倉林明子

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残業代ゼロ 世論と結び廃止必ず 「働き方」法成立 自公維が強行 参院本会議 過労死家族を踏みにじる(2018/6/29 本会議)

 過労死を促進する残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)を盛り込んだ「働き方改革」一括法の成立が29日、参院本会議で自民党、公明党、維新の会などの賛成で強行されました。日本共産党、国民民主党、立憲民主党、希望の会(自由・社民)、沖縄の風は厳しく反対。一貫して残業代ゼロ制度の削除を求めてきた野党は、反対討論でも「戦後最悪の労働法制大改悪だ」などと、そろって批判しました。本会議後の記者会見で、日本共産党の笠井亮政策委員長は、とりわけ残業代ゼロ制度について「世論と運動と結んで、廃止に追い込んでいく国会でのたたかいを急速に強めたい」と表明しました。

倉林議員反対討論
 日本共産党の倉林明子議員は本会議での反対討論で、野党提出の参院厚生労働委員長解任決議案を無視して法案採決を強行した与党の暴挙を糾弾。ねつ造、隠蔽(いんぺい)が発覚し、労働時間データの誤りが次々と明らかになったとして「立法事実は完全に破たんしている。労政審も国会も冒涜(ぼうとく)し、国民世論も過労死家族の会の願いも踏みにじる本法案は廃案とするのが立法府としての責任だ」と強調しました。

 倉林氏は「本法案が過労死促進法であることが審議を通じて明らかになった」と指摘。労働時間規制を一切取り払う「高プロ制度」は対象業務も、収入要件の実態も明らかになっておらず、労働時間の裁量権も規定されていないとして「こんな危険な白紙委任は到底認められない」と強調しました。

 さらに、世界でも異常な長時間労働を放置したまま「過労死ライン」を合法化する時間外労働の上限規制を批判。労働者保護法制が適用されない働き方も含む「多様な就業形態の普及」を国の施策に加えることや、格差是正と称し正社員の処遇引き下げも可能な「同一労働同一賃金」の問題点を指摘しました。

 倉林氏は「過労死の悲劇を繰り返さないという総理の言葉は、過労死家族もすべての働く人々をも欺くものだ」として、国民を欺く安倍政権の一刻も早い退陣を求めました。

 本会議場の傍聴席では、「過労死を考える家族の会」の人たちが過労死で亡くした家族の遺影を手に、厳しい表情で審議を見守りました。


議事録を読む

○倉林明子君 日本共産党の倉林明子です。
 私は、日本共産党を代表して、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案に反対の討論を行います。
 昨日、与党は、継続、徹底審議を求める野党の要求を打ち切り、野党三会派が提出した厚生労働委員長解任決議を本会議にも諮らず棚上げするという前代未聞の暴挙の上、厚生労働委員会を再開させ、採決を強行いたしました。これは二重の暴挙であると断ぜざるを得ません。断固抗議するものです。
 以下、反対の理由を述べます。
 本法案は、その立法事実が破綻しているということです。
 議論の出発点である労働時間のデータの捏造、データの隠蔽が発覚し、法案から裁量労働制を削除せざるを得ないという異例の事態となりました。二割にも上るデータを削除した後も、残りのデータに次々と誤りや記載ミスが見付かっただけでなく、削除後のデータに重大な乖離が生じていたのです。さらに、管理監督者を一般的な働き方に含めたデータを労政審に提出したことも発覚し、大臣は誤りだったと認めています。誤ったデータで労政審での議論が行われていたのです。誤りを認めるのであれば、労政審に差し戻すのが当然ではありませんか。法案の前提は完全に崩れているのです。
 総理が、成果で評価される働き方をしたい方のために制度をつくると説明してきたのが高度プロフェッショナル制度です。審議を通じて明らかになったのは、十二人に聞き取ったという労働者のニーズはでっち上げだったということです。高プロを初めて提案したのは武田薬品工業株式会社の社長であり、ニーズは大企業にあったことが明らかになりました。労働法制の立法根拠が使用者の要請であるなど、本末転倒、労働法制の根幹をゆがめることにほかなりません。立法事実は完全に破綻しています。
 労政審も国会も冒涜し、国民世論も過労死家族の会の願いも踏みにじる本法案は、廃案とするのが立法府としての責任ではないでしょうか。
 第二に、本法案が過労死促進法であることが審議を通じて明らかになったからです。
 高度プロフェッショナル制度は、労働時間規制を一切取り払うもので、戦後の労働法制上やったことがない異次元の規制緩和となるものです。対象業務は限定するというものの、どんな業務が対象になるのか明らかになるのは法案成立後であります。労働者派遣法でも裁量労働制でも、省令により対象業務を拡大させてきたのが厚労省です。国会に諮ることなく、際限なく対象業務が拡大される道が開かれています。
 肝腎の年収要件も、高収入とは看板倒れで、実はパートも含む労働者の平均が根拠だったこと、通勤手当など固定的な手当も含まれること、一千七十五万円の総額は示されているものの、手取り額の実態は最後まで明らかになりませんでした。
 この制度が最初に法案として盛り込まれた当時の厚労大臣は、小さく産んで大きく育てると発言していたとおり、高プロの対象となる業務も労働者も大きく膨らむ危険が極めて強いのです。
 さらに、裁量権があるから自由な働き方が可能だと説明しながら、裁量権は法案で規定されておらず、たまたまこういう会議がありますよという通知なら指示に当たらないと大臣は驚きの答弁をいたしました。これでは、名ばかり裁量権になることは目に見えているのではないでしょうか。対象業務など、省令や指針、通達で決める項目を数えると九十を超えています。こんな危険な白紙委任は到底認められません。
 成果を上げるまで残業代なしで働かせ、過労死しても、過労死としては認められず、労災認定はおろか労災申請さえも極めて困難にし、結果として、表向きは過労死の件数だけが減少するという最悪の事態を招くのが高度プロフェッショナル制度です。命を奪うだけでなく、残された家族に何の補償もされない、こんな制度は絶対に成立させてはなりません。
 時間外労働の上限規制についても、過労死ラインの時間外労働を合法化するものとなっていることは重大です。三井住友海上では、法改定を前提として三六協定の特別条項の上限規制を年間百九十時間も引き上げる見直しがされています。罰則付きの上限規制が長時間労働を助長する危険性は極めて高いのです。
 そもそも、日本は異常な長時間労働が放置されたままとなっている数少ない先進国の一つです。
 今では世界の常識ともなっている一日八時間、週四十八時間の労働時間条約をILOが採択したのは一九一九年。当時の労働時間は、一日十四時間又は十六時間でした。月百時間未満の残業時間の法定化は一日十三時間に当たるもので、百年前の世界の働かせ方の水準を容認するものと言っても過言ではありません。長時間労働の是正というのであれば、日本政府が行うべきは、百年前の条約を直ちに批准することではないでしょうか。
 さらに、本法案が雇用対策法の役割を大きく変質させることも重大な問題です。
 法律の名称を雇用対策から労働施策に変え、労働生産性の向上を目的に据え、多様な就業形態の普及が国の施策と位置付けられています。
 現在でも増え続けるフリーランスなど多様な就業形態で働く人たちの中には、保護されるべき労働者でありながら、請負で働く人々が少なくありません。最賃法も労働基準法も適用されない労働者を労働法制で普及するなどあってはなりません。労働者保護法制が適用されない働き方も含む多様な就業形態の普及を国の施策に加えることは、無権利、低所得の労働者を増大させることにつながるものであり、到底容認できません。
 また、同一労働同一賃金についても、格差是正のために正社員の処遇を引き下げることが可能となっています。既に、日本郵政では、正社員の処遇を引き下げて、正規、非正規間の処遇間格差を是正するという対応をしているのです。労使の合意があれば、正社員の処遇を引き下げることも不利益とは言えません。大臣は望ましくないと言うだけで、何ら歯止めはありません。加えて、フレックスタイム制の清算期間を三か月に拡大することは、長時間労働の助長、新たな未払残業につながるものです。
 二〇一四年六月、この議場で過労死等防止対策推進法が全会一致で可決、成立し、翌年には過労死等の防止のための対策に関する大綱が閣議決定されました。その大綱には、「法が成立した原動力には、過労死に至った多くの尊い生命と深い悲しみ、喪失感を持つ遺族による四半世紀にも及ぶ活動があった。」と書かれています。
 総理は、二度と悲劇を繰り返してはならないと何度も決意を述べてきました。にもかかわらず、大綱策定から僅か三年、政府が過労死促進法ともいうべき本法案を提出すること自体、言語道断、到底許されるものではありません。
 過労死の悲劇を繰り返さないという総理の言葉は、過労死家族も全ての働く人々をも欺くものだと言わざるを得ません。国民を欺く安倍政権には一刻も早い退陣を強く要求して、反対討論といたします。