倉林明子

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産業競争力強化法案 電機産業の大リストラ(経済産業委員会 政府質疑・反対討論)

2013/12/03

 規制緩和や優遇税制などの大企業支援を行い“世界で一番企業が活躍しやすい国″づくりを目指す「産業競争力強化法案」が3日、参院経済産業委員会で採決され、自民、公明、民主、改革の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。維新、みんなの党は、規制緩和の「取り組みが不十分」として反対しました。

 反対討論で日本共産党の倉林明子議員は、大企業の競争力を強化するとしている法案の中身は、国民の利益と一致せず、雇用も安全も犠牲にし、日本経済再生や国民生活向上と逆行するものだと批判しました。

 倉林氏は、企業単位で規制緩和を認める「企業実証特例制度」について、規制緩和に向けた協議・調整の最終判断は内閣にゆだねられ、国民も国会も関与できない仕組みとなっていると指摘。医療や労働など国民の生命や財産を守るための規制を、企業ビジネスに障害となる「岩盤規制」として打ち破る対象としていることは容認できないと述べました。

議事録を読む(政府質疑)
第185回国会 経済産業委員会 2013年12月3日

〇産業競争力強化法案(内閣提出、衆議院送付)
〇委員長(大久保勉君) 産業競争力強化法案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
電機産業は、製造業の中でも最大の雇用を支え、二〇一一年の労働力調査でも自動車産業を上回る百四十二万人の雇用を確保しているということです。さらに、一次、二次下請入れますと、パナソニックグループ、シャープ、これだけでも四万社、雇用は一千百万人と言われております。この電機産業の動向は、日本経済と国民生活にとっても本当に極めて大きな影響を与えるものだというふうに考えております。
さて、その電機産業が現在実態どうなっているかということでございます。大阪の茨木市太田東芝町、松下町と、いずれも企業名が付いた町から、東芝は完全撤退、パナソニックは開発拠点だけを残して縮小しております。これ、この大阪の例に限らず、今、工場閉鎖、縮小、新たに地域経済に与えている影響、極めて大きいと考えておりますが、いかがでしょうか。〇国務大臣(茂木敏充君) 我が国の電機産業、自動車産業と並んで基幹産業、そして多くの雇用を支えてまいりました。ただ、委員御指摘のように、大規模な工場等が閉鎖された場合、そこでの雇用の喪失、下請企業への波及、さらには消費の減退など、地域経済全体にも大きな影響を及ぼす懸念があることは間違いございません。
御案内のとおり、今、電機産業を取り巻きます環境というのは、恐らくこの二十年ぐらいで大きく変化をしてきていると思います。かつては、部品から部材、そして製品までいわゆる垂直統合型で一つのグループで全て作る、こういう形で事業のモデルが成り立っておりましたが、最近では、これが、基幹の部分をあるメーカーであったりが押さえて、そして水平分業によって製造が行われる、こういう状況で、日本が得意といたしますすり合わせ技術、こういったものがなかなか国際的に通用しにくくなってきている。同時に、コスト競争力、こういったことを考えて、韓国、台湾、中国の企業との激しいグローバル競争に直面をしているのも事実であると思っております。
ただ、そういった中でも、今、また電機産業も円高の是正等々によりまして復活をしてきている。まさに国内経済が良くなれば電機も良くなる、こういう側面もあるわけでありまして、この産業競争力の強化、アベノミクス、こういったことを通じて、基幹産業が日本で活躍できる、こういった環境をつくってまいりたいと考えております。

〇倉林明子君 地域への影響は極めて大きいということなんですよ。
国内半導体大手、ルネサスエレクトロニクスが、大規模な工場閉鎖とリストラ計画を進めております。産活法で認定を受け、投資を受けております。その投資総額と、そのうちの産業革新機構からの投資額、これ、幾らになっておりますでしょうか、額でお願いします。

〇政府参考人(富田健介君) お答え申し上げます。
半導体大手、ルネサステクノロジでございますけれども、株式会社産業革新機構、それから、民間ではトヨタ、日産等の自動車関連、パナソニック等の電機関連、計八社、合わせましてルネサスエレクトロニクス株式会社への出資総額は千五百億円、そのうち産業革新機構の出資額は千三百八十三億五千万円と承知をいたしております。

〇倉林明子君 ルネサスは、二〇一二年の十二月にこの一千五百億円の資金調達の方針を発表しております。今ありましたように、そのうち産業革新機構が九二%を出資するという方針となっておりました。
この昨年、二〇一二年の十二月の時点で、ルネサスは既に国内工場十八のうち十工場を閉鎖、売却いたしまして、一万四千人の人員削減計画を進行させていたさなかでありました。加えて、今年八月に新たな人員削減計画を打ち出しまして、当初は存続すると言われておりました甲府、鶴岡、柳井工場を二、三年以内に閉鎖という方針が示され、熊本工場、ここについても閉鎖か売却だということです。滋賀、高崎工場は生産ラインを削減するという大規模な計画が追加で発表されております。
このルネサスの資金調達の方針発表は昨年十二月ですが、実際に投資が実行されたのはいつでしょうか、日時でお願いします。

〇政府参考人(富田健介君) お答え申し上げます。
株式会社産業革新機構及びその他関係八社による出資につきましては、本年九月三十日に払込手続が完了したと承知をいたしております。
○倉林明子君 経緯を見ますと、追加のリストラ計画の直後にこの出資が実行されているということだと思うんですね。出資実行の決め手がこのリストラ計画だったんじゃないかと。これはいかがでしょう。
○政府参考人(富田健介君) 昨年十二月の方針決定以降、その後、元の出資会社、NEC、三菱電機、日立製作所、関連の債権者が非常に多うございますので、実際の債権者との調整を進めておりました。そういった事情で実際の払込手続が九月の三十日になったというふうに承知をいたしております。

〇倉林明子君 産業革新機構は、事実上経産省のつくったファンドと言えると思うんですね。
ルネサスへの出資は、九二%が先ほど説明あったように産業革新機構から出されていると。予算の認可にとどまらず、個別の事案に対し、支援基準、整合性など、大臣が意見をつくる仕組みもある。政府の政策判断が反映されたこれ投資だという受け止めなんですけれど、いかがでしょう。

〇政府参考人(富田健介君) 御指摘のとおりでございまして、この方針決定をする際には、雇用対策に万全を期すようしっかりと経産大臣名で意見を申し述べているというところでございます。

〇倉林明子君 この追加の、そして突然の工場閉鎖、人員リストラにつながるこの計画の発表に、従業員はもとよりですが、下請にも動揺が今広がっております。それに加えて、地域経済への影響が甚大だということで、知事や首長からも計画の見直しを求める要請の動きが伝わってきております。
私、知事や首長から出されているこうした要請に対して、大臣もしっかり受け止めてこたえるべきじゃないかと思います。いかがでしょう。

〇国務大臣(茂木敏充君) 山梨県の横内知事とは当選同期なんですね。昔からよく存じ上げております。要請についても、その趣旨についてもよく承知をしているつもりであります。
一方で、ルネサスの方針、これ大変厳しい経営環境の中で、経営の判断として行われたものだと思っております。従業員、また地域に対する丁寧な説明、そして配置転換等によりましてその影響を最小限にとどめる、そういう努力を続けるように経済産業省としてルネサスの方には要請をしております。

〇倉林明子君 そもそも、去年の夏の時点では閉鎖対象になっていなかった工場まで追加の閉鎖対象に挙がっているし、更にもっと縮小させていくのではないかという動きになっているので、現地、地方自治体の首長を含めて、何とかこの計画を撤回してくれという要請になっていると思うんです。そういうことにしっかりこたえることが必要だと思いますので、今の応援していきたいという言葉もありましたので、しっかり地元の声にもこたえて、要請にこたえていただきたいと、これは強く要望をしたいと思います。
その上で、こうした事業再編計画が実行されていきますと、更に地域の雇用が奪われることになるのは、これは明らかだと思うんですね。産活法では、目的規定である第一条に雇用の安定等を配慮しつつ講ずるとされてまいりました。ところが、本法案では、雑則でもある百三十五条に、雇用の安定に関する努力義務の記載となっているということです。
先ほど来様々な議論がありました。人が財産だという御指摘もあり、中小企業が技術を構築してきたと、継承してきたと、本当にそのとおりだと思います。労働者が培ったこうした技術を生かせる職場そのものが今奪われつつあるということではないかと思うんです。
大臣、いかがでしょう。

〇国務大臣(茂木敏充君) 産活法の当時、振り返ってみますと、過剰設備、そして過剰債務、さらには過剰人員を抱えていると、こういう企業を再生する、こういう事業再編の状況でありまして、事業撤退等々が十分想定されたために、目的規定に、雇用の安定等に配慮しつつと、こういう文言を付け加えたところであります。
現在の状況、これ何度も申し上げておりますが、三つのゆがみ、過小投資、過剰規制、過当競争、こういったものを是正をしていくということでありまして、これは、産業の再編をして新しい事業もつくる、そして、何度も申し上げておりますけど、それによって雇用も安定し、そして新たな雇用が生まれる、こういったことを想定しております。
そういった中におきまして、雇用の重要性につきましては、第二十四条、そして百三十五条にしっかりと書き込みをさせていただいたつもりでおります。

〇倉林明子君 確かに、雇用の数の確保という点では維持されているというのは統計上も明らかだと思います。しかし、その中身を見てみますと、過去最大に非正規雇用の数が拡大し続けておって、最新のデータでは一千九百万人を超える状況になっているかと思います。それが果たして安定した雇用、質の高い雇用の確保につながるのか、私は決してそうではないというふうに思います。
今、電機産業は海外に生産部門を移転させるだけにとどまらず、技術の移転、そして流出に歯止めが掛からないというのが現状だと思います。下請取引先を含めて、物づくりを支えてきたこの産業の基盤や技術が大きく崩れつつあるんじゃないかというふうに思っております。日本から製造業が撤退することにアクセルを踏むような仕掛けとなっているんじゃないかと、この本法案について、日本の経済、国民の暮らしの土台、これも壊すことにつながるのではないかと、このことを指摘して、質問は終わりたいと思います。


議事録を読む(反対討論)
〇倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、産業競争力強化法案に対し、反対討論を行います。
本法案は、日本再興戦略を具体化し、世界で一番企業が活躍しやすい国に日本を変えるとして、日本経済の三つのゆがみ、過剰規制、過小投資、過当競争を根本から是正するための中核となるものだとしています。
しかし、この二十年間に及ぶ規制緩和と構造改革により大企業を世界的な多国籍企業に成長させたものの、国民には貧困と格差を広げ、雇用の悪化と地域経済を疲弊させてきました。大企業の競争力を強化するとして提案されているその中身は、国民の利益と一致しないばかりか、国民の雇用も安全も犠牲にし、日本経済の再生や国民生活の向上と逆行するものです。
以下、反対の理由を述べます。
第一の理由は、大企業のリストラを支援してきた産活法を継承するものだからです。
産活法は、株主の短期的利益の確保を最優先とした大企業のリストラ、人減らしに対し政府がお墨付きを与え、税金を使って支援する役割を果たしてきました。とりわけ、電機産業が事業再編で工場の閉鎖などを行った結果、全国各地で地域経済に深刻な影響を広げています。電機産業の大リストラは、昨年夏、十三万人規模と言われていたものが、更に新たなリストラ計画が加わり、その規模は十八万人へと拡大しています。
第二に、新たに企業実証特例制度やグレーゾーン解消制度を導入し、規制緩和の突破口を開き、全国に広げる仕組みとなっていることです。
特例の対象は全ての分野が対象となるもので、その代替措置が十分かどうか、事業官庁と規制官庁の協議、調整の最終判断は内閣に委ねられ、国民も国会も関与できない仕組みとなっております。医療や労働、環境など様々な規制は、そもそも国民の命や財産を守るために積み上げてきた経過があります。企業ビジネスに障害となるものは岩盤規制として打ち破る対象としていることは到底容認できません。
第三に、法案とセットで用意されている法人税等の軽減措置が、大企業の内部留保は増やしても、下請や取引先中小企業の収益向上や労働者の賃上げに結び付くものではないからです。
今、日本が目指すべきは、コスト競争に勝ち抜く多国籍企業にとって世界で最も企業が活躍しやすい国をつくることではありません。大企業の内部留保を労働者の賃上げに回して内需を拡大すること、事業所の九九・七%、雇用の七割を支えるだけでなく、日本の物づくりの主役である全ての中小企業と地域経済を支援することが日本経済の真の再生につながるものであると指摘し、反対討論を終わります。

日時
2024/04/26(金)
場所
内容

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