倉林明子

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雇用ルール厳守を 産業競争力強化法案(経済産業委員会 参考人質疑)

 参院経済産業委員会は11月28日、「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりを目指す産業競争力強化法案について参考人質疑を行いました。日本共産党の倉林明子議員は、大企業で首切りが進められ、非正規雇用が拡大していると指摘。安倍政権の「成長戦略」に掲げられた大企業支援の方針が雇用現場にもたらす影響を問いました。

 全労連の井上久事務局次長は、派遣労働の拡大が検討されていることを指摘し「非正規雇用が当たり前という事態になりかねない。不安定雇用で賃金も下がる。経済成長と逆行する政策だ」と強調しました。

 倉林氏は、法案で掲げられた企業単位で規制緩和を認める「企業実証特例制度」などによって雇用の不安定性が増すことがあってはならないと主張。「雇用を安定させ、雇用ルールを守りながら労働者の賃金の底上げが求められる」と強調しました。

議事録を読む(参考人意見)
第185回国会 経済産業委員会 第7号 2013年11月28日

産業競争力強化法案(内閣提出、衆議院送付)
政府参考人の出席要求に関する件

〇委員長(大久保勉君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
産業競争力強化法案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
本日御出席いただいております参考人の方々を御紹介申し上げます。
まず、東京理科大学大学院イノベーション研究科長伊丹敬之参考人でございます。
次に、公益社団法人経済同友会副代表幹事・株式会社経営共創基盤代表取締役CEO冨山和彦参考人でございます。
次に、全国労働組合総連合事務局次長・日本医療労働組合連合会特別中央執行委員井上久参考人でございます。
この際、参考人の方々に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様からの忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、お一人十五分程度で、伊丹参考人、冨山参考人、井上参考人の順に御意見を述べていただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承をお願いいたします。
なお、参考人、質疑者とも御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず伊丹参考人にお願いいたします。伊丹参考人。〇参考人(伊丹敬之君) 御紹介いただきました伊丹でございます。日本の経済の国際的な位置付け、発展の道しるべを考える上で大変重要な法案の審議に参考人として御招致いただきまして、光栄に存じます。
お手元に冒頭陳述のメモというのがございますが、そこで産業競争力強化の三つの基本ということを書いてございます。それを中心に、法案の内容に具体的に触れることばかりではございません、より一般論もございますが、十五分ほどお話をしたいと思います。
私、まず、産業競争力の強化ということは現在の日本の企業全体の世界の中の位置付けを考えるときに大変重要な問題だと思っておりまして、その強化を考えるときに、三つの基本があると思っております。一つは、日本の得意技を生かせる産業とか企業をどうやったら支援できるか、二番目は、国際競争力のある企業を誕生させるということが幾つかの産業分野で極めて重要になっている、三番目は、既存の産業秩序への挑戦者を様々な意味で生み出すということが大切である、その三点だと思っております。
まず最初の、日本の得意技を生かせる産業、企業を支援するということにつきましては、ざっくりとした言葉で申しますと、複雑性産業を後押しするということだというふうに思います。これはちょっと言葉をより詳しく説明しなきゃいけないんですが、複雑な機械、複雑な素材、複雑なシステム、複雑なサービス、そういった生産工程やら、あるいは物を売ったりする、あるいは開発のプロセス等が極めて複雑なものに日本の企業というのはかなりこれまでも強かった、これからも強いであろう、そういう得意技を持った企業が更に発展していくということをどうやって後押しするかということだというふうに思います。
複雑な機械の代表例はハイブリッド車でございます。現在、コストパフォーマンス良くハイブリッド車を、ハイブリッド車というのはモーターとエンジンと両方持っておりますので、それの切替えとか実に複雑なものがトランクのボンネットに全部入っているわけでございまして、極めて複雑でございます。その車をちゃんとコストパフォーマンス良く造れるのは日本のトヨタとホンダだけでございます。これは典型的な複雑な機械の例でございまして、ほかにもいろんな産業でこういう機械がございます。
もう一つ、複雑な素材と申しますのは、炭素繊維複合素材、材料、例えばジェット機に使われる構造体に軽い炭素繊維を使おう、あれは単に炭素繊維ができるだけでは駄目でございまして、プラスチックを様々な意味でそれに複合させてやっとあの構造体が造れる、そういう複雑なプロセスがございます。
複雑なシステムの例は新幹線のようなシステムでございます。あれだけのスピードの列車があれだけの短い間隔で全く事故もなく走り続けるというのは、極めて複雑なシステムが背後にあるからでございます。
最後は、皆様にもおなじみの、複雑なサービスの典型例が宅配便でございます。具体的な説明はいたしませんが、こういったようなタイプの製品が全ての産業に複雑性セグメントがあり、しかも、これは国のかかわり合いとの関連で申しますと、そういうところで国際競争力のある企業というのは、実はそれほど複雑でないコモディティー分野と呼ばれるような分野で生産技術を鍛えに鍛えられた企業がやっとそういうものがつくれると。したがって、そういったコモディティー分野での競争への間接支援をどういうふうにするかということが複雑性産業の支援になるというふうに私は思っておりまして、その一つの例が、お手元のメモのBのところに書いてございます中小企業への支援でございまして、現在、中小企業庁で新しいサポーティングインダストリー、様々な中小企業が得意とする技術体系の分野の再整理を今行っておりまして、画期的な再整理に多分なると思います。それに従った中小企業支援ということをこれから考えていかなきゃいけない、そんなふうに思います。
基本の中で私が三つ挙げました二番目は、これが今日私は一番強調したいことでございますが、国際競争力のある企業を誕生させるということである。幾つかの産業分野で必要になる産業の再編成による一つの産業の中の資源統合というのが主な手段でございます。今回の法案でいえば、様々な事業再編、特定事業再編計画という分野の名称が付いております。その分野のことだと思っていただければよろしいかと思います。私は、この再編成、現在では既に待ったなし、実は十年ぐらい前から待ったなしになっているのに放置されたために、例えば携帯電話、例えば液晶といったような分野で日本の企業が続々と敗れていくということが起きていた、その背景の大きな理由の一つがここにあると思います。
この問題、過当競争の防止という視点で語られることが多いようですが、私は問題の本質は過当競争の防止だとは思っておりません。一つの産業で複数の企業が似たような開発をするという研究開発投資あるいは設備投資の重複の無駄の排除ということが最大のポイントだと思っています。
この投資の無駄を、例えば研究開発なんかは典型的にそうなんですけれども、技術を開発するための投資は、どこかの企業がやれば競争相手もやらざるを得ないんですが、技術というのは一つですから、開発されたものはみんなで使えるということになります。そういう投資の無駄が実は日本の企業にはとっても多い。携帯電話を例に取りますと、一時期、日本では十一社の企業が携帯電話を開発しておりました。アメリカではアップルを中心にしてそんなに多くない。ヨーロッパではノキアがメーン、韓国ではサムスンと、非常に少数の企業しかやっていないのに、日本はばらばらに分散してやっていた、それが典型的な例でございます。そういう無駄を排除して、企業がこれは様々な意味で統合しなきゃいけません。それを、国際競争に勝てるようなポテンシャルを持つ企業を誕生させることが肝要だというふうに思っております。
これは、競争を少なくすることがこの法案のこの部分の本当の意義ではなくて、日本という国全体にとって意味の大きい競争、つまりは国際競争ができる能力を持った企業を生み出すことが本当の意義だというふうに思っておりまして、ここには私はこれまで以上に踏み込んだ政府の関与が必要だと思っております。
今回の法案では、第五十条で、市場構造調査ということをやるということが法的に明示されました。これは最大のポイントですが、調査だけでは恐らく収まらない、むしろ政府が産業の再編成の産婆役を務めるべきだと私は思っておりまして、これは民間の方から様々な異論が、政府に箸の上げ下ろしまで指示されたくないというような反対論があることを承知の上で、しかしそれをやらなきゃ駄目なんだと私は思っております。
お手元のメモの二番目のところに、私が二〇〇七年に総務省で開かれましたICT産業、情報通信産業の国際競争力懇談会という懇談会で発言した内容をそのまま書いておきました。二〇〇七年のことでございます。今から六年前。その懇談会は、大手のエレクトロニクスメーカーの社長さんが全員おられました。そこで私は、数年後にこの中で何人かの社長さんがおられなくなる、つまり企業が消えてなくなるというぐらいの資源統合をやって初めて国際競争力が持てるでしょうと発言をいたしました。私はそんなことを発言して産業の統合が進むとは思いませんでしたけれども、経営者の方々にどこか心の中にとげを持っていただきたかった、それが趣旨でございました。その後、二社ほど携帯電話の事業からは撤退なさった方が生まれましたけれども、私が思ったような産業の統合は起きませんでした。やはり政府が相当の介入をせざるを得ないというふうに思います。
それから、新日鉄のことが書いてありますが、それはもう時間がございませんので飛ばさせていただきまして、あっ、例として申し上げましょうか。古い例でございますが、一九六七年でしたでしょうか、当時の八幡製鉄と富士製鉄が合併いたしまして新日本製鉄が誕生いたしました。経済学者がほとんどこぞって反対をいたしました。その反対を押し切って大きな企業が誕生いたしました。それが誕生したことによる罪もございましたけど、功の方も私は大変大きかったと。日本の鉄鋼業が現在に至るまであれだけの地位をその後四十年近く保ち続けている一つの理由はあのときの新日鉄の誕生だったんではないかというふうに思っております。
三番目の産業競争力強化のポイントとして私が挙げましたのは、既存の産業秩序への新しい挑戦者を生むという表現を取りました。私は、ベンチャーの誕生ということだけをこの範疇に入れたくなかったものですから、こういう表現を取りました。もちろん、二つのタイプの新しい挑戦者があり得て、一つはベンチャーという新規参入者ですが、もう一つは、既存の企業が他の企業と資源統合して新しい企業に生まれ変わり、その既存の産業での産業秩序を新しいものに変えていくというそういう役割をする人、これは事業再編と言われるこの法案の中でも書いてございます部分が大きな役割を果たすんだろうというふうに思っております。
典型的な例は、実は新日鉄の誕生によって生まれた日本の鉄鋼産業の産業秩序が余りに硬直化してきたときに、JFEという競争者が生まれて、様々な意味で産業が活性化したという事例が挙げられるかというふうに思います。JFEという会社は、旧川崎製鉄と旧日本鋼管が合併し、新日本製鉄というジャイアントに対する対抗をしようと思った、そういう企業でございます。
実は私、日本の鉄鋼業について調べた本を書いておりまして、新日鉄が誕生した後、日本の高炉五社、ほかに住金とか神戸製鋼とかあるわけですけれども、それのマーケットシェアが新日鉄の誕生と同時にほとんど動かなくなった。そのグラフを見まして、それは死んだ人の心電図みたいだと、こう書いたら、旧川崎製鉄の社長がいたくこれは怒られたのか感動なさったのか知りませんが、一度話を聞かせてくれというようなことを言われた記憶がございますが、やっぱり競争が起きるということは大変いいことでございまして、この場合にはいい方に働いた例だと思います。
新しい挑戦者を生むといいますと、一般にはベンチャー支援ということがすぐに叫ばれます。しかし、日本のベンチャー支援の政策はある意味では失敗の歴史だったというふうに私は考えておりまして、それは資金的な援助のところに過大な負担を掛け過ぎている。実は、ベンチャーというものがうまくいくためには、資金ももちろん必要なんですが、それをきちっと運営していく、成長させていく、経営者にたり得る人材がどれぐらいたくさん供給できるか、社会全体でということが私は最大のポイントだと思っております。
もちろん、お金の方が、長い視野の投資を考えて、ベンチャーが育たなくても、最初の段階でなかなかうまくいかなくても、長い目で見る投資ということが起きることによって、実は仕事の場でそれまでは経営に不慣れだったベンチャーの経営者がだんだん鍛えられていくというプロセスが十分あり得ますので、長い視野での投資を確保するということは極めて大切なことなんですが、しかし一方で、ベンチャーを経営するためには財務のことが分かる人がいなきゃいけない、営業を見る人がいなきゃいけない、様々なことがあるんですが、技術ばかりやっている人では会社としてはうまくいかない。そういった人の、ベンチャー経営者に欠けがちな人材を供給することを支援する政策が必要のように思います。
さらには、起業家となりたがる人の何か基本的な教育のようなことの場も必要に思います。私はたまたま今そういう大学院で教鞭を執っておりますが、私どものような大学院を支援してくれということを言っているのではございませんで、彼らが勉強する、本当に鍛えられるのは明らかに仕事の場であります。その仕事の場で鍛えられるプロセスの彼らに様々な自らを振り返る時間、自省の場というようなものを設ける、そういうことから彼らが仕事から学ぶことを支援するような、そういう支援策も必要のように思います。
実は途中で飛ばしましたので、この法案全体のトーンに関しまして一つだけ補足しておきたいことがございますので、一分ほど話をさせていただきます。
それはお手元のメモの上の方で飛ばしたところにあるんですが、産業競争力を強化するために様々な、一方では規制改革のような競争を激しくするような政策もあり、一方で今私が申し上げましたような新しい大きな企業を誕生させるというような政策もございます。そちらの政策を取りますと、非常にしばしば競争制限的な措置になって、結局は甘えの構造が発生する源泉になるという反対論が多くございます。しかし、競争制限をして若干その企業が競争の面では楽になって、しかし、そこで得た原資を、利益を国際競争の場での自らの成長のために投資していくということであれば日本列島に結局雇用が多く生まれる結果をもたらすことができますので、私は決して競争制限的だから駄目だというふうに一律に決め付けるのは間違いだと思います。
競争制限的な措置が政府の、法案ではございませんが対策によって取られた膨大なというか有名な事例が一九八〇年代に二つございました。半導体産業における日米半導体協定と自動車産業における対米自動車輸出自主規制の問題でございます。共に一種の政府公認のカルテルのようなものが実質的にはでき上がったのではないかと多くの人が思っている事例でございますが、そこで生まれたそれぞれの企業が獲得した新しい利潤がどう使われるかが結局問題だった。半導体の場合には、実はそれぞれのメーカーの他の事業部門にその金が流れた嫌いがある。自動車の場合には、自動車専業のところばっかりですから、自動車産業での再投資にその金が回った。したがって、自動車産業は現在も世界で隆々たる産業で日本の産業があり続けて、半導体産業は一方そうでなくなってしまった。結果は誠に見事な対照でございました。
したがいまして、産業競争力法案の審議過程におきまして、競争制限的な措置に対する反対論というのが余り大きくならないような、ちゃんと過去の事例に照らし合わせたお話になるようなことを期待いたします。
以上でございます。〇委員長(大久保勉君) ありがとうございました。
次に、冨山参考人にお願いいたします。冨山参考人。〇参考人(冨山和彦君) ありがとうございます。冨山でございます。
まずは、本日はこのような機会をちょうだいしたことを深く感謝しております。産業競争力強化法という重要な法案について、微力ながら委員会の審議にお役に立てれば幸いと存じます。
私は、ちょうど今から十年前は産業再生機構というところにおりまして、政府部門だったわけですが、当時は産業再生が今回は産業競争力強化ということになったので、そういう意味でいうと、すごく十年たって前向きな議論ができることをそういう意味でもうれしく思っております。
とりわけ、今回の法案は全産業を展望した競争力強化の条件整備という非常に大きな法律でありますので、そういった意味でも、私もちょっと政府部門にいた関係で、法律を作るのがいかに大変かというのは、ちょっとかじったものですから、これだけの短期間でこれだけ大きな法律を準備された各位の皆さんの御尽力には心より敬意を表したいと思っております。
まず、中身に、ちょっと総論的なことに入っていきたいんですが、実は産業的な話は伊丹先生、私、大ファンなものですから、ほとんど本を読んでいるものですから似たような話になっちゃうんで、ちょっとそこはできるだけ省きます、重複になるところは。
ただ、幾つか述べておきたいのは、まず、アベノミクスの三本目の矢と言われているものの担い手は、もうこれは明々白々、民間企業でございます。これは明らかでありまして、要は、今回の産業競争力強化法案の評価というのは、そのための環境整備あるいはフレームワーク整備になるかどうかというのが多分基本的な論点だと思っています。
そういった観点でいえば、規制改革の議論とか新陳代謝とか、あるいは一部税制、税制はちょっと微妙なものもありますが、ちょっとターゲティング的なにおいがするのであれですけれども、基本的にはフレームワーク型になっているということは私は高く評価しております。
ちょっとフレームワークの議論をしましたが、私はいわゆる古典的なフレームワークポリシーというのは余り賛成していない立場でありまして、インダストリアルポリシーというのは余りサポートしていませんで、むしろターゲテッドフレームワークポリシーみたいな方が正しい言い方ではないかという気がしております。要は、むしろ実際その企業がどの領域で自由かつ闊達にイノベーションを志向するような活動をしやすくするかということが実は大事な問題で、そういった意味合いでいうと、ターゲテッドフレームワークポリシーという立ち位置が正しいと思っておりますので、基本的には今回の法はその枠内に入っていると思っております。
これもちょっと伊丹先生の話とかぶりますが、民間企業の底力、実は非常に日本の企業はレベル高いです。失われた二十年間であるとかバブル崩壊後の三つの過剰を克服するとか、あるいはデフレの中の円高等の逆風とか、あるいはリーマン・ショックやら東日本大震災と、もう大変な厳しい環境を生き残ってきた会社が今基本的には存在しているわけで、本来底力は強いと思っています。ただ、結果的に今、トヨタみたいな、さっきもありましたように、グローバルトップに加えて、ニッチトップの高収益、高成長企業群というのはまさに複雑系のところにいっぱい実は存在します。そういった意味で、ポテンシャルは高いと思っています。
ただ、問題はそのポテンシャルをどう引っ張り出すかという、実際の雇用や賃金にしていけるんですか、あるいは企業の価値に転換できるんですかということが問いなわけで、そういう意味でいうと、そこは今まさに課題になっているということであります。
ちなみに、ちょっと環境論で申し上げると、私は別にまた日本の企業には追い風が吹いてきていると思っていまして、一つは、新興国経済と企業はいわゆる中進国のわなにはまりつつありまして、明らかに変調モードです。私はあのままずっと行くと実は思っておりません。それから、デジタル革命と言われているものも、いわゆるラディカルイノベーションといって、一人の天才的なお兄ちゃんが世界変えちゃうという段階はそろそろ過ぎていると思っていて、だんだんと連続的なイノベーションといいましょうか、むしろ複雑化する、洗練化するプロセスに移ってきていますので、どっちかというと日本企業は得意な領域なので、これは追い風かなと思っています。
それからもう一つ、これは皆さん御存じのように、世界の課題解決型産業というのは、いわゆる医療、介護とかのヘルスケア、ライフケア、あるいは環境エネルギーといった分野です。こういった分野の製品やサービスは、結局のところ、これも伊丹先生の話とかぶるんですけれども、要は複合技術的な、あるいはメカトロ的なすり合わせ系、複雑系なんですね。これは本来、日本企業のお家芸でありまして、これは製品にせよサービスにせよ日本企業のお家芸です。それから、かつ、そのホームマーケット、日本のホームマーケットがまさにその大規模な課題最先端市場になるわけで、そうすると、問題は、これらの市場あるいはその市場の競争のルールのデザインというのがどれだけ上手にできていて、日本企業がより闊達に競争しイノベーションを起こしていく、あるいは、さっきありましたけど、ダイナミックな淘汰、再編が起きていくかというのが、多分これが鍵なんだと思っています。
ただ、こういった市場が難しいのは、素朴なレッセフェールで機能する市場でもないので、要は社会保障関係の市場であったりとか、いわゆる貿易財のように割と素朴にレッセフェール、まあ貿易財でさえもさっきの議論でいうとそう簡単にレッセフェールで機能しないというお話でしたが、そう簡単に機能する市場ではないので、それをどういうふうに上手なルールデザインをしていくのかというのが非常に重要な鍵になると思っております。
これはもう皆さん共有しているように、二〇二〇年に東京にオリンピックがやってまいります。そういった意味でいうと、こうした領域を中心に日本企業が、日本はもちろん世界で金メダルをどれだけ取れますかというのが非常に重要なテーマになるわけで、私は相当数の日本企業はもう一度金メダルを取り戻すことができると思っているので、是非是非今回の法案がそういった活動をスタートする環境整備になればいいなと思っております。
ちょっと各論に入っていきます。
まず、今回の法案の中身で言うと、一つの目玉はグレーゾーン解消制度と企業実証特例制度関連になります。いわゆる抽象的な経済学の議論はともかくとして、私のような経営をやっている人間の現場感覚の経済学で言うと、よく需要サイドか供給サイドかと二つに割る議論はぴんとこないわけでありまして、要は、ちゃんと需要をつくり出して、それと供給がバランスして初めて会社も企業も成長するわけで、そう考えますと、大事なことは、新たな需要創造と同時に新たなビジネスモデルや産業創造をしていくような市場のルールになっているんですか、どうですかというのが基本的な問いだと思っております。
そこで、問題なのは、ちょっと先ほど申し上げましたが、規制の強弱というよりは規制の出来不出来と予測可能性、透明性が大事だと思っています。ですから、何かやってみたら実は違ったとか、OBぐいが刺さっていなかったのに、飛んだら、いや、実はOBですと言われると、これ一番困るわけで。かつ、規制を弱めればいいという単純な話でもなくて。
実は、私どもの会社、東北地方で今五社ほどのバス会社を経営しています。バス会社の関連で、例の高速ツアーバスの問題が出てきて、規制がまた変わって、今新高速乗り合いバスという形に変わっています。これは、実は割と乱暴なルールにしちゃった典型的失敗例なんですが、結果的に何が起きたかというと、私どもがやっているようなちゃんとした路線バスの会社とそれから後から参入してきたツアーバスの会社と実質的に競争上のいわゆるレベル・プレイング・フィールド、イコールフッティングになっていなかったという問題です。全く違う条件で同じ高速道路を走っているバスが競争しなきゃいけなかったということになっていて、要は結果としていろんな事故が起きているわけですが、これに関しては今回の新高速乗り合いバスのルールの方が私はよくできたルールだと思っています。要は、完全に平等な条件でお互いに創意工夫を切磋琢磨するというルールに変わっていますので、ですからこういったことは一つ大事なのかなと思っています。
あと、例えば今後、予防、医療、介護のすき間にいろんな産業が出てまいります。あるいは、ビッグデータ関連でも、多分ビッグデータを活用するということになると、恐らく個人情報保護法との関係でいろんな問題が出てくるはずで、そうすると、これいわゆるグレーゾーンなんですね。そういった領域で自由闊達に事業を起こすということになると、やっぱりグレーゾーンをいかに解消するかというのは非常に大事な問題です。
企業というのはもちろんいろんな会社があるが、大半の会社というのは非常に真面目でございます、日本企業というのは。コンプライアンスに対しては基本的には真面目です。そうすると、グレーゾーンがあると、グレーゾーンはやっぱり黒とみなして行動しますので、そうすると、このグレーゾーンをクリアにするというのは、こういった領域で新しい市場、新しい事業をつくる上で非常に重要な役割を果たすと思っています。
もう一つ、こういう時代のレギュレーションが、私はこれをスマートレギュレーションという言葉と一生懸命あちこちで言っているんですが、要するにスマートなレギュレーションがいいわけで、ところが、市場というのは、事実は小説よりも奇なりで、スマートかどうかというのは実はやってみないと分からないところがあるんですね、そのルールがどう機能するかというのは。以外な機能をする場合が多いわけです。要は一生懸命考えていろいろなシミュレーションしてもですね。
そうすると、やっぱりある種の社会実験的アプローチというのがどうしても有効な方法にならざるを得ないということなので、そういった観点からすると、この企業実証特例制度のようなアプローチも一つの有効な考え方、要するにある種の特区的アプローチですが、これも非常に事業化の有効なアプローチなので、仮にこれ弊害が出てきてもすごく限られた状況でしか弊害が出てきませんし、それは途中でやめちゃえばいいわけですから。そういった意味で、こういった仕組み、グレーゾーン解消制度も企業実証特例制度も意義は私は大きいと思っています。
ただ、問題はこれが運用面でも本当に使いやすくなるかどうかでありまして、法律というのは運用が全てですから、これが簡便で迅速でクリアな運用がされないと、要は張り子の虎になってしまいますので、法律の段階はこれでいいんでしょうが、問題は、実際どういう運用がされていくのかと。これはもう行政サイドでやっていくわけですけれども、そこが一番大事なところなので、そこを是非是非国会の方からもウオッチしていただくとうれしいなと思っております。
それから次に、新陳代謝の促進の話に話題を移します。
持続的成長にとって、新陳代謝の重要性は論をまちません。ところが、この新陳代謝、要はコンソリデーションが非常に大きな要素なんですが、このコンソリデーションに関しては、要は弱体化している、あるいは負け戦になっている企業が撤退して、あるいは事業を売却して事業統合が起きていくというプロセスに関しては、今、伊丹先生からありましたように、実はこれは市場が完全に失敗をしております、日本の場合は。
どう失敗しているかというと、いろんな理由があるんですが、このコンソリデーションの議論、私も随分かかわったことがありますが、大手企業さんの皆さんはかなり早い段階からコンソリデーションが必要だと頭では分かっているし口ではおっしゃいますが、大前提は、自分の会社が他社をコンソリデートすることが前提になっているんです。死んでも自分の会社の事業を売却するのは嫌なんです。そうすると、結局みんな買い気配のまま、MアンドAが成立しないまま、本当に追い詰められてどうしようもなくなってから、しようがないから切り出しをしようかということになるんですね。これはやっぱり明らかにある種の市場の失敗なわけで、そこをどういうふうにスムーズに進めていくかというのは、あめとむちと両方とも必要だと思います。
ある種、今回の政策の中にあめは入っているんですが、それだけでは私は十分じゃないと思っていて、やはり企業の側の選択と集中をめぐる経営規律やガバナンスがちゃんとしっかりしていないと、結局、企業の中の空気と、要するに日本の会社って村型社会なので、その村の中の空気としては、自分の仲間の何割かの人がよその会社に買収されて、勝っている会社のところに何か引き連れられていっちゃうというのは物すごい抵抗感があるので、結局、もうしようがないよねというところまで追い詰められて初めてそういうリストラというかコンソリデーション、事業売却をやるんですね。
これも、やっぱり村の空気に流されてそういう不作為が進むというのは日本の企業の典型的な負けパターンなので、これについては、やっぱりガバナンスを含めた企業経営の在り方、統治の在り方というものを見直していかないと、結果的にだらだらとやって、みんな負け戦になって雇用を失うということを今後も繰り返すことになるので、そこは是非是非この法案に加えて考えていっていただきたいと思っております。
経済同友会の中でも、これも皆さん御存じかもしれませんが、産業競争力会議の中で坂根さんがおっしゃっていたドイツのシュレーダー改革なんかはそういった意味で非常に一つの参考になるアプローチですので、そういった議論もしていただければうれしいなと思っています。
それから次に、ベンチャーです。
ベンチャー育成の件も、随分、伊丹先生に先に言われちゃったので余り言うことないんですけど、大事なことは、世界に打って出られるようなポテンシャルを持っているメガベンチャーをどうつくるかというのが非常に大事な課題で、これは結局、本格的な技術ベースのグローバルベンチャーということになります。やっぱりこの規模のものが出てこないと、さっき申し上げた世界での金メダルにつながってこないというのが一つの課題です。雇用もまとまったものが出てきません。
それからもう一つは、ただ、これを、日本というのはいろんな意味で社会環境がシリコンバレーとは違いますので、日本型の、どうやったらそういう、エコシステムですね、そういうものが継続的につくられるシステムをつくれるかというテーマです。
それで、実はここも鍵は、一つはやっぱり人材の問題です。これももう先生おっしゃったとおりで、一生懸命お金を用意する側を中心に日本のベンチャー政策は打ってきたわけです。その結果として、一番お金を持っているのは大手金融機関ということになるので、大手金融機関の関連会社にベンチャーキャピタルをつくってもらってきたわけです。
ところが、大手金融機関に勤めておられる皆さんというのは、基本的にはこれ、ローン、お金を、銀行業をやっているわけで、銀行業というのは金融機関の中で最もリスクアバースな、要するにリスク回避的なタイプの金融機関です。ベンチャーキャピタルというのは金融の中では最もリスクシーキングな、リスク寄りに偏った金融機関といえば金融機関なんですね。ということは、一番最も向いていない人たちに向いていないことをやらせているということになります。これは別に優秀、優秀じゃないの問題じゃなくて、ベンチャーキャピタリストに銀行業をやらしては駄目です。とても危ないです、逆な意味で。ですから、非常にミスマッチが起きているわけで、ここをどう解消していくかというのが一つの鍵です。
ですから、今後、ベンチャーキャピタルをもしもう一度育成し直すということをゼロベースで考えるのであれば、日本に必要なのはアーリーステージのハンズオン型のVCモデルです。要するに、アメリカのクライナー・パーキンスはみんなそうなんですが、こういうところはどういうところかというと、基本的には超トップエリート、ほとんどが博士を持っている人たちです。超トップエリートでかつプロフェッショナルでかつ独立型の組織です。ですから、独立共同経営型のモデルですね。大体その持っている資本力というのは、やっぱりこれ、本格ベンチャーというのはお金が掛かるので、そこそこのやっぱり数十億のお金を大体集めるわけです。
そうすると、問いは、日本でも幾つか出てきています、そういうプロ集団の独立系のベンチャーキャピタルが。そういう人たちがどうやったら四十億、五十億のお金を集められるような社会環境をつくるのかというのがチャレンジです。要するに、本格ベンチャーって、何千万だとちょっと話にならないので、一つ一つの案件が。大体アメリカでIPOまで行っている、いろいろな調査があるんですけれども、一つの調査では、IPOまでに大体十億円必要とされると言われています。そうすると相当なやっぱり投資規模なんですね。となると、かつ、それを今申し上げたようなハンズオン型のプロの人たちがしょっているという状況をつくらなきゃいけないわけで、日本では、今非常にこのケースは少ないです。ということで、これをどうつくるかが鍵だと思っています。
それから、あと三つ目、ちょっとこれは今日は詳しくは述べませんが、今回の法案で一部触れていますが、もう一つ、ちょっとこの後、是非是非政策上突っ込んでほしいのが、サービス産業掛ける中小企業掛ける地域企業の問題です。
これももう皆さん御存じのとおりで、日本の会社の九九%は中小企業です。雇用の七〇%も中小企業です。実は第三次産業で働いている人がやっぱり七〇%なんです。ですから、この掛け算のところが実は低賃金、低生産性のところでありまして、かつ企業による生産性のばらつきが非常に激しくて、かつ地域の雇用はほとんどこの企業が支えております。
ちなみに、ちょっと私どもが今バス会社をやっているということを申し上げましたが、今うちは福島と茨城と岩手県と栃木県で三千五百人ぐらいの雇用を維持しております、バス会社です、地域の。おかげさまで、ちゃんと利益を上げている、かつちゃんと正規雇用でちゃんと給料も払えるバス会社になっていますが、要は、みんなこれ、前、会社がおかしくなっちゃったケースです。要は、大事なことは、自分で言うのはちょっと言いにくいんですが、しかるべき経営者の下で経営をしていけば、典型的なもうからない産業と言われている地域のバス会社もちゃんと黒字で経営できるということであります。
ということなので、実はこの議論についても、ここはこれからの議論ですので、実はこの七〇%のところにそのアベノミクスの効果が及ばないと本当の意味での持続的な経済成長につながりませんので、そこを是非是非今後議論してもらいたいなと。
最後に、今回の法案の中で、日本再興戦略の実行計画の閣議決定とPDCAの枠組みというのが設定されることになった、これは非常にすばらしいことだと思っております。同友会でも以前から、やっぱり政策のPDCA、この持続性、継続性が極めて大事だと。特に、経済成長というのはオーバーナイトサクセスはないので、やっぱり持続性が大事なので、これはたしか国会も今回かかわるような形になっていると伺っていますが、是非是非これは実際に実行していただけるとすばらしいなと思います。
以上でございます。

〇委員長(大久保勉君) ありがとうございました。
次に、井上参考人にお願いいたします。井上参考人。

〇参考人(井上久君) 全労連の井上と申します。本日はこのような機会を与えていただき、どうもありがとうございます。
私ども全労連も、働く人々や国民の生活向上と同時に、日本経済の健全な成長ということを強く願っております。しかしながら、現政権が進めておられる成長戦略ではそれを実現することはできないのではないかと私は考えております。以下にその理由と産業競争力強化法案の問題点について幾つか述べさせていただきたいと思います。
安倍首相は、本年二月の施政方針演説で、世界で一番企業が活動しやすい国を目指すと表明され、国際先端テストを導入し、聖域なき規制改革を進め、企業活動を妨げる障害を一つ一つ解消していくと宣言されました。産業競争力強化法案においても、規制改革の促進と産業の新陳代謝が大きく掲げられています。
企業のために聖域なき構造改革を進めるという話でありますけれども、一九九八年の規制改革委員会の設置以降、一貫して同種の諮問会議が設けられ、規制改革が進められてきたのではないでしょうか。しかし、その結果として、失われた二十年と言われるとおり、働く人々の収入は落ち込み、個人消費の減退で内需も縮小し、日本は成長を忘れた国と言われるようになってしまいました。その間も大企業の内部留保だけは増え続け、今や二百七十二兆円にも達しています。大企業がもうかれば、いずれそのおこぼれが働く者や地域経済にも波及するという考えはもうやめるべきではないかと思います。
今必要なことは、政治が役割を発揮して、賃上げや中小企業支援を拡充し、内需を活性化させることだと思います。特に、最低賃金の引上げや均等待遇の実現などで賃金の底上げを実現し、年収二百万円未満のワーキングプアをなくすことが急務だと考えます。
私は、二〇〇八年末からの年越し派遣村や、翌年の公設派遣村のときに実行委員の一人として携わり、その後も、派遣切りや非正規切りに遭った方々の相談を多く受けてきました。その中には、この衆参の議員会館の新築に従事された方が少なくとも三名いらっしゃいました。阪神・淡路や中越の大震災で大きな被害を受け、東京に出稼ぎに来たけれども、不安定な職を転々とせざるを得ず、結局は一家離散という方も何人か知っています。庶民の生活を支える制度が弱いために、一度つまずくと坂道を転げ落ちるように生活苦に陥るというのが残念ながら我が国の現実ではないかと思います。その経験からも、雇用の安定と社会保障の充実が経済の安定のためにも必要だと思います。
労働法制の規制緩和の結果、非正規雇用労働者は今や四割近くにまで増えました。大企業は今も彼ら、彼女らを雇用の調整弁と公言し、まるで物のように毎月の生産量に合わせて切ったり雇ったり、また切ったりということを繰り返しています。こんなことを続けていては、経済の再生はおろか、日本の社会の未来も危ういと思います。
厚生労働省が昨年八月三十日に発表された平成二十二年社会保障を支える世代に関する意識等調査報告書によれば、三十代の男性、非正規就業者の実に七五・六%が未婚という深刻な状況です。今回の規制改革論議の中でも、労働者派遣の大幅な規制緩和、常用代替防止という原則を削除するという話が出てきています。国家戦略特区をめぐっても、いわゆる解雇特区や残業代ゼロ特区などの雇用特区が取りざたされました。産業競争力強化法案にも企業実証特例制度の創設が盛られています。日本経済新聞などが報じましたけれども、プロフェッショナル労働制という名称で、一部の大企業に限って解雇規制や労働時間規制を緩和する企業特区の創設が検討され、実際に幾つかの企業には打診があったと私も聞き及んでいます。
しかし、解雇規制に関して言えば、労働争議などを通じた長年の議論と判例の積み重ねで整理解雇四要件が確立されています。残業規制に関して言えば、労働基準法は憲法に基づく最低規制であり、それを一部の企業に限って緩和することは許されない、我が国の法制度上できないことだと指摘せねばなりません。
その点で、法案の第八条は、「当該新たな規制の特例措置の整備を求めることができる。」とされているだけです。企業が求めることができる特例に何の制限もないこと、これは大きな問題だと思います。そもそも、一部の企業だけに特例を認めるという仕組み自体、公正競争という観点からいえば異端であり、もっと議論を深めていただきたいと考えます。少なくとも人々の安全や労働基準など最低規制に関するものは特区の対象としてはならないということを明確にしていただきたいと思います。
ブラック企業ということが社会的な問題になっています。私は、ブラック企業とは、若者などを使い潰すこともいとわず、低賃金でこき使うことをビジネスモデルとして、働く人々の犠牲の上に急成長している新興企業だと認識しています。そうした観点から見たとき、解雇特区や残業代ゼロ特区はまさに使い捨て労働を助長し、日本企業のブラック企業化を推進するものではないかと考えます。
規制緩和論の背景として経済のグローバル化がよく指摘されます。しかしながら、世界の国々は、グローバル化は是認しても、その弊害を和らげ、自国の経済や国民を守る努力を払っています。最近は特に労働者保護ということが強調されており、欧州だけでなくアジアなどの国々でも最低賃金の引上げや中小企業に対する支援が強められています。グローバル競争の荒波にそのままさらせば、賃下げ、コスト削減の際限のない過当競争になってしまうからだと思います。経済再生のためにも、労働法制の規制緩和を見直し、雇用の安定による所得増に政治のかじを切ることが必要だと思います。
次に、産業の新陳代謝という課題に触れたいと思います。
法案の背景として、国内の過当競争が是正されるべきだという指摘があるようです。もう一度世界のトップに躍り出るために、産業や企業の新陳代謝を大胆に促進し、グローバル大企業を再編、強化することが狙いだと認識します。私も大企業の再編自体を否定するわけではありません。しかし、働く者や中小企業がその犠牲にされるということでは本末転倒ではないでしょうか。
日本再興戦略には、「古くなった設備・資産を大胆に処分し、型遅れの設備を最新鋭のものに置き換える。」というくだりがあります。前後の文脈から見ても、ここには生身の人間や中小企業が当然含まれているはずです。政府主導の大リストラ宣言と言わざるを得ません。こんなことをすれば、中小企業の大量倒産と大失業時代の到来は必至です。日本経済に急ブレーキが掛かることも明らかだと思います。
そうした企業再編のツールとして産業競争力強化法案が活用されるということであれば、私たち労働組合はもとより、大多数の国民も決して是認しないと思います。企業合併等の場合にも、そこにいる労働者や従前の労働条件を引き継ぐこと、それを原則にすることが必要だと思います。
次に、産業の新陳代謝のツールとして法案で大きく位置付けられているファンドの問題について触れます。
最近でいえば、西武ホールディングスに対するサーベラスの大リストラ提案が大きな話題になりました。近年、代替的なファンドによる企業買収が増えています。ファンドに支配された企業では、問答無用のリストラや企業そのものの解体、切り売りが矢継ぎ早に展開されています。十一月一日には、ウェッジホールディングスに四十億九千六百五万円もの課徴金を課すよう証券取引等監視委員会が勧告を行うという事案も発生しました。
問題は、こうした事例はハゲタカファンドなどと呼ばれる一部の不公正ファイナンスに限ったことではないということです。ファンドはその性質上、組成から比較的短期の一定期間で利益を最大化し、資金を回収することになります。金融自由化で金融機関や伝統的なファンドと代替的なファンドの垣根も下がりました。
したがって、官民ファンドなどの場合にも様々な問題が指摘されています。例えば、日本航空の再生には地域経済活性化支援機構の前身である企業再生支援機構がかかわりましたが、大リストラが行われ、最終的には百六十五名の解雇が強行されました。再生された日本航空はV字回復を果たし、昨年九月に再上場されましたが、三千五百億円を出資した機構は二倍近い売却益を得ました。翌年、日本航空の株主配当は一割九分という異例の高配当でした。しかし、職場はベテランが大量にいなくなり、不安全事例が多く発生すると同時に、人手不足から、休みもままならない、離職が後を絶たない状況に陥っています。客室乗務員などは年度途中の大量採用を繰り返している、そんな実態です。
マネー資本主義が広がり、ファンドの跳梁が言われる昨今、短期的な利益の最大化が企業経営の持続的な発展と相入れない事例がますます目立ってきたと感じています。そうしたファンドの弊害をよく理解し、情報公開を徹底してファンドを社会的ルールの上に乗せること、特に外国籍のファンドも含め、ファンドが日本で活動しようとする場合には例外なく届出を義務付け、監視体制を強化することが必要だと思います。
最近は一般投資家保護ということが強調されていますが、その企業に働く労働者こそ最大のステークホルダーだと思います。ファンドに乗っ取られた企業でも、例えば昭和ゴムの事例のように、そこに労働組合があったからこそ、ファンドの思いどおりにはさせず、結果として企業も守られてきました。労働者、労働組合の存在と権利を会社法などにも明記し、交渉権を担保することが必要だと思います。
我が国日本は、東日本大震災と原発事故という大惨事に直面しました。私も、石巻であるとかいわきなど、被災地の支援に何度か赴きましたが、国際NGOの方から、戦地の難民キャンプでもしばらくすれば温かい食べ物が出るのに日本はどうなっているのだ、震災から二か月もたつのに冷たい弁当やパンばかりではないかという指摘を受けたことが胸に刺さりました。
震災直後、日本政府は、「日本はひとつ」しごとプロジェクトということを立ち上げられました。聞こえはいいですけれども、実際にやられたことは、全国から寮付き、住み込みの仕事を集めて被災地のハローワークに送るという話でした。生身の人間、住み慣れた地や故郷の再生を願う人々がどういう受け止めをしたか考えていただきたいというふうに思います。
私は、復興を願う人々、それから真面目に働く労働者を置き去りにした復興や成長であってはならないと思います。大震災を経験した日本だからこそ、世界で一番企業が活動しやすい国ではなく、その前に、世界で一番人が幸せな日本を政治家の皆さんには目指していただきたいと切に願います。よろしくお願いいたします。

〇委員長(大久保勉君) ありがとうございました。
以上で参考人の皆様の意見陳述は終了いたしました。


議事録を読む(参考人質疑)
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言を願います。

〇倉林明子君 本日は、三人の参考人の方に意見をお聞かせいただいて、本当にありがとうございました。
最初に冨山参考人にお伺いしたいと思うんですが、先ほど解雇の現実ということでお話がありました。問題は大企業の外の八割のところに問題があるんだということでございました。実態として、私聞き及んでおりますところによりますと、大きな名立たる大企業のところでも万単位の、何万人単位のリストラが進められると、こういう実態も一方ではあって、そこを首切りに遭った人たちも大変な苦労をしているという現実も一方であると思うんですけれど、御説明のあったその解雇の現実ということについてもう少し踏み込んで御説明いただければ有り難いと思います。あわせて、少しゆっくりお話しいただいた方が聞き取りやすいので、よろしくお願いします。

〇参考人(冨山和彦君) 大企業において今確かにまとまった、一万人とかという単位の人員削減とかというのが行われていることは事実です。私もそれにかかわったことがあります。
ただ、要は、そういう場合と、中小企業、例えば田舎の小さな旅館とか、そういうところで人に辞めてもらわなきゃいけないときの状況を比較したときに、どちらが要はより深刻な展開になるかというと、今のは大企業の正社員の話です、大企業の正社員の方にお辞めいただくケースというのは、多くの場合、かなり手厚い希望退職の形になります。少なくとも二十四か月ぐらい払うんじゃないでしょうか。その上でいろんな形で、グループ関係会社の中に何とか受皿を探すという努力をそれこそ組合さんと一緒にやって、相当なやはり手を掛けられるんですね、それでも。
ですから、私が申し上げたかったのは、ところが、それが例えば田舎の小さな旅館の場合にはそういう要するに持っていき先が実はありません。既に元々非常に賃金水準の低い方々です。実際、私の経験でいうと、そういう場合でもやっぱりぽんとおっぽり出されると大変なことになるわけで、それこそ自分の田舎に自分の子供を預けて子供に仕送りしているような方がいらっしゃいますので、そういった人たちの子供の人生も壊れないように最大限の配慮はしました。
なんですが、にしても、やっぱり相当切ない状況があるわけで、それを比較したときに、私自身の感覚でいうと、むしろそういう環境で働いている人が七割以上いるのが日本の現実ですから、後者の方が、そういった意味合いでいうと、この問題の深刻さというのは、これは比較の問題です、別にその大企業の問題が問題じゃないとは言っていませんけれども、比較の問題として、量においても質においても明らかにその八割の問題の方が深刻なわけで、ですから、そこにどうしていくのかという議論が深刻になされないと、私は結局大きな問題が放置されると思っていますし、加えて、この七割、八割の人たちの労働者というのは、ある意味では組織化されていません。
したがって、こういう議論をするときに、例えば政労使が集まっても、結局二〇%の雇主と二〇%の労働者がある意味では集まって議論するということになるので、この七〇パー、八〇%の議論はどうしても相対的に見過ごされがちなんです。ですから、そこに是非是非、私は政治はそこに光を当てるべきものだと思っているので。ここはくどいようですが、残念ながら、通常の市場原理とか経済原理の中で解決せよというのは直接的には難しいです。あるとすれば、くどいようですが、個々の企業が頑張っていい経営をして、少しでも生産性を上げて、高い賃金で安定的な雇用をつくるという、ある種経営者の努力以外に私は答えがないと思っているので、そこから先はある意味では市場経済で解決しろというのはちょっと酷な話だと思っています。

〇倉林明子君 雇用の問題で大企業の二割のお話ありましたけれども、大企業の中にも正規雇用、非正規雇用、非正規雇用が極めて拡大してきているという実態があると思うんですね。
その上で、井上参考人に質問したいと思うんですけれども、大企業の現場でも雇用の在り方が現在でも多様化してきていると思うんですね。そんな中で、さらに、日本再興戦略の中では多様な働き方ということで掲げられているわけですが、今でも非常に問題あると我々は思っているわけですが、今後こういう戦略で描かれている雇用の在り方というのは一体現場にどんな影響が広がっていくと考えておられるか、雇用の在り方がどうなるかという辺りを御意見を伺いたいと思います。

〇参考人(井上久君) 幾つか挙げられていると思うんですが、最初の発言でも触れさせていただきましたけれども、一つはやっぱり労働者派遣の常用代替防止という大原則を今度外せという話が出されていると思います。人を替えればいつまでも派遣を使い続けられる、それから、一生涯派遣という働き方が当たり前になりかねないということだと思いますし、そうなれば、やっぱり非正規が当たり前ということで、多くの職場で正社員が派遣や非正規に置き換えられていく、そんな事態になりかねないというふうに思うんです。
現政権も所得増、賃金を上げるということを言われていますが、そういう雇用破壊をする、不安定な雇用にしていくということになれば、賃金も下がっていきますし、最初の発言でも言いましたけれども、ブラック企業が当たり前の社会にするということでは、経済成長と逆行する真逆の政策ではないかというふうに思います。

〇倉林明子君 再び冨山参考人にお伺いしたいと思います。
いただいた資料の中で、冨山参考人の御意見として出されていたと思うんですけれども、国際比較をすると、日本の地方と中国の沿岸部、賃金比較では日本の地方の方が安いと、こんな状況になっているという御意見を述べられていたかと思うんです。
コストを考えれば地方への企業進出が進むのではないかというような議論があって、だけど進んでいないと、そのことに対して一体要因は何かということで、お聞かせいただきたいと思います。

〇参考人(冨山和彦君) これ実際の雇用がどう生まれるかというのは、より個別的な企業の行動の中で決まってまいります。そうしてみたときに、中国の沿岸部の賃金の高さというのは、これは圧倒的に沿岸部に特に多い金融セクターであるとか、BツーBのサービスセクターであるとか、要はかなり高付加価値産業が実はもう沿岸部の主要産業になっていて、工場が実はもっと奥地に移っちゃっています。
そうすると、結局、この比較の問題というのは、そうなりますと、中国を生産拠点にするか、あるいは日本を生産拠点にするのかというのは、通常の割と平均的な量産工場ということに絞って申し上げると、要は、中国内陸部の平均賃金と、東北であれば東北の平均賃金の比較ということになるので、そうすると、そういった意味ではどうしてもまだ日本は比較劣位になります。
ただ逆に、日本の国内にも残した方がいいような工場労働もあるわけで、その典型が、先ほど伊丹参考人から話がありましたように、複雑系の物づくりというのは、実はマザー工場の役割が非常に重うございます。要は、生産工程というものを実はすごく創意工夫しながらつくり込むんですね。それを何か月、何年と掛けながら実は量産体制に持っていくというつくり方をしております。これは初期の携帯電話なんかもその典型だったわけですけれども。そうした過程というのはどうしたって日本国内に残していくということになりますし、逆に、日本国内においてはむしろ長期雇用が通常でありますので、長期雇用の方がそういったノウハウが外部に流出しないで蓄積することが可能です。
したがって、そういったタイプの複雑系の生産工程、特にマザー工場的な生産工程、要はハイエンドの生産工程というのはむしろ国内に残していく動機付けが比較優位論としては強く働きますので、そういった工場は残っていくはずです。もっと言いますと、日本の企業は国際的に圧倒的に成功して、例えば、平均的な日本の大手電機メーカーが今の十倍の規模になれば、当たり前ですがマザー工場の量は増えます。恐らく、現実的な工場労働、工場労働的な物づくり系の雇用を増やしていこうと思ったら、実はそれが最も現実的な私はアプローチだと思っています。

〇倉林明子君 今のお話は、企業進出をどう進めるのかというような点からのお話だったかと思うんですけれども、一方、今、私、京都が地元なんですけれども、地方で下請で部品作っている、金属加工している、あるいは繊維加工しているというふうなところが、中国単価との競争というようなことが実態として起こっているんですね。本当にそういう世界競争を既にもう足下のところではやらざるを得ない、それでも受けざるを得ないというような状況になっているのが現実ではないかと思うんですね。
そこで、井上参考人に改めてお聞きしたいんですけれども、全国をお回りになっているという中で、そういう私が紹介したような働き方というのも現実進行しておりますけれども、雇用されて働いている方々のところで一体どんな実態が広がっているのかというところも是非御紹介いただきたいと思うし、雇用の質ということで御意見述べていただいたと思うんですけれども、その点でももう一つ踏み込んで御紹介をいただきたいなと思います。

〇参考人(井上久君) 雇用の質、まず一つ触れておきたいのは、日本の場合に、先ほどお話がありましたマスター工場で、マスター工場でありながら、そこで世界中を見渡したときに人員調整が一番やられているという日本の雇用の現実といいますか、雇用保障の弱さということが一つあるんだと思います。
それからもう一つ、先ほどキャラバンで全国を回ってということをお話ししましたが、全てがグローバル競争の荒波の中にさらされているわけではないですよね。やっぱり地域で、本当にその地域循環型の中小企業や人々の生活があります。その場でやはり人々が普通に働けばまともな生活ができるということが必要だと思うんですけれども、一例を挙げます。
北海道で四十人の高校というのがたくさん実はあるそうなんです。入学時にはほとんどの人が進学希望だけれども、経済状況で卒業時には半数ぐらいが就職になると。三月には就職率は一〇〇%になるけれども、ほとんどの人が手取り十万円程度の仕事、最も多いのが携帯電話の販売員だというふうに言われていましたが。
こうした現実を考えて、今東北地方を回っていても、震災直後、高校生は地元志向というのがぐっと強まりましたけれども、やはり暮らしていけないということで、都会に出ざるを得ないというのが驚くほどこの一年ぐらいで変わったんだなということを感じましたが、やっぱりグローバル化とは別の地域経済ということを私は一番考えていただきたいなというふうに思います。

〇倉林明子君 今回の法案の中では、企業実証特例制度というものも例外なく、農業、医療、雇用分野に例外なく使っていけるんだと。一方で、こういうものを使って雇用の不安定さが増すようなことはあってはならないということを非常に懸念しております。規制、雇用のルールをしっかり守るということを支援しながら、労働者の賃金の底が上がるというようなことがやっぱり本当は求められているんじゃないかというふうに思っております。
今日は様々な意見も伺って、質疑も更に深めていきたいと思っております。伊丹参考人には、最後、意見をお聞きできませんで申し訳ありませんでした。
ありがとうございました。