道州制は調整に難題 参考人が疑問陳述(国の統治機構に関する調査会 参考人質疑)
2015/05/13
参院国の統治機構に関する調査会は5月13日、「国と地方の関係(人口減少社会における基礎自治体)」をテーマに参考人質疑を行いました。倉林明子議員は道州制や住民自治のあり方について参考人(森田朗=国立社会保障・人口問題研究所所長、片山健也=北海道ニセコ町長)に質問しました。
住民自治のあり方について、片山氏は「人口減少や地域の衰退という自治体の将来が危ういときに、町を担っているのはそこにいる住民。住民が主人公のまちづくりのために徹底した情報共有と住民参加をすすめている。」と述べました。
森田氏は道州制について「憲法93条では地方公共団体の長、議員は直接選挙で決めるとされており、仮に道州制で州になればその州の長に強力な権限が与えられることに。州間の財政的な調整も含めて、国全体としてのバランスを調整ができるのかというと難しいのではないか」と批判的な意見を述べました。
国の統治機構等に関する調査(「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、国と地方の関係(人口減少社会における基礎自治体))
〇会長(山崎力君) 国の統治機構等に関する調査を議題といたします。
「時代の変化に対応した国の統治機構の在り方」のうち、「国と地方の関係」について調査を行うに当たって、本日は「人口減少社会における基礎自治体」について参考人から意見を聴取いたします。
御出席いただいております参考人は、国立社会保障・人口問題研究所長森田朗君及び北海道ニセコ町長片山健也君でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本調査会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。
皆様方から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますが、まず森田参考人、そして片山参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、御発言は着席のままで結構でございますので、よろしくお願いいたします。
それでは、森田参考人からお願いいたします。森田参考人。
〇参考人(森田朗君) 国立社会保障・人口問題研究所の森田でございます。
本日は、この国の統治機構に関する調査会で意見を述べる機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げます。
私の専門は行政学、広い意味での政治学でございまして、これまで行政組織であるとか、あるいは公共政策について研究を行ってまいりました。近年では厚生労働省の中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協でございますが、そこの会長を務めておりますし、また国立社会保障・人口問題研究所に勤務しておりますことから、専ら医療、社会保障政策を中心として研究を進めております。そのため、地方自治及び国の統治構造に関する研究につきましては最新の研究成果を十分にフォローしていない可能性もございますが、その点につきましてはお許しいただきたいと存じます。
以下、では、現在の人口減少社会における地方自治体の在り方、国と地方の関係、特に基礎自治体に焦点を当てて意見を述べさせていただきます。このテーマに関しましては、比較的最近書いた論文等につきましてはお手元に資料として配付されていることと存じますので、参考にしていただければ幸いでございます。(資料映写)
私自身は一九九五年に設置されました地方分権推進委員会及び二〇〇一年に設置されました地方分権改革推進会議に関わってまいりました。これらの会議が目指しました分権改革といいますのは、ここにありますように、それまでの国の中央集権的な体制を改め、憲法にも示された地方自治の実現を図ることであると理解しております。具体的には、国、すなわち中央政府による地方自治体に対する制度上の統制、また補助金等を通した様々な規制を削減し、その地域のことについてはその地域の住民が自ら決定できる状態を実現すること、これを目指してきたと思います。
私は、このような理想的な地方自治の状態と申しますのは、第一に、政策がその地域内で完結し、国や広域自治体の政策から切り離して決定できること、第二に、その政策及び首長、議員は地域住民の民主的参加によって決定されること、そして第三に、それらの政策を実現するために必要な財源は地域住民によって負担されること。要するに、政策の地域的完結性、住民自治、そして自主財源という条件が満たされるときに理想的な地方自治というものを実現できるのであって、これまでの地方分権改革はこうした状態に少しでも接近することを目指して行われてきたと言えると思います。
そのために、地方分権改革では、国という上位の政府による統制をなくし、中央政府と地方自治体とを対等な協力関係に変えることを目指して機関委任事務制度を廃止するとともに、地方の政策実現を阻害する補助金等の廃止によって自主財源の拡充であるとか、また必置規制の廃止、さらには権限移譲などを行ってまいりました。その結果、自治体の自己決定の範囲というものは拡大し、多数の補助金が交付金化されるなど、自治の拡充に資する基本的な制度改革が実現したと思っております。
しかしながら、それによって、地方自治体、特に住民に近い基礎自治体の自立性が増し、地方自治の理想に大きく近づくことができたかといいますと、これは必ずしもそうとは言えないように思っております。
なぜそうなのか。私は、その理由として第一に、法制度面の改革に改革のエネルギーを集中させ、全国一律の制度改革を施行したために各自治体が置かれている状況の多様性を十分改革に取り込むことができなかったこと、また現代国家においては国と地方の事務が深く結び付いており、それを切り分けることがそもそもかなり困難であったこと。そして、第二の理由としましては、分権改革を始めた一九九〇年代の半ば以降、改革が前提としていた社会環境が大きく変わり、改革の前提が失われてしまったことがあると思います。
第二の社会環境の変化として指摘できるのは、第一に、国、地方の財政状況の悪化です。第二は、昨今話題となっております人口減少です。以下、財政状況そして人口減少の状況について述べさせていただきたいと思います。
財政状況が悪化したことにつきましては改めて申し上げるまでもないと思います。私自身は財政学の専門家ではございませんので詳細についての説明はできませんけれども、このグラフ、図が示しておりますように、我が国の場合、防衛と年金を除くほぼ全ての事務において国と地方の双方が仕事を分担しております。
すなわち、国と地方が経費を負担して住民に対して行政サービスを提供しているわけですけれども、周知のように、多くの地方の税源は限られており、補助金、交付金そして地方交付税という国からの移転財源に地方は多くの財源を依存しています。この状態自体は分権改革以前から存在し、したがいまして、改革時においては、まずは国から来る財源の自由度を高めること、地方が自由に使えるようにすること、例えば要綱によって制約の多い補助金を廃止し、交付税等の使い道を固定されない一般財源に転換すること、さらには、それを推進するために、国と地方で分け合っている税源の一部を国から地方に移譲すること、このようなことが試みられました。
その結果、どの程度地方自治体の財政的自由度が高まったかということは私自身はよく分かりませんが、そのような改革にもかかわらず、九〇年代以降続いた国、地方の財政難は地方財政を悪化させ、結果として国への依存度を下げることにはならなかったと思います。特に、地方税制の問題でもあると思いますが、税収の偏在が農村部の小規模自治体の財政状況を一段と厳しいものにしていると言えます。
このような状況は、この図が示しております。これは平成四年、一九九二年以降、急速に地方債の発行残高が増えていることを示しています。多くは国、地方を通じた景気回復のための支出によるものであります。平成十六年、二〇〇四年以降は地方債残高の増加傾向は止まり、むしろ最近では減少に向かっていますが、その内容を見ますと、他方によりまして将来の交付税の先取りとも言える臨時財政対策債の占める比率というものが高まってきているのがお分かりいただけると思います。
二十一世紀に入ってからは高齢化に伴う社会福祉の負担増によって財政はますます厳しくなり、最近では、特に平成の合併による財政の特例措置の期限が到来したため、合併した自治体の中には一層厳しい状態に陥っているところもあるようです。このような状態の中、現在地方創生が叫ばれ、自治体から期待の声も聞かれます。更に申しますと、今後は、これまで比較的豊かであった都市部の自治体も、これから生じます急速で大規模な高齢化によって財政事情は悪化していくことが予想されます。こうした、自治のある意味で最も基本的な要素である財政的な自律性が脆弱化していくことは、分権改革の当初の前提を大きく変えるといいましょうか、前提と違った状況が生じていると思います。
次に、人口減少に話を進めさせていただきます。
地方分権改革で十分に考慮されていなかった社会環境の変化の第二は、人口減少です。昨年の地方消滅というショッキングな問題提起以来、地方創生に至るまで、前提になっておりますのは人口減少、とりわけ地方農村部の人口減少の問題です。二十代、三十代の女性が急速に減少する地域は消滅の可能性があるとして、それに対する対策が叫ばれていますが、人口学の観点から見る限り、大量の移民でも受け入れない限りは全国的に短期的に人口の自然増を図ることは極めて困難です。生まれてくる子供の数を増やす政策を最大限実施する一方で、当面は少子化、人口減少を前提として社会の在り方、制度の在り方を考えていかなければならないと思います。
これは、日本の人口ピラミッドが二〇一〇年から六〇年までどのように変化するかを示したものです。アニメーションになっております。次第に下がすぼまり、次第につぼ型になって面積が小さくなっていくことを御理解いただけると思います。この右側の点線の部分ですけれども、この点線で囲まれた部分はまさに二十代、三十代の女性です。一人の女性が一生の間に産む子供の数である合計特殊出生率が現在注目されているところですけれども、二十代、三十代の女性の数、絶対数そのものが、この図が示しておりますように五十年間で半減いたします。
今問題になっている人口減少対策では、これまでも急速に人口減少、特に若い世代の人口の大都市への流出等によって人口減少と高齢化が生じている農村部の自治体の問題として、この問題をいかに、農村部の自治体をいかにして活性化し、人口増に結び付けるかということが議論されております。まさに消滅の可能性のある地域を存続させる策が模索されているわけですけれども、統計数値を見る限りでは、かなり厳しいものがあると言わざるを得ないと思います。
この図は、二〇一〇年から三十年間の市町村別の人口動態を示したものです。ごく一部の都市部で増加が予想されるものの、五〇%以上の減少が予想されている市町村も多数あります。こうした人口減少と高齢化は、言うまでもなく、地域社会の活力の低下に結び付き、地域共同体の機能を低下させ、必要な行政サービスの質、量の維持を困難にします。特に、災害時等の非常時における対応能力の低下は大きな課題と言わざるを得ないと思います。
このような将来の人口減少については、かなり以前から予測されておりました。そのために、今から十数年前に市町村合併の必要性が言われ、実は私自身もその推進に協力してまいりました。結果といたしまして、市町村数はほぼ半減いたしましたが、合併推進の過程で様々なあつれきがあり、また合併後の地域間にしこりも残り、人口減少に対する対策としての合併は、大変不評な策として現在の人口減少対策の選択肢には入っていないように思われます。しかしながら、合併を推進してきた者といたしましては、望ましいと思われますこの合併という一体化策を取るか取らないかはともかくといたしまして、公共施設にせよ、医療施設にしましても、集約化、集中化はその地域社会の機能を維持していくためには避け難い選択肢であるように思われます。
ところで、現在の人口減少問題は、大都市、特に首都圏とそれ以外の農村部の地方との対立図式で論じられ、若者や富を吸い取る首都圏への地方からの人口の流出を食い止め、地方にとどめることが地方創生につながると主張されているように思います。
しかしながら、人口動態を見る限り、首都圏におきましては、この図が示しておりますように、高齢化がこれまでにない規模と速度で起こるとともに、若い世代の人口も都市部でも急速に減少することが予測されています。我が国全体の衰退を食い止め、持続可能で発展に向かう社会をつくるためには、都市部と農村部で人口の取り合いをするのではなく、人口減少という課題を緩和するために最も適した地方自治体の在り方を考える必要があると思います。
さて、財政状況及び人口減少が地方分権改革の前提を変えてきたと述べてまいりましたが、それでは、統治構造という観点から今後の我が国の地方自治体、特に基礎自治体の在り方はどうあるべきなのか、私の意見を述べさせていただきます。
結論から申しますと、制約条件が多いためベストの解決策というものは容易に見出せないと思われます。しかし、重要なことは、住民が日本国民として安心して暮らせる環境を保障することだと思います。それぞれの地域でそれが実現できればよいのですが、人口減少による地域社会の機能の低下は避け難いと言わざるを得ません。したがって、今後の地方自治体の在り方としては、以下のような方向で考えるべきではないかと思っております。
第一に、人口減少で現在の自治体の中にはその機能を果たすのが困難なところも多数出てくる可能性があります。他方、持続可能な地域の活力を保持している自治体ももちろんあります。したがって、言えることは、自治体の規模、能力等に応じて多様な制度を検討することではないかと思います。一国多制度という言葉がございますが、自立可能な規模と能力を持つ自治体には多くの自治権を認める一方で、それだけの力を持たない自治体については事務の一部ないし全部を広域自治体ないし国が肩代わりして担うという形での多様化もあり得ると思います。
その場合に、どのような事務をどこが担うべきなのか、その線を引くことは容易ではありませんが、自ら担い得る事務のみを担い、それ以外の事務については、それを担い得るところが担当するというのは補完性の原理という考え方にも合致するものであると思います。もちろん、それを自治体ごとに選択できるようにするという考え方もあるでしょうが、一応類型化を行い、それぞれについて基本的に担う事務を定めておくということが望ましいのではないかと思います。例えば、現在の高齢化や財政力から見る限り、東京のような大都市の中心部と高齢化が急速に進むそのような都市の周辺部、地方の核となり得る都市と農村部の小規模自治体等といった区別です。
第二の方向としましては、こうした自治体の事務の編成を前提にして、行政機能の集約化、集中化、共同化が必要であるということです。それには既に言われておりますようなコンパクト化の推進というのが不可欠であり、公共施設や他の都市機能を中核的な自治体に集中させ、周辺の小規模な自治体と連携し、それらの自治体を中核となる自治体が支援するような、そうした仕組みをつくることが必要ではないかと思います。その延長上に合併による規模拡大と集約化という方法もあり得るとは思いますが、仮に合併が困難であったとしても、同様の効果を生むような仕組みというものが考えられてしかるべきではないかと思います。
特に、農村部、山間部の小規模自治体の場合、今後の人口減少、高齢化によって、地域共同体としての機能の維持が困難になるところも出てくると想定されますので、中核となる自治体、あるいは広域自治体がその機能を代替するような制度も必要になってくると思います。あるいは、行政事務の代行を一種のビジネスのような形で実施しておりますアメリカのシティーマネジャーのような制度も検討されるべきではないかと思います。そのような小規模自治体の場合、先日の地方議員選挙でも見られましたように、地方自治の最も根幹的な要素である住民自治の機能の低下も懸念されるところであります。無投票当選、さらには議員定数を充足できないような状態が拡大するとしますと、冒頭に述べました住民自治の根幹を揺るがす可能性があるということです。自治の能力を失った地域社会では、住民の生活を維持し、安全、安心を維持することは困難と言わざるを得ません。
関連しまして、第三に、今後、地方農村部の人口減少、高齢化が当分続くと想定される以上、それらの自治体の中には存続していくことが困難なところが出てくることは間違いないのではないかと思います。それらの自治体にも住み続けたいという住民がいる限りはその支援は必要です。しかしながら、若い年齢層の人口を維持できない場合には、いずれ消滅するという可能性が高いと言わなければなりません。そのような自治体に対しては、二十年、三十年という長期的な計画に基づいて自治体としての機能を他の自治体に吸収ないし統合していく、そうしたダウンサイジングを計画的に進めていくことが必要ではないかと思います。
時間もほぼ参りましたので、最後に結論的なことを述べさせていただきたいと思いますが、重要なことは個々の国民の生命、生活を守ることであり、それに必要なミニマムの行政サービスを的確に供給することです。これは、国家の国民に対する責任であると思います。統治構造における自治体の在り方は、その目的を達成するのに適した形態は何かという観点から探求されるべきではないかと思います。高度に発展し、地域の相互依存性が高まり、しかも人口減少、高齢化が進行しつつある現代社会において、伝統的、歴史的な自治の姿に固執すべきではなく、今後の我が国の姿を見据えて、それに適した制度の構築を検討すべきではないかと思います。
まだ多くの触れられなかった論点もございますが、それらにつきましては、後の質疑の折に御質問があればお答えさせていただきたいと存じます。
どうも御清聴ありがとうございました。
〇会長(山崎力君) 森田参考人、ありがとうございました。
続きまして、片山参考人にお願いいたします。片山参考人。
〇参考人(片山健也君) ニセコ町長の片山でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。(資料映写)
私の問題意識から最初に御報告させていただきたいと思いますが、戦後、日本の社会は、右肩上がりの高度成長の中で自治体も大きな予算を組んで住民の皆さんの生活を支えてまいりました。その結果、例えば農村部であれば、道路の道普請といいますか、道路の草刈りは農家の皆さんが年に何回か出て刈っていたわけでありますし、雪の多い日、隣のおばあちゃんの玄関が雪でいっぱいだったら、隣の人が行って、ばあちゃん大丈夫かと言って雪をかいて、ばあちゃんの生活を確保してきた。日本の社会は、基本的に相互扶助で町づくりをしてきたのではないかというふうに思っています。
しかし、だんだんと経済が順調に右肩上がりになっていくにつれて、住民サービスの向上という名の下に、じゃ道路の草刈りは私たちが公共でやりましょう、あるいはお一人で暮らしているおばあちゃんの面倒は役所が見ましょう、どんどんどんどん、本来住民の皆さんが自治を担っていた自治の力を、公共がこれまで住民サービスの名の下に行政に移管してきたという歴史ではないかというふうに考えています。その結果、地方自治体は職員数を増やし、予算規模を増やし、今日に至ってきたのではないか。そうすると、今、元の原点に、本来ある自治の現場にこの形を戻していく必要があるんではないか、そんなような意識を持っているところでございます。
そんな前提で現在町づくりを進めておりまして、そういった住民自治、住民の皆さんが、主権者である住民が自ら考え行動して町づくりを進めていくに当たっては、きちっとしたまず情報の共有化が大前提ではないかというふうに私たちは考えています。
皆さんに、先生にお配りさせていただきました「もっと知りたいことしの仕事」というのが、こういう冊子がございます。これは、我が町の今年の予算の説明書でございます。町民全戸に配付をさせていただいております。例えば、これはアカウンタビリティーといいます、予算責任として、当該予算で決まった仕事の事細かな内容を住民の皆さんにまず御理解をいただいて、その中から町づくりの議論をしていただくものとしているものでございます。
例えば、この本の三十七ページをちょっとお開きいただければ有り難いというように思います。三十七ページには、ここに道路をやると書いておりますが、この予算の国からの補助金が幾らで町民の税金が幾らなのか、借金は幾らなのか、どこをやるのかというのが書いてございます。
つまり、子供の暮らしも含めて、こういったものを全部住民の皆さんにお知らせをするということをやることが今後、財政民主主義を進める上で必要ではないかということで進めているものでございます。
また、百五十四ページから資料編としまして、借金の状況だとか積立ての状況、あるいは人件費の状況、補助金はどんなところに使われているのかというのをずっと書いております。また、人口の状況等についてもこの資料編で事細かくお知らせをしているというような状況でございます。
つまり、こういった財政状況を含めて住民の皆さんといろんな話合いをする中で、あっ、こんなことはとっても役場がやる仕事でない、それは私たちがやるといって、実際に動いていただくこともありますし、役場の予算がそんなにないこと、それから職員の能力もそんなに全てができるわけでないという現実が分かってきていただいていて、その中で、あっ、それは私たちの仕事だねということで動いているものがあるわけであります。徹底した情報公開をやることによって、住民の皆さんが自ら考え行動するという風土ができつつあるのではないかというふうに考えています。
我々は、子供の参加も含めて多様なこういった住民との話合いを日常的にやりながら、町づくりの公共課題を解決するというのをみんなの力で進めているというふうな状況でございます。
四年に一回選挙はありますが、首長が替わるたびに、住民と行政との関係、例えば情報が出る出ないとか、そういうことがくるくる変わるということはまた白紙にリセットするという話でありますので、私たちがこれまで積み重ねてきた住民自治の力、こういう情報はきちっと住民の皆さんにお知らせする中で意思決定がなされていくであるとか、そういったものはきちっとやっぱり条例で規制すべきではないかということで、私たちはニセコ町まちづくり基本条例というものを作り、これに基づいて町づくりをしているところでございます。これは私ども、町長も選挙で当選した場合、あるいは特別職全員が議会の場で宣誓を行って進めているというふうな内容でございます。
先ほどの予算を作るに当たっても、予算ヒアリングってやりますが、その公共課題を解決するためにこういうふうに考えているという現場の声自体を全て公開をして進めているということであります。基本的に、役所内部の会議も全て公開ということで進めております。
その中で一例だけ申し上げますと、一般廃棄物最終処分場というごみの処分場でありますが、私ども、共同で広域でごみの焼却施設は持っておりまして、ダイオキシンが出る焼却灰については各町村がそれぞれ最終処分を行うということで、処理の行き場のないものについては各町村が引き受けるということに早く結論を出していました。平成十三年にダイオキシン特別措置法という法律が動きますので、そのときまでに完璧な処分場を造らねばならないということでありまして、それはもう全てスケジュールから全部公開で進めてまいりました。当時、反対運動も起きましたが、我々には秘密はないということで徹底して行っておりましたので、そういった大きな広がりはなく、最終的に、反対運動を行った皆さんも役場で隠し事は一つもないという御理解をいただいて、うまく、うまくといいますか、握手をして別れたところであります。
こういったようなことをやる上で、だんだんと住民の皆さんの自治の広がりがあって、例えば観光協会を株式会社化して町民が出資する株式会社をつくるであるとか、福祉の老人保養所も住民の皆さんが出資をして運営をするということで、町からの運営費の補助というのは一切設立以来行っていない、住民の力で行っているわけであります。
また、私たちの地域はリゾート地でもありまして、将来のリゾートを考えるときにこの環境と景観を守るということが大変重要で、乱開発をしてはならないということでございますので、厳しい開発規制を行っております。財産権がありますので、そことの調整は相当大変でありますが、我々のこの環境の価値を将来に守ろうということで、例えば水道水源はもう大変良好な水であります。これを例えば遠くの方が買われて、財産権でありますので、我々の命と暮らしを守る水が、我々の生活にとって欠かせないものであるものが奪われてしまうということになってはならないということで、水道水源地の開発規制であるとか、地下水が勝手に大量取水できないような規制を行っております。当然訴訟リスクもありますが、やっぱり自治体が覚悟を持って規制をし、行っていく必要があるんではないかというふうに考えてこういった制度を行ってきたものでございます。
水源関係は、ここに、先生にお配りしたとおりでございます。
こういった中で、現在、人口は、レジュメの方にちょっと書かせていただいておりますが、若干、十五年間微増状態ということで、その下にあるとおり、現在、住宅不足対策をどうするかとか、子育ての環境も、子供の数が増えるということで今一生懸命対応しているというような状況でございます。
また、観光につきましては、そこに記載のとおり、日本の人口減少に伴って観光客数がどんどん落ちてきておりますので、それを今海外の皆さんに補っていただいて、この十年間、大体十・三倍の海外の皆さんの伸びを見ているというようなことでございます。これも十八年前から海外対策を行ってきた成果が徐々に現れてきたものというふうに考えています。また、こういった開発も、住民の合意形成の中で様々なリゾート開発が現在進んでいるというようなことでございます。
また、自治体の在り方についてもこれまで幾つか提言をさせていただいておりまして、レジュメの参考のところにちょっと書かせていただいておりますが、平成十五年には合併特例法あるいは改正自治法について提案をさせていただき、多くを法律の中に入れ込んでいただくことができました。また、平成十九年は、地方財政の健全化法に当たっては地方の現場から提言をさせていただきました。
先ほど森田先生が述べられたとおり、事務の補完、こういったものがもう少し流動的になる仕組みが必要ではないかというふうに考えておりまして、ここにあるとおり、将来的には自治体も、基礎タイプ、総合タイプ、拡大タイプといって、自治を補完する仕組みを多様化していく必要があるんではないかというふうに考えております。これにつきましても、更に今後また精査をしながら提言をしてまいりたいというように考えておりますが。
今現在、広域連合の制度は非常に質の高い制度であります。ただ、唯一大きな問題点は、そこに独自の財源は持たないということでありますので、是非将来的には広域連合に課税権を認めるということをすると、いろんな、環境分野であれ観光であれ、広域連合が機能的に動いていって自治の多様性が深まり、地方自治の豊かさに結び付いていくのではないかというふうに我々は考えています。
以上で私の御報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。
〇会長(山崎力君) 片山参考人、ありがとうございました。
以上で参考人からの意見聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
質疑及び答弁の際は、挙手の上、会長の指名を受けてから着席のまま御発言いただくようお願いいたします。
また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくようお願いいたします。
なお、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますよう、答弁を含めた時間がお一人十五分以内となるよう御協力をお願いいたします。
それでは、質疑のある方は挙手を願います。
〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今日はお二方の参考人に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
続きで、森田参考人に道州制について伺いたいと思うんです。
憲法との関係で言及されていたところがあったかなと文献をお読みしていて思ったんですけれども、要は、道州制、今形が見えないからということだけじゃなくて、知事の権限が大変強化されることにもなるということから憲法論上について言及されていた辺りを少し解説的に御説明いただければと思います。
〇参考人(森田朗君) それにつきましては、私の個人的な意見というよりも、多分、公法学において通説的な意見を取るとそうなるのではないかということでございますけれども、現在の憲法の場合、九十三条で地方公共団体の長と議員は直接公選をすると、直接という言葉が入っております。したがいまして、現在の知事も市町村長も直接住民から知事ないし市町村長として選出されるということになっております。
仮に、州に強大な州の自治権が与えられて、そこで州知事と言われる人たちが公選で選ばれるということになりますと、相当その知事さんの持っている権限というものは強くなってしまうと。それでもいいのではないかという議論ももちろんあり得ると思いますけれども、そうした場合に、それこそ州間における財政的な調整も含めて、そうした国全体としてのバランスを取るような調整というのが本当にうまくいくんでしょうかという問題でございます。そこはよく考える必要があるのではないかと。
先ほど申し上げましたように、四国を一つの州にしますと四百万ですけれども、首都圏、南関東だけでも三千万を超えます。三千万でGDPの三分の一以上を生産している首都圏が一つの州になった場合、そこが持っている州の力というのは相当大きいわけでして、そこの長たる知事の権限というものは相当大きなものになってくるであろうと。国と比較してもすごい力になるわけでして、そうしたことが発生するということも踏まえた上でよく検討すべきではないですかと。
その場合に、ならば、では、議会が選ぶ議院内閣制的な形での首長さんの選び方もあるのではないかというときに、今の憲法九十三条でいいますと直接と書いてあるものですから、それが果たしてできるんでしょうかと、そういう問題提起でございます。
〇倉林明子君 片山参考人に続きでお伺いしたいと思うんですけれども、要は、戦後憲法ができて、地方自治が憲法上も規定されるということで、地方自治の形がやっぱり本当にどう実践されるかということが問われてきたと思うんです。取組を伺っておりまして、住民が自分たちで町づくりも含めて住んでいる町のことを決めているという実感が持てているのかなということを強く感じたんですね。
二十年にわたる取組があったということなんですけれども、自分たちが自分たちで町のことを決めているんだという実感、これをつくっていく上で、基本条例も担保しているという部分も先ほど少し触れられたんですけれども、やっぱり何がこの住民自治を成功させる上で要になったとお考えかということと、あわせて、ニセコの町づくりの計画、十二年計画だったかと思いますけれども、それも徹底して住民の皆さんの御意見も、住民参加も得ながら作られたということで感心して拝見していたんですけれども、この町づくりの基本理念ということでその説明の中でも触れられているかと思うんですが、非常に大事だと思ったのは、地域資源が循環する、そういう町の中で循環していくという仕組み大事だというようなことも触れられているんですけれども、そこら辺、ちょっともう少し踏み込んで説明いただけたらなと思うんですけれども、お願いします。
〇参考人(片山健也君) 情報共有しながら主権者たる住民がこの町づくりを主体的に担っていくということを進めなくちゃいけないというのは、もう自治体の将来に対する危機感です。九千人以上いた人口が四千五百人まで減っていって、観光の宿泊客もバブル期七十万人を超えていたものが三十万人まで落ち込んだ、この先、観光はやっていけるのか。あるいは農業も、かなり頑張っている皆さんたくさんおられますが、やっぱり本当に苦しい皆さんもおられて、町自体の将来が危ういときに、この町を担っていくのは誰かというのは、まさにそこにいる住民であると。
そうすると、やっぱり住民の皆さんがこの町を何とかしていこう、この誇りある町を何とか維持しようという気になっていただかないと町は進みませんので、誰か為政者がカリスマ的にやる町なんてあり得ない、持続していかないというふうに私たち思ってきたので、それで徹底した情報共有、住民参加。そして、首長は四年ごとに替わってあっさりと首切られていきますので、責任者は誰なのかというのは、まさにそこに残った住民が責任を負っていくんですよね。そこにきちっと情報を渡していくというのは役割ではないかというふうな、危機感からこういうことを進めていったということです。
〇倉林明子君 もう一つあって、地域の循環、地域で循環させるという辺りについてはいかがでしょうか。
〇参考人(片山健也君) 地域には今、物づくりとか、例えば木工をやっておられたり、様々な芸術家の方もおられます。やっぱり地域でそういう、地域の文化を担って、そこをなりわいとしていた人たちの物をまず活用していく、物づくりも含めて。特に、公共機関が発注するときに、大量にどこか安いからといってよそから買ってくる。それが本当に地域経済を担っていくかというと全くそうは思いませんので、そこで担える地域の経済循環をしていく。それから、エネルギーも地域で循環をしていくというようなイメージで今現在町づくりの、経済の循環というのを考えながら取り進めているというようなことでございます。
〇倉林明子君 ありがとうございます。
あと、お二方に伺いたいと思うんですけれども、分権改革のお話もありました。この間、参考人の方々にもお伺いしてきているんですけれども、分権改革では一定の成果、成功と言える部分もあったと。しかし、実際にそれと同時に行った三位一体改革、これについて大変厳しい意見も述べられていたかと思うんです。
この分権改革と三位一体の改革がやっぱり地方自治体に与えた影響というのは大変大きかったというふうに思っているわけですけれども、それについて評価をお二方にそれぞれお聞きしたいと思います。
〇参考人(森田朗君) 最初にプレゼンテーションのところである程度申し上げたと思いますけれども、私自身は、地方分権改革といいますのは、それまでの、国の下で、地方が国の言わば統制を受けるという形を変えて、地域が地域で物事を決めることができるような形に変えていくという意味では大変大きな成果を上げたと思います。
ただし、先ほど申し上げましたように、それが前提としておりましたのは、財政状況というものがだんだんだんだん好転していくのではないか、あるいは変わらないのではないか、また、人口もそれなりにそれまでと同じようなトレンドで増えていくのではないかと。そうした前提の下で制度を変えることにより、権限を自治体に移す、そして明確化すると同時に、その自治体が使える財源も増やしていくという改革を目指してきたと思います。
しかしながら、現実には、財政状況が九〇年代以降非常に厳しくなり、さらに、九〇年代の後半から特に若い世代の要するに少子化が進んでくるということになってまいりました。それと同時に、経済の停滞も伴って都市部への人口の移動が起こってくるということになった。そうしますと、実際に分権の権限を付与したとしても、地方が自立的な政策運営を行うだけの財政的な基盤というものがなかなか確立できなかったのではないかと思います。
三位一体改革は、そこは国と地方の間で、ある意味で、交付税と補助金と地方債の債務を整理をしようという形で議論が行われたわけですけれども、これは、国と地方、地方間の間で利害がなかなか一致しなかったというところで、何といいましょうか、それぞれの方が不満を残したまま決着を付けざるを得なかった状態だったというふうに思っております。
その意味でいいますと、分権改革といいますのは、制度面につきましてはかなり進んだ形で展開されましたけれども、それが、前提としていた条件が満たされなかったために、今日非常に、人口減少も含めてですけれども、厳しい状態に陥っている自治体も出てきているのではないかなというふうに思っております。
したがいまして、これからの在り方としては、もう一度、今の前提を見据えて新たな制度の考え方というものに目を向けていくべきではないかというのが私の意見でございます。
〇参考人(片山健也君) これまでの地方分権改革、大きないろんな動きが出て、特に地方と国との協議の場が設けられたというのは大変大きい画期的な出来事ではないかというふうに評価をさせていただいております。
それと、三位一体改革につきましては、地方の現場にいる者としては本当に夢も希望もないような思いもありましたが、そのときに、じゃ、私たちの町は本当にやれるのかと、やれるというか暮らしていけるのかと、私たちが暮らしていくためにはどうしたらいいかというきっかけとなって住民の議論も相当やっぱり進みましたし、町の職員自体も危機感を持って事に臨んだという面では、今となってみればそれはそれで我々を目覚めさせてくれた大きな役割を担ってきたんではないかというふうに思っています。
〇倉林明子君 もう一点、お二方に短めでお願いできたらと思いますが。
やっぱり市町村合併について、お考えは少し伺ったところもあるんですけれども、今後も市町村合併をしていくべきなのかどうか、私はすべきじゃないという立場ではあるんですけれども、住民自治という観点から市町村合併の今後についてお考えを伺って終わりたいと思います。お二方に。
〇参考人(森田朗君) 先ほども申し上げたところでございますけれども、合併という形が、ある意味でいいますと非常に、中での資源の利用の仕方が効率的になり得るという意味では望ましいのではないかと思いますけど、先ほどもお話ございましたように、やはり周辺部に住んでいる方、その他にとりまして地域がなくなるという意味では大変耐え難いものもあるというのも理解できるところでございます。
基本的に申し上げたいのは、これから人口が減ってくる、そして財政状況が非常に厳しくなってくる中で、少なくとも住民の方に必要な、先ほどもありましたけど、ミニマムのサービスを供給していくためにどういう形がいいのか。合併まで至らなくても協力をする、あるいは、縦から横からといろいろ言い方しますけれども、隣接する自治体あるいは広域の都道府県がサービスを肩代わりする、提供すると。そうした形での集約化、効率化というものが必要ではないかなと思っております。その形はいろいろこれから考え得るところだと思います。ただ、現状のまま維持して財政的なサポートというのは、人口の減ってくるということもあり、かなりそれは無理ではないかと思います。
〇参考人(片山健也君) 私は民間から行政へ入りましたので、今でも基本的には合併推進論というものに立脚しておりますが、財政合併、ある程度強制的な合併というのはやっぱり失敗だというふうに思いますので、やっぱり住民の誇りと将来の覚悟があっての合併は今後もあり得るというふうに考えております。
〇倉林明子君 ありがとうございました。
- 日時
- 2024/11/22(金)
- 場所
- 内容