国会レポート

看護現場の実態 産業競争力強化法案(経済産業委員会 政府質疑)

2013年11月28日
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第185回国会 経済産業委員会 2013年11月28日

〇委員長(大久保勉君) 産業競争力強化法案を議題とし、質疑を行います。

〇倉林明子君 日本共産党の倉林明子でございます。
いわゆる岩盤規制ということで議論にもなってまいりましたが、名指しをされています医療分野について質問したいと思います。
国民の命にかかわる分野でもありまして、様々な規制、これは多くは命を守るためということで、検証も積み重ねてつくられてきたものだというふうに思っております。大臣は、企業実証特例制度の対象分野について、特定の分野を対象外とする仕組みとは想定していないという答弁をされております。
それでは、具体的な事例について伺いたいと思います。
株式会社が新たに医療機関の経営に参入するという場合、企業実証特例制度の対象となるのかどうか。いかがでしょう。

〇国務大臣(茂木敏充君) 簡潔にお答えいたします。
特定の分野を対象外とはいたしておりません。

〇倉林明子君 つまり、御紹介したように、株式会社が医療機関の経営に参入するという場合も例外ではないということで受け止めさせていただきました。
そうなりますと、厚生労働省にお聞きしたいと思います、現在の医療法では営利を目的とする株式会社の参入は認められておりません。その理由はどういうことになっているでしょうか。

〇政府参考人(高島泉君) お答えいたします。
我が国の医療制度は公的医療保険で運営しております。このため、医療提供者には患者に良質かつ適切な医療を効率的に提供することが最大の使命であると、こういうふうに考えております。一方、営利法人であります株式会社、これは利益を出しまして株主に還元することが法人としての使命であります。経営者もその責任を負っているという状況でございます。
こうした中で、営利法人である株式会社の医療への参入につきましては、利益を上げる目的で診療が行われ、適切な医療が提供されないとか、過剰な医療が行われるとか、こういった形を招き、医療費の増大を招き、その結果として公的医療保険の財政に悪影響を及ぼすおそれがあると考えられております。このため、原則として認めないということにしております。

〇倉林明子君 今の規定では原則認めないということになっております。この規定ができているというのも、先ほど理由のところで御紹介もありましたが、国民が平等に医療を受ける権利をこういう側面でも支えているという大事な規制だというふうに思います。
昨今、TPPの交渉参加の議論の中で一つの焦点になっていたところでもありまして、TPPの参加ということになれば、この営利企業が医療経営に参入してくるのではないかと多くの懸念が医療関係団体からも提示されている問題なんですね。それが今度、この実証特例制度を使えば企業単位でできるようなことになっていくとなれば私は大変なことだというふうに思っております。
私、看護師を十一年間しておりまして、二人子供を育てながら三交代現場で働いてまいりました。当時、看護の現場というのは、きつい、汚い、五Kとも、化粧ののりが悪いという七Kとも言われておりました現場で、もうとにかく離職率が高かったんですね。夜勤が続けられないということが一番の理由でした。
大変な社会問題にもなりまして、一九九二年、これ、自民党政権の下で看護師確保法というものが制定されました。本当に私たちも歓迎して、ああ、やっとこういう法律で規制が掛けられていくんだろうと歓迎したものでした。そのとき、基本的な指針に盛り込まれた夜勤負担軽減、働き続けるには本当にここが大きなネックになっていたものだったわけですが、この夜勤負担の軽減等を具体的にどう定めましたでしょうか。

〇政府参考人(高島泉君) 委員御指摘のとおり、看護師等の人材確保の促進に関する法律というのが作られまして、その法律の下で看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針というものを作っております。
この中におきましては、看護師の継続勤務を促進するためには勤務する上で最も大きな負担となっております夜勤負担の軽減が必要であると、こういった認識の下に記述をしておりますが、具体的な措置としましては、入院患者の状況等に応じて複数を、これは二人以上で行う夜勤でございますが、二人夜勤以上を主として、夜勤回数は月八回以内の夜勤体制の構築に向けて積極的に努力すると、こういう必要があるということとされております。

〇倉林明子君 実は看護師のところはもう長年、かごの鳥と言われるほど病院に張り付いて夜勤をやっているという状況が続いておりまして、いわゆる二・八ということがずっと目標として私も労働組合でも活動もしてきたんです。
ところが、一九六五年に既に複数、二人以上で月八日以内という夜勤の上限が示されたものの、改めて一九九二年に指針に掲げざるを得ない、現状そうなっていないというところで指針に掲げざるを得ないということになったんですね。同時に、週四十時間の労働についても推進していこうという指針が盛り込まれました。
現場の声が国民の支持も得てこういう指針につながったんですけれども、看護現場が一体あれから二十年たって今どうなっているのか。この指針が定着して守られているような実態になっているのか。いかがでしょう。

〇政府参考人(高島泉君) 夜勤の実態でございますが、いろんな調査がございますけれども、厚生労働省として把握しております最新の数値としては、日本看護協会が平成二十三年の病院看護実態調査というものをやっております。
これによりますと、常勤看護職員の月平均夜勤回数は、三交代制を取っている病棟で七・七回、二交代制を取っている病院では四・四回と、こういう数字が出ております。また、看護職員の夜勤人数でございますが、指針では複数ということで書いておりますが、二人夜勤以上の夜勤体制を取っている病棟は九九%を超えていると、こういう状況でございます。

〇倉林明子君 雇用の質をどう引き上げていくのか、離職を防止してどう雇用を守っていくのかという点からも私大事な問題だと思って取り上げております。
実は、今紹介がありました二〇一一年の看護協会の調査は、一体なぜ調査されることになったかと申しますと、九二年に看護師確保法ができて指針も作られた。しかし、実態は変わらなくて、二〇〇八年に二人の若い看護師が過労死するという事案が起こりました。在職死亡が過労死と認定されたわけですけれども、この過労死をきっかけにして日本看護協会の実態調査ということに至ったわけです。
この看護協会の調査をした結果、看護協会もびっくりして、看護職の夜勤や交代制勤務に関して勤務編成の基準というものを作って、厚生労働省も五局長通知、二〇一三年にはさらに六局長通知ということで改善を求める通知も出されておりますね。
看護師の夜勤、拘束時間、労働時間、具体的な中身ということでどんな通知になっていたのか、説明してください。

〇委員長(大久保勉君) 速記を止めてください。
〔速記中止〕

〇委員長(大久保勉君) 速記を起こしてください。

〇政府参考人(高島泉君) 今委員おっしゃいましたのは、厚労省でも二回にわたって雇用の質ということで調査して報告書を出しておりますが、その件でよろしいでしょうか。

〇倉林明子君 どうぞ。

〇政府参考人(高島泉君) 厚生労働省では、平成二十三年に看護師等の雇用の質の向上に関する省内のプロジェクトチームの報告書というものを出しております。それから、平成二十五年には医療分野の雇用の質向上プロジェクトチーム、こういうのを立ち上げまして報告書を出しております。それぞれに看護師の勤務の状況につきまして調査をし取りまとめたものでございます。
この中で、勤務の状況につきまして取りまとめておりますのは、最初の二十三年に取りまとめたものにつきましては、実態としてどうなっているかということにつきまして、病院における夜勤の体制については、三交代制、二交代制、いずれにつきましても看護師二人以上の体制を取る病棟がほとんどであるという状況を述べております。それから、夜勤の時間につきましては、二交代制においては、標準的な夜勤の時間設定が十六時間以上となっている割合が八七・七%であるという調査結果もここに記しているところでございます。
それから、次に出ました医療分野の雇用の質の向上プロジェクトチーム、こちらではデータを幾つか載せておりますが、この中で載せておりますデータは、時間外の労働時間数が月平均で十六・八時間になっているという話とか、それから、これはまた、先ほどの御説明と似たような観点でございますが、月当たりの夜勤時間が二交代制で月平均四・六回、三交代制で月八・五回となっているという実態を述べております。

〇倉林明子君 局長通知でも具体的に、重ねて改善を求める数字を通告では伺っていたつもりなんですけれども。
実際に複数を主として月八日以内の夜勤体制、十分なインターバルの確保、インターバルとしては看護協会の方は十一時間以上必要だと、こういう労働時間やインターバルにかかわっても重ねて考え方を示していると。要は、看護師の働き方、離職を防止するためにもそこがポイントになるということを分かって繰り返し規制するようにとそれぞれの経営体、事業所のところに指導しているんだけれども、実態はますます悪くなっている。
これが、日本医労連が夜勤の実態調査を三十年余りにわたって続けているんですね。一番最新が出ておりまして、その中身を見てみますと、十六時間拘束する夜勤、この実施割合が増えているんですね。原則八時間以内、これが労働基準法だけれども、十六時間以上働くという夜勤形態が増えていて、こういう夜勤回数が増える傾向にあるんですね。
法律、指針、通知ということで基準を呼びかけても、なし崩しに現場の実態が深刻になっているということなんですが、厚生労働省としての受け止めはいかがでしょうか。

〇政府参考人(高島泉君) 夜勤の体制につきましては、病院ごとに、二交代制、それから三交代制取るところがございます。たしかに、二交代制を取っているところにおきましては、通常の勤務と夜勤がつながりまして十数時間、非常に長い勤務体制になっておりまして、こういったものは、基本的な長時間勤務につきましては検討を加えていく必要があると思います。
しかし、もう一つ、病院の形態としては、今、二交代制とそれから三交代制を併せながら、看護職員としても、二交代制でいきますと休みの時間が長くなりますんで、休みの長い形態を望む方と、それからやはり三交代制で回すやり方を望む方と、いろんな需要がございます。各病院におきましては、そういったことを踏まえて、組み合わせて対応しているというふうに聞いております。
それから、いろいろ通知等を出しておりますけれども、なかなかやっぱり改善が進まないという御指摘を受けているところでございます。先ほど申し上げました医療の雇用の質の向上に関する報告書というのを受けて、今度、厚生労働省としても、もう一歩それを改善できるような取組をしようというふうに考えております。具体的には、来年度予算で要求をしておりますが、労使が合わさって勤務環境改善計画と、こういったものを作って、その実施に当たりまして、医療勤務環境改善支援センター、これはまだ仮称でございますけれども、こういった支援センターをつくって、個々の医療機関ごとに取組を、改善計画を作ったものについて、それをしっかり改善できるように指導していくと、こういった取組も始めることとしております。
こういった中で、その勤務状況、それぞれの、個々いろんな状況が違いますけれども、その中で最も適した勤務状況になるような取組が進められるようにこれからも推進していきたいと、こういうふうに思います。

〇倉林明子君 要は、こうした指針や通知が法になっていないということで結局守られない事態が看護の現場の労働の質ということを劣化させている大きな要因だったと私は思っているんです。
そこで、先ほど、冒頭に紹介しました株式会社の医療機関への経営の参入、これは法律で今禁止されているから実際参入がされないで担保されているというんだけれども、こういうところも企業実証特例制度ということで穴が空くと広がっていくという危険があると思うんです。私はこれは広げるべきじゃない規制緩和だと。
多くの規制は、過労死、公害、国民の命と健康と、こういうことに重大な被害があってつくられてきた経過のあるものもたくさん含まれているんですね。こういうものを特例措置として認めることができれば規制緩和なんだということで乱暴に持っていくやり方というのは、私はやるべきでないと思いますが、いかがでしょうか。

〇国務大臣(茂木敏充君) 御意見としては承りました。
先ほどの厚生労働省、原則認めないという答弁であったかと思います。我々は、企業実証特例制度なんです、ちゃんと言葉が。原則認めないんですから、特例制度というのをつくるわけであります。
そして、仮に株式会社が病院の経営主体となることに関して、その制度を活用した具体的な提案があった場合には、事業の所管官庁がその内容、そして必要性、そして規制が求める安全性等の代替措置、こういったものについて検討を行い、提案が適切であれば規制所管官庁と協議、調整を行っていくと、そういうことであります。

〇倉林明子君 これまでも、個別、法で規制を掛けているというものについて見直す場合は、審議会などで検討を重ねる、見直しの必要性、そして根拠、これらを明確にした上でやっぱり見直してきた。それでこそ国民の納得と理解が得られるものだと思うんですけれども、今度は国民が関与するシステムじゃないんですね。企業がこれは邪魔な規制だということでこの企業実証特例を使って突破しようと思えば、命や国民の安全、こういう分野まで特例の対象にするということなんでしょうか。私は本当にここは歯止めが必要な部分だと思います。どうでしょう。

〇国務大臣(茂木敏充君) 若干御理解が間違われていると思うんですけれども、今回の規制の特例措置、それは法律レベルのものも出てまいります。恐らく、政省令、それから通達レベルのもの、様々なものが考えられると。その検討プロセスにおいて、情報公開であったりとか透明性の確保、対象となります特例措置の内容によって当然異なってまいります。パブリックコメントを行うかもしれない、審議会を行うかもしれない。
しかし、全部審議会をやっていましたらむちゃくちゃ時間が掛かる。例えば通達でも、通達について全部審議会にかけてやっているなんということになったら、いつになっても具体的な成果は上がってこない。それぞれの案件の内容について適時適切に対応してまいりたいと考えております。

〇倉林明子君 国民の命や安全、これを守るための規制まで企業の利益優先というようなことで外すと、こういうことはやるべきではないと指摘をして、終わります。