倉林明子

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リストラ漏えい招く 労働者の処遇改善こそ 不正競争防止法改定案(経済産業委員会)

 倉林明子議員は6月30日の参院経済産業委員会で、不正競争防止法改定案によって、企業の製造技術・販売情報などの営業秘密の漏えいが起きた際、被害企業から告訴が必要なこれまでの「親告罪」から、被害の告訴がなくても警察による捜査が可能となる「非親告罪」に変えられようとしている問題をただしました。
 倉林議員は、営業秘密にかかわる労働者が自分の知らないうちに捜査対象になる危険性があることや、未遂行為まで処罰範囲が及ぶこととなれば、警察権力の解釈によって処罰が恣意(しい)的に拡大する可能性があると指摘。慎重に検討すべきだとの意見が判事や日弁連からもあがっていることを紹介しました。
 倉林議員は「営業秘密は企業の財産であり、企業が自らの努力で守ることが基本だ」と強調。「大企業が大規模リストラで労働者を流出させ、自ら営業秘密漏えいのリスクを高めている。経産相も秘密漏えい事件の多くは中途退職者によるもとのと認めている」と迫りました。
 宮沢洋一経産相は「企業自身の対策が大事だ」と答弁。倉林議員は年金情報を流出させた日本年金機構では、非正規雇用化、外部再委託化が進んでいるとして、「営業秘密にかかわる職員を含め、労働者全体の処遇を引き上げることこそ、漏えい防止に有効だ」と主張しました。

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第189回国会 経済産業委員会 第20号 2015年6月30日(火曜日)

特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

〇委員長(吉川沙織君) 特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
今日は、私、不正競争防止法について質問させていただきます。
これまでの親告罪を非親告罪にするということになるわけですから、告訴がなくても捜査機関の捜査が可能となるわけです。そこで、告訴していない被害者等の要請及び協力が必要となるわけですけれども、営業秘密の保有者、これが協力したくないという場合も考えられると思うんですね。営業秘密の保有者が中小企業や下請業者という場合、大企業など圧倒的に力関係に差がある取引先、ここが不正使用した場合、処罰を求めないということ、今後のことも考えたら、そういうこと十分考えられると思うわけですけれども、こうした場合、捜査の強制力、一体どこまで及ぶようなことになるのか、いかがでしょうか。

〇政府参考人(島根悟君) お答え申し上げます。
一般論として申し上げれば、法令上、警察は、犯罪があると思料するときは犯人及び証拠を捜査するものとされているところであります。
もっとも、実際に捜査を進めるに当たりましては、営業秘密侵害事犯の捜査であれば、例えば、その秘密が営業秘密保有者において実際にどのように管理されていたのかを立証する必要があるため、被害企業から御協力をいただけないという場合には捜査を進めることは事実上困難であると考えられます。
いずれにいたしましても、個別の事案に応じてということになりますが、被害企業の御協力を求めつつ、適正に捜査を進めてまいりたいと考えております。

〇倉林明子君 現状では、大企業、そして中小企業、下請ということで力関係に変化がないわけであります。捜査に協力するということになると、取引先との関係、今後への心配等が出てくるということで、一般論としてやっぱり捜査が入ってくる可能性というのは拡大する、不利益を被るという可能性も私否定できないものだというふうに思うんです。
そこで、衆議院の議論がありまして、韓国において、大企業から情報を盗んだ社員を当局が監視し続け検挙しているという事例が紹介ありましたのに対し、警察庁は、今まで以上に企業との連携に努め、着実に検挙していくというふうに答弁をされておりました。
今回の法改正で、労働者に対する捜査がこれまでと具体的にどう変わるんでしょうか。

〇政府参考人(島根悟君) 警察といたしましては、営業秘密の保護強化を図るとの今般の法改正の趣旨を踏まえまして、営業秘密侵害事犯に的確に対処していく必要があると考えているところであります。そのため、今まで以上に営業秘密漏えい防止や侵害事犯発見時の早期の被害親告を企業に働きかけたり、また企業からの相談には真摯に対応するなど、事件として取り上げるべき事案については的確に検挙してまいる所存であります。
他方、今回の法改正におきましては、営業秘密侵害事犯の構成要件であります図利加害目的部分の改正は行われていないことなどからいたしますと、可罰的な行為か否かの事実判断等、個別の捜査について従前と大きく変わるものではないと考えているところであります。

〇倉林明子君 従前の捜査と変わらないということなんだけれども、罰則強化をして抑止力を高めていくという中で、捜査の対象としては変化がないとおっしゃるんだけれども、通常業務の中で営業秘密に関わる労働者に対しては、やっぱり知らぬ間に捜査の対象になり得るという危険が今後も含めて出てくるんじゃないかということは私は指摘しておかなくちゃいけないなというふうに思うんです。
さらに、企業情報窃取とこの未遂行為が処罰対象とされているわけです。私、この場合、問われるのは実行の着手時期になろうかと思います。それは明確に規定されているのかどうか、確認させてください。

〇政府参考人(菅原郁郎君) 未遂罪が成立するか否かは、御指摘のとおり、実行の着手があったか否かが基準になります。一般的には、実行の着手があったかどうかというのは、その保護利益の侵害に至る現実的な危険性のある行為があったか否かが基準となります。現実的な危険性の有無というのは、行使者の計画があったかどうか、既遂罪となる行為と直前の未遂と思われる行為との不可分性、時間的、場所的な近接性、結果発生に至るまでに障害があるのかどうかといった観点から、個別具体的事案に応じて裁判所で判断されるものと思います。
例えばでございますけれども、使用の未遂について例として申し上げれば、営業秘密たる製品設計図のとおりに製品を生産するべく生産ラインを組み立てた上で実際に機械を作動させたような場合、これは明らかに未遂、この時点で実行の着手があったとみなされるというふうに思われます。
また、近年とみにその危険性が増しておりますサイバー攻撃の例でありますれば、事前に通常のメールのやり取りを何回か行った上でウイルスメールを送るなど、受信者が当該ウイルスメールを開封してシステムが乗っ取られる危険性が上昇しているというふうに評価できるような場合、これは未遂罪が成立する可能性があるというケースで、こういった場合には実行の着手が行われたというふうに認定される可能性が高いと思われます。

〇倉林明子君 使用や開示に至っていない、取得だけの場合でも処罰していいのかという問題があると思うんですね。その上、未遂行為まで処罰範囲が及ぶと。今聞いていても、可能性があると、これは言えるけれども、これは可能性が高いと。じゃ、違う場合はどうなんだというと、すごく分かりにくい話になってくると思うんです。判例重ねないとそこら辺はっきりしていかないという説明だったと思うんですね。この未遂行為まで処罰範囲が及ぶこととなりますと、実行の着手をどう解釈するかということによって恣意的にその実行の着手ということが拡大していく可能性があるんじゃないかというふうに思うんです。
次に確認したいのは、営業秘密侵害訴訟において原告の立証負担を軽減するということで、営業秘密の使用を立証できなくとも使用している推定ができればよいということにしたわけです。この民事の推定規定について聞きたいと思うんです。
退職労働者が前職で営業秘密によって生産できる商品開発に携わっていた場合、また商品開発が別の方法で生産できる場合、営業秘密が使用されたと推定される可能性、これ一体どうなるのか。いかがでしょうか。

〇政府参考人(平井裕秀君) 御指摘をいただきました研究開発に関する営業秘密を退職後に転職先企業で使用するケースということでございますが、まず、当該転職先企業が不正使用の事実について知っていたか又は重大な過失により知らない場合という場合には推定規定の対象となるわけでございます。
その逆はもちろんのことながら推定規定の対象にならないわけでございますが、それに加えまして、委員御指摘の、ほかのやり方でそうした製品が作れたというようなことについては、まさに推定をされた後で被告側がそれを事実立証できることであれば、しっかりとその推定規定をもってしてもなお反証できるということになろうかと思います。

〇倉林明子君 反証はなかなか難しいということじゃないかというふうに思うんですけれども。
これ、産構審の営業秘密の保護に関する小委員会の中でも議論になっていたかと思います。そこで、推定規定の導入に際して東京地裁判事の鈴木委員が発言されているかと思います。要旨について簡潔に御説明をいただきたいと思います。

〇政府参考人(平井裕秀君) 御質問いただいた鈴木委員の御発言は、第三回、取りまとめの前の回で推定規定についての議論があったときの御発言かと思います。
そのときの御発言として御質問をいただいていたところは、営業秘密の悪意重過失での取得といった場合の悪意重過失の対象は明確なのかという御質問、それから、営業秘密を使用していないことの立証は訴訟上極めて難しく、悪魔の証明とも言われているが、どこまで反証を求めることを想定しているのか、現実に被告が独自に開発した技術で被告製品の生産に行き着くことをどこまで立証するということを想定されているのかどうかという御質問をいただいたところでございまして、こうした御質問を受けた上での今回の不正競争防止法の改正法案では、取りまとめにおきまして、産業構造審議会のこの第三回での御意見さらには御議論を踏まえまして、推定規定の対象になる営業秘密の取得については窃取行為による取得といった一定の類型に限定するといたしますとともに、対象となる技術については、仮に被告となったとしても容易に反証が可能な、物の生産方法などに関する営業秘密に限定するといったこと、先ほど佐々木委員との御質問の中でお答えしたとおりでございます。

〇倉林明子君 限定したとはいえ、悪魔の証明だとか反証はほとんど不可能だというような御指摘もあったわけですね。
正当な事業活動を行う企業が濫用の被害者になる可能性も私あるというふうに思うんです。この点では、識者や日弁連からも慎重に検討すべきだという意見があったと思うんです。私、踏み込み過ぎじゃないかと言いたいと思うんですね。議論もあったこの推定規定を今回の改正で行った理由というのは、大臣、何でだったんでしょうか。

〇国務大臣(宮沢洋一君) 現行法におきましては、まさに証拠の偏在の問題、すなわち民事訴訟法上は被害企業が加害者による技術の使用の事実を立証する必要があるということとなっておりまして、その証拠が実際には加害者にのみ存在するため、大変困難な状況が実はございます。
東芝の件が和解した件、また、新日鉄が今訴訟しているという件もございますけれども、正直、有識者の方たちからは、やはり新日鉄であり東芝というかなりしっかりした大きな会社だから何とか持ちこたえている訴訟であるという指摘もあるところでございまして、今回、今、平井さんの方から話をしましたけれども、産構審ではいろいろな意見をいただきました。今申し上げましたような、侵害者に対する責任追及が困難な現状が解決されるか、言いがかり的な訴訟を受けた場合でも被告は容易に反証することができるのか、正当な転職を阻害することはないのか等々といった議論を経た上で、そして、今政府参考人からお話ししたような限定を加えるということで審議会において報告書が取りまとめられたと、こういう経緯を経て、今回、改正法案として御審議をお願いしているところでございます。

〇倉林明子君 強く経済界からも要請があったという経過は踏まえた対応にもなっているんじゃないかと思うんです。
立証負担の軽減ということを図ろうと思えば、意見も出されておったように、文書提出命令の適切な運用、こういう点でも十分図れるものではなかったのかというふうにここは指摘をしておきたいと思います。
そもそも営業秘密は企業の財産なわけですから、本来企業が自らの努力で守る、これが基本だというふうに思うんです。
経産省がアンケートを取っております。これ、見させていただきますと、大企業において漏えい防止措置をとっていない企業、この割合というのは一体どういうことになっていたでしょうか。

〇政府参考人(平井裕秀君) 委員御指摘の調査、平成二十四年度の人材を通じた技術流出に関する調査研究という弊省が行いました調査ということだと思いますが、その調査の中におきましては、営業秘密とすべき情報をそれ以外の情報から区分していない大企業、三一%という答えが出てございます。

〇倉林明子君 守るべき者がちゃんと守るべき措置をとっていないというところがまず私は大きい問題だと思うんですね。漏えい防止のため本来やらなければならない努力を、まず私は企業、とりわけ大企業やるべきだというふうに思います。
それどころか、これ大企業が守るべきものを守る努力をしていないというだけにとどまらず、大規模リストラ等で労働者を流出させる、自ら営業秘密漏えいのリスクを高めているという問題があります。大臣も衆議院の答弁で、営業秘密漏えい事件の多くは中途退職者によるものということで答弁でも答えていらっしゃいます。大企業が取るべき漏えい防止対策、大いにあると思いますが、大臣、いかがでしょう。

〇国務大臣(宮沢洋一君) この点は倉林委員と全く意見を同じにしておりまして、まさに企業自身の対策というのは大変大事であります。
そして、今おっしゃいましたように、これは二十四年度の経産省の委託調査でありますけれども、情報漏えい者の上位の比率では、断然一番で中途退職者によるものが五〇%を超えているという数字がございます。
したがって、中途退職者、中途退職に至る理由というのは、純粋に金銭を目的とするものとかもございますし、また企業と社員の信頼関係が失われたことといったものもありますし、またリストラといったようなものもございますけれども、やはり従業員に対する適切な処遇ということはそういう中でもやっぱり一つのポイントだと思っております。
そんなことで、今年の一月、経産省におきましても、産業界の経営層とともに技術情報等の流出防止に向けた官民戦略会議を開催いたしまして、経営者自身のリーダーシップの下、全社的な対策を推進することが大事であるということに加えまして、従業員を能力主義、成果主義に基づき適正に評価するということについても合意をしたところであります。
そして、今後でございますけれども、官民フォーラムというものを行政、産業界の実務者レベルで開催する予定でございますけれども、その中で、例えば退職者からの営業秘密漏えいについては、退職後の守秘義務契約を締結するといった具体的な対策についても推進してまいりたいと考えております。

〇倉林明子君 年金情報流出事件ということで本当に大問題になったわけですけれども、サイバー攻撃というのがこれだけ後を絶たないという状況で、ずさんな情報管理というのが政府の中枢部分でも出たという非常に重大事件だったなというふうに思っているわけです。
機構ではどういうことになっていたかというと、基幹業務まで非正規雇用化、外部委託化、外部の再委託化ということまで進んでいたということが議論の中で明らかになりました。スキルのある人だけにかかわらず、営業秘密に関わる職員も含めてやっぱり労働者全体が処遇どうやって引き上げていくかと、そういうことを視野に入れないと、やっぱり漏えい防止ということに対して、人ということでも有効に働かないというふうに思っております。その点は重ねて指摘をいたしまして、質問を終わります。