倉林明子

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高齢者医療費2倍化法成立 コロナ禍の下 生活支援こそ(2021/6/4 本会議)

 75歳以上の医療費窓口負担(現在原則1割)に2割負担を導入する「高齢者医療費2倍化法」が4日の参院本会議で自民、公明、維新、国民民主各党などの賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、立憲民主党などは、反対しました。

 2割への窓口負担増は当面、単身世帯で年収200万円以上、夫婦世帯では合計年収320万円以上が対象(課税所得の要件あり)。施行期日は2022年10月1日から23年3月1日までの間で政令で定める日としています。政府は2割負担導入による「受診行動」の変化で医療給付費が年間1050億円も減少すると試算しています。

 討論で日本共産党の倉林明子議員は、「必要な医療が受けられなくなることを前提に負担増を強いるのは、高齢者の命を削り、尊厳を脅かすものであり断じて許されない」と強調。撤回を強く求めました。

 政府が、今回の高齢者への大幅負担増の口実にしている現役世代の保険料負担軽減額は月約30円にすぎません。

 倉林氏は、改悪の真の狙いが公的な社会保障費の削減にあることを明らかにし、「この間減らしてきた高齢者医療の国庫負担割合を元に戻すことこそ急務だ」と力説しました。

 その上で、政府が「能力に応じた負担を」と言うのなら、減税と株高でコロナ禍でも莫大(ばくだい)な利益を得ている大企業や大資産家に応分の負担を求め全世代の社会保障の大幅拡充に踏み出すべきだと強調。「コロナ禍のもとでいまやるべきは思い切った負担軽減、生活への手厚い支援だ」と訴えました。


日本共産党の倉林明子議員が4日の参院本会議で行った「高齢者医療費2倍化法案」に対する反対討論(要旨)は次の通りです。

 法案に反対する最大の理由は、75歳以上の高齢者への医療費窓口2割負担の導入です。

 対象者から「心細くてしかたない」「年7万円の医療費が倍になれば受診控えも考えなあかん。ひどいしうち」など、不安と憤りの声が寄せられています。

 政府は、2割負担による受診抑制で医療給付費が1050億円減ると試算しています。高齢者にとって通院や薬を減らすことは病状悪化に直結します。必要な医療が受けられなくなることを前提にした負担増は許されません。2割負担導入は断固撤回すべきです。

 政府は、「現役世代」の保険料負担の軽減を強調します。しかし、現役世代の負担減は1人当たり月約30円です。最も削減されるのは国・自治体の公費1140億円。公的な社会保障費の削減を推進するものです。減らしてきた高齢者医療の国庫負担割合を元に戻すことが急務です。

 厚労大臣は、現役世代の負担軽減策を問われ、安定的な制度にするには「弥縫(びほう)策では難しい」と答えました。2割負担、3割負担の対象拡大を含め、限りない負担増と給付抑制を宣言するものです。

 莫大(ばくだい)な利益を得る大企業や大資産家に負担を求め、全世代の社会保障の大幅拡充に踏み出すことを求めます。

 第2に、国民健康保険の都道府県運営方針に、法定外繰り入れの解消、保険料水準の統一を記載することは、国保料値上げ圧力を法定化するものだからです。

 加入者は、被用者保険より極めて高い保険料負担を強いられてきました。だからこそ“国民皆保険の最後の砦(とりで)”として、自治体は負担軽減策や法定外の繰り入れで、値上げを抑える努力をしてきました。それを国が禁じれば、保険料はさらに高騰し、現役世代を含めた住民の命と健康、くらしを脅かすことは必至です。

 第3に、生活保護利用者が、医療扶助を利用する際、マイナンバーカードによる資格確認を原則とすることです。医療保険におけるオンライン資格確認は任意であり、生活保護利用者にだけ強制し、自己決定を否定することは権利侵害に他なりません。生活保護利用者に対し、新たに差別的な措置を導入することには断固反対です。

 第4に、保険者が求めた場合、事業主に健康診断情報の提供を義務付けることです。機微な個人情報にもかかわらず、本人同意の担保はなく、自己情報のコントロール権が阻害されかねません。

 いまやるべきは、負担軽減、生活への手厚い支援であることを求め、討論とします。


議事録を読む

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 初めに、オリンピック開催は、感染爆発を招く大きなリスクがあるとともに、医師、看護師の派遣、特別な病床の確保など、コロナ封じ込めと命を守る医療への多大な負荷となるものです。
 IOCバッハ会長は、誰もが幾らかの犠牲を払わないといけないと発言しましたが、五輪を強行するために失ってよい命などありません。
 総理は、責任回避はやめ、専門家の警告を聞くべきです。開催国の政府として、国民の命に責任を負う立場から、直ちに中止を決断し、あらゆる力をコロナ収束に集中させることを求めるものです。
 本法案に反対する最大の理由は、七十五歳以上の高齢者へ医療費窓口二割負担を導入することです。
 対象となる方々からは、年金は減るのに心細くて仕方ない、年七万円の医療費が倍になれば受診控えも考えなあかん、長くない人生なのにひどい仕打ちなど、不安と憤りの声が寄せられています。
 高齢者の負担は医療費の窓口負担だけではありません。全世代型社会保障の名の下に、年金は減らされ、医療も介護も次々と負担が増やされました。
 後期高齢者医療の保険料は、二〇〇八年の制度実施以来値上げが続き、一人当たり年七万六千七百六十四円にもなります。低所得者への軽減措置も廃止、縮小され、生活を圧迫しています。滞納者は二十二万人、短期証二万二千人、滞納による差押えは年間七千四百件にもなっています。
 介護保険料は、発足時の二倍以上になり、利用料も二割負担、三割負担が導入されました。今年八月からは施設に入所する低所得者の食費等の負担が増えることになります。
 政府は、二割負担による受診抑制により医療給付費が一千五十億円減ると試算しています。年を重ねるほどに複数の病気を抱える高齢者にとって、通院や薬を減らすことは病状悪化に直結します。必要な医療が受けられなくなることを前提に、容赦なく負担増を強いることは、高齢者の命を削り、尊厳を脅かすものであり、断じて許されません。二割負担導入は断固撤回すべきです。
 政府は、負担の二倍化を正当化する口実に、現役世代の保険料負担の軽減を強調します。しかし、今回の高齢者の負担増によって現役世代の負担が減るのは一人当たりに換算すれば月三十円にすぎません。
 最も削減されるのは、国、自治体の公費一千百四十億円です。現役世代の負担減を口実にして、公的な社会保障費の削減を推進するものにほかなりません。この間、減らしてきた高齢者医療の国庫負担割合を元に戻すことこそ急務です。
 厚労大臣は、委員会審議の中で、現役世代の負担軽減策を問われ、安定的な制度にするためにはびほう策では難しいと答えられました。二割負担、三割負担の対象の拡大や、医療費負担の在り方に預貯金など金融資産を勘案することを含め、限りない負担増と給付抑制を宣言するものです。高齢者の人権をこれ以上侵害することは断じて容認できません。
 大企業、富裕層への行き過ぎた減税が貧富の格差を広げ、社会保障や医療の財源を損なったことでパンデミックに弱い社会になっていたとの批判、反省の下、企業や富裕層に応分の負担を求める動きが今各国で広がりつつあります。負担能力に応じた負担というなら、減税と株高でコロナ禍でも莫大な利益を得ている大企業や大資産家に応分の負担を求め、高齢者を始め全ての世代の社会保障の大幅拡充に踏み出すことを求めるものです。
 第二に、国民健康保険の都道府県運営方針に法定外繰入れの解消、保険料水準の統一を記載させることは、国保料の値上げ圧力を法定化するものにほかならないからです。
 国民健康保険は、高齢者や疾病を抱えた方が多く、医療費が増加する一方、無職、非正規労働者など低所得で保険料の負担能力の弱い方たちの加入が増え、構造的な問題を抱えています。加入者は、ただでさえ被用者保険より極めて高い保険料負担を強いられてきました。だからこそ、国民皆保険の最後のとりでとして、自治体は様々な負担軽減策や法定外の繰入れにより保険料の値上げを抑える努力をしてきました。それを国が禁じれば、保険料は更に高騰し、現役世代を含めた住民の命と健康、暮らしを脅かすことは必至です。地方自治体が住民の福祉のために行う施策に対し国が廃止しろと強制することは、自治権を侵害するものです。
 第三に、生活保護利用者が医療扶助を利用する際、マイナンバーカードによる資格確認を原則とすることです。医療保険におけるオンライン資格確認は任意であり、生活保護利用者にだけ強制し、自己決定を否定することは、権利侵害にほかなりません。
 厚労省は、審議の中で、利用者を説得するとしながらも、要件ではないので強制ではないと明言しました。であるなら、強制ではなく、利用者の同意がなければ医療券は使えること、利用者の意思に反した説得はすべきでないこと等を生活保護手帳等に明示するなどの徹底を求めるものです。
 厚労省は、生活保護の申請は権利です、ためらわず自治体に相談をと呼びかけています。それでも、住まいを失い、所持金が数百円になっても、生活保護だけは受けたくないという方たちがたくさんいます。生活保護の要件ではない扶養照会や、無料低額宿泊所や施設入所の強要が利用を遠ざけています。
 マイナンバーカードに対する忌避感情は当然のものです。マイナンバーカード所持の強要が生活保護のハードルを更に高くするものになってはなりません。
 生活保護利用者に対し新たに差別的な措置を導入することには断固反対するものです。今必要なのは、限界を超えている自助の強要をやめ、権利にふさわしい利用者本位の制度に見直すことです。
 第四に、保険者が求めた場合、事業主に労働安全衛生法による健康診断情報の提供を義務付けることです。健診情報という機微な個人情報であるにもかかわらず、本人同意の担保はなく、自己情報のコントロール権が阻害されかねません。
 EUでは、個人の権利として本人が同意を撤回した場合などのデータの消去権、いわゆる忘れられる権利が規定されているだけでなく、取扱いを制限させる権利、プロファイリングを含め、取扱いに異議を申し立てる権利などが保障されています。こうした基本的な権利規定なしに、情報収集が先行することは重大な問題です。
 コロナ禍、雇用状況は悪化を続け、高齢者も、その生活を支える家族、現役世代も厳しい生活を余儀なくされています。今やるべきは、思い切った負担軽減、生活への手厚い支援であることを求め、討論といたします。