも情報公開されることが必要です。ところが、規制料金の撤廃により、公聴会も廃止するとしています。原発事故後、消費者にようやく見え始めた料金に係る情報が全く隠れてブラックボックス化することになりかねません。
新たに市場の監視を行うとして設置される電力・ガス取引監視等委員会が、託送料金や経過措置期間中の小売料金について厳格な審査を行うとしていますが、完全自由化後は市場の監視のみとなるものです。情報公開や料金決定にこれまで以上に消費者意見が反映できる制度とし、自由化後も、電源構成も含む原価情報と併せて料金決定に至る情報公開を徹底すべきです。総理の答弁を求めます。
なぜ、ガスの全面自由化、導管分離が必要なのでしょうか。
先日視察した東京ガスは、阪神・淡路大震災を経験して地震時の対応システムを完成させ、東日本大震災でもガス管の閉鎖、復旧に即応できることを実証しました。ガス製造から小売まで一体で確保されてきた保安体制は維持されるのか、ほとんど検証されていません。
一方、この導管を使ってガスの販売、小売にも参入できるのはLNG基地を持つ電力会社などに限られるもので、ガスの市場に参入拡大できる電力会社のメリットは明確ではないでしょうか。消費者、国民の安全を最優先に据えるべきです。総理、いかがですか。
本法案が目指すシステム改革は、原発の再稼働を担保し、事故を起こした東電を始めとした電力会社、原子炉メーカー、石油、大手商社などがエネルギー市場で活躍できる成長戦略の具体化にほかなりません。
発送電の完全な所有権分離と送電網の公的管理を行い、地域のエネルギーは地域でつくる小規模分散・地域循環型システムへの民主的改革を求めて、質問を終わります。(拍手)

〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

〇内閣総理大臣(安倍晋三君) 倉林明子議員にお答えいたします。
原発事故の収束と原因究明についてお尋ねがありました。
世界にも前例のない廃炉・汚染水対策については、技術的難易度が高い取組への財政措置を行うなど、東電任せにせず、国も前面に立って取り組んでいます。
福島原発事故の原因の解明は、国として継続的に取り組むことが重要です。これまでに国会、政府の事故調査委員会において事故の検証が行われ、報告書が取りまとめられています。さらに、独立した原子力規制委員会が昨年十月に中間報告書を取りまとめるなど、事故原因の技術的解明を進めており、今後も中長期にわたって継続的に取り組んでまいります。
原子力損害賠償についてのお尋ねがありました。
政府としては、与党の御意見も参考にさせていただきながら、東京電力に対し、被害者に寄り添った迅速、公平かつ適切な賠償を行うよう指導してまいります。
東電を破綻処理すべきとのお尋ねがありました。
東京電力は、福島第一原発の炉の設置者であり、現場に精通し、これまで様々な作業に取り組んできていることから、廃炉の実施主体としての責任を引き続きしっかり果たすべきと考えております。
その上で、東電を破綻処理し、一時国有化することについては、被害者の方々への賠償や、現場で困難な事故収束作業に必死に当たっている関係企業の取引債権が十分支払いできないおそれ、直ちに東電と同等の電力供給を行える体制を確保できなくなるおそれ、海外からの燃料調達や権益確保に支障が生じるおそれがあり、福島の再生やエネルギーの安定供給の観点から適当ではないと考えています。
また、金融機関に対しては一般担保が付されている私募債方式の縮小、株主に対しては無配当の継続などの形で協力、責任を求めております。
なお、法案の附則第七十四条の検証規定は、課題や懸念があれば、それを解消するための環境整備に取り組むことで電力システム改革を最後までやり遂げるという趣旨で設けたものであります。
原発比率についてお尋ねがありました。
痛ましい原発事故により、今でもなお多くの方が厳しい避難生活をされています。復旧・復興はいまだ道半ば。そうした中、原発への反対の声が強いのは当然のことと思います。
他方で、原発が全て止まり、これに伴う燃料輸入増による電力料金の上昇は、国民生活や中小・小規模企業の方々に大きな負担となっています。この状況は電力システム改革の有無に関わりません。このため、国民生活や産業活動、中小・小規模事業者を守り、責任あるエネルギー政策を実現するためには原発ゼロというわけにはいきません。
その上で、徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進めつつ、原発依存度は可能な限り引き下げるという方針を踏まえ、二〇三〇年時点における電源構成上のあるべき姿として、震災前の約三割という原発比率を約二割まで引き下げる案をお示ししているところです。
石炭火力発電についてお尋ねがありました。
エネルギーの特性を考えると、安定供給、コスト、環境負荷、安全性といったあらゆる面で優れたエネルギー源はありません。このため、エネルギー資源に恵まれず、海に囲まれている我が国としては、各エネルギー源の強みが生き、全体として弱みが補完される、柔軟かつ多層的なエネルギー供給構造を構築する必要があります。
我が国において、石炭火力は安定供給性や経済性に優れた重要なベースロード電源であり、高効率発電技術の有効利用等により、環境負荷を低減しつつ活用してまいります。
再生可能エネルギーの接続可能量についてお尋ねがありました。
固定価格買取り制度では、二十年間など長期間にわたる電気の買取りを保証するため、先般の接続可能量の検証に当たっては、足下の稼働状況ではなく、ベースロード電源の長期的な稼働傾向を前提としたものと承知しています。
再生可能エネルギーの接続についての今回の対応措置は、停電を起こすことなく、これからも再生可能エネルギーをしっかり受け入れていけるために講じたものです。徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進めつつ、原発依存度を可能な限り低減させるという基本方針に変わりはありません。
電気やガス料金に関する情報開示の徹底についてのお尋ねがありました。
電気やガスの一般家庭向けなどの小売料金については、競争が十分であると確認されるまでの間、経過措置として料金規制が講じられることから、その認可に係る審査過程を通じて情報開示が実施されます。小売料金規制の撤廃後は、引き続き厳格な市場監視を行うとともに、消費者の立場からどのような情報公開を求めるか検討してまいります。
今回の法案によるガスの全面自由化や導管分離の必要性と保安体制の維持についてのお尋ねがありました。
電力システム改革に加え、ガスシステム改革を一体的に進めることで、競争的でダイナミックなエネルギー市場をつくり上げ、電気とガスのセット販売など、多様で魅力的なサービスが消費者に提案されることが期待されます。このため、電力に加え、都市ガスも、小売の全面自由化や導管の中立化により、事業者の規模やガス供給設備の有無を問わず、幅広い事業者が参入できるようあらゆる参入障壁を取り除いてまいります。
なお、保安の確保は、ガスシステム改革の大前提であり、今回の法案では、導管網の保安は基本的にガス導管事業者が担った上で、全てのガス事業者に連携協力義務を課すことにより、保安の確保に万全を期すこととしております。
所有権分離などにより、地域でエネルギーをつくる仕組みを支える改革へと転換することについてのお尋ねがありました。
エネルギー市場を一体的に改革し、送配電部門の法的分離などにより、あらゆる参入障壁を取り除いていくことで、地域の分散型電源の活用も含め、多様な主体がエネルギー供給に参加できるようになります。
御指摘の所有権分離や送電網の公的管理については、財産権や資金調達の面で課題があると考えております。(拍手)

〇議長(山崎正昭君) これにて質疑は終了いたしました。

日時
2024/11/22(金)
場所
内容

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