倉林明子

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最低保障なく際限ない減額 年金カット法 成立(本会議)

 年金カット法が14日の参院本会議で自民、公明、維新などの賛成多数で可決、成立しました。共産、民進、希望の会(自由・社民)、沖縄の風は反対しました。反対討論で日本共産党の倉林明子議員は「最低保障もなく、際限なく減らされる年金制度を将来世代に残すわけにいかない」と批判しました。

 倉林氏は、新たに導入される「賃金マイナススライド」によって、引き下げられた水準の年金が将来世代に引き渡されることになり、「将来年金確保法案」というのは「看板に偽りあり」だと強調。年金抑制の「マクロ経済スライド」の未実施部分を、翌年以降に持ち越す「キャリーオーバー」の導入で、消費税が10%に増税されたときに年金が上がらないどころか下がるという「高齢者にとっては悪夢のような事態」が起きると指摘しました。

 さらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率を倍増させ、年金を株価つり上げの道具にしたと批判。国民に年金削減を押し付けながら積立金を積み上げる必要はないと主張。老後の生活の基礎となるように低年金の底上げ、最低保障年金の導入、現役世代の雇用・賃金の立て直しなど「本当の改革が求められる」と訴えました。


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○議長(伊達忠一君) 倉林明子君。

   〔倉林明子君登壇、拍手〕

○倉林明子君 私は、日本共産党を代表して、公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案、すなわち年金カット法案に対して、反対の討論を行います。
 高齢者世帯の収入の七割を年金が占め、六割の高齢者世帯が年金収入だけで生活しています。将来の年金受給額に大きな影響を与える重要法案を、衆議院で僅か十九時間余りの質疑で採決を強行した上、臨時国会の会期末前日に参議院に送付し、会期延長によって押し通そうとするなど言語道断です。安倍政権の乱暴極まりない手法に断固抗議するものです。
 本法案は、際限なく年金をカットする賃金マイナススライドというべき新たな仕組みを導入するものです。これまでも、年金の支給額は物価と賃金を指標に改定されてきましたが、既裁定者について、賃金指標がマイナスとなったことを理由に年金を引き下げることはしませんでした。しかし、今回の改定で賃金マイナススライドが導入されれば、たとえ物価が上がっても、賃金がマイナスの場合、年金はマイナス改定となります。物価と賃金が共にマイナスで、賃金の下げ幅の方が大きい場合は、年金は賃金に合わせてカットされます。ひたすら低い方に合わせて年金を引き下げるものにほかなりません。
 政府・与党は、将来世代の年金水準を確保する将来年金確保法案と強弁しています。しかし、政府の言う年金水準の確保とは、将来世代の年金を増やすものではありません。二〇〇四年に導入されたマクロ経済スライド、マクロ調整の仕組みにより、既に基礎年金は二〇四〇年代まで下げ続けることが決まっています。
 その調整が予定以上に長期化し、元々下がる年金が更に下がるのを防ぐ、言わば下げ止まりにするというのが政府の言う将来確保の本当の意味です。安倍総理自身、本院の審議で、将来世代の年金が増えるとは言っていない、むしろ、本法案のルールが導入されれば、賃金に合わせて名目の年金額は下がると答弁しています。これでは看板に偽りありと言わざるを得ません。
 本法案の賃金マイナススライドが導入されれば、現役世代の賃金下落に応じて年金も下げられ、その引き下げられた水準の年金が将来の世代に引き渡されることになります。高齢者と同居し、扶養している現役世代や生活や介護の支援をしている現役世代にとっては、ダブルパンチが襲いかかることになります。賃金マイナススライド導入は、現役世代にとっても何もいいことはありません。
 さらに、賃金マイナススライドと併せて導入されようとしているいわゆるキャリーオーバーは、毎年度のマクロ経済スライドが予定どおりに実施できなくても、その分を繰り越し、物価、賃金が上がった際にまとめて引くことができるようにする仕組みです。これも、マクロ経済スライドを強化し、年金の実質目減りを拡大して、年金の最低保障機能を突き崩す改悪にほかなりません。
 委員会審議では、本法案によって導入される賃金マイナススライドとキャリーオーバーという二つの仕組みが、安倍政権が二〇一九年十月に予定している消費税増税と一体となって国民に重大な被害を与える危険性を明らかにしました。消費税率が一〇%になれば物価や賃金の指標も変動しますが、その際、賃金マイナススライドやキャリーオーバーが発動することで、年金がゼロ改定、マイナス改定になる可能性を政府は否定しませんでした。消費税増税で市中の物価は大幅に上がるのに、年金は全く上がらない、あるいは逆に下がるという、高齢者にとっては悪夢のような事態が起こるのです。
 本法案では、更なる年金削減を進める仕組みの導入とともに、年金積立金管理運用独立行政法人であるGPIFの組織改編も盛り込まれていますが、今求められていることは、国民生活の安心を支える年金財政の安定に貢献する責任と役割を果たし、国民の年金を守ることです。ところが、安倍政権は、年金積立金の株式運用比率を倍増させ、年金積立金の運用を株価つり上げの道具にしました。国民の財産である年金積立金を危険にさらすことは許されません。
 参考人質疑では、年金積立金の株式運用で損失が発生した場合に、損失はマクロ経済スライドの長期化を通じて解消するしかない、三十年、四十年後にツケが回ってくる、今の制度は長期運用に対応していないとの意見が出されました。
 また、GPIFの自家運用については相当慎重に対処すべきとの意見や、根本的な疑義として、巨大な機関投資家が政府機関として存在すること自体立ち止まって考えるべきだという意見も出されたことを真摯に受け止める必要があります。運用で損失が出れば、そのツケは年金削減などで国民に押し付けられることになります。危うい投機的運用からは速やかに手を引くべきであります。
 そもそも、今の積立金を積み増すことを前提とした考え方そのものを転換する必要があります。年金積立金は年金支給開始年齢の引上げや年金抑制のマクロ経済スライドにより二〇四〇年まで増え続けることになりますが、積立金をためてきたのは現在の年金受給者にほかなりません。年金を減らされて暮らしの見通しが立たない中でも、将来世代のためにと今後も積立てを続けるというのは余りに理不尽ではありませんか。年金世代に辛抱と苦労を掛けてまで積立金を積み上げる必要はありません。積立金を維持し積み増すことを前提とした考え方は撤回し、給付抑制を回避する積立金の運用に転換する必要があります。
 国民年金は、四十年掛け続けても月額六万五千円であり、加入期間が欠ければ年金額はどんどん下がります。底なしの低水準の構造こそが最大の問題です。本当に必要なのは、年金財政の帳尻合わせのために貧しい年金給付を更に下げることではなく、老後の生活の基礎的な支えとなり、高齢世代も現役世代も信頼できる年金制度を構築することです。
 低年金の底上げと最低保障年金の導入、高額所得者の保険料上限の見直し、危険なリスクを抱えた積立金の運用の中止と計画的な給付への充当、現役世代の雇用、賃金の立て直しによる年金財政の強化など、本当の改革が求められております。
 最低保障もなく、際限なく減らされる年金制度を将来世代に残すわけにはいきません。年金カット法案は廃案にすべきである、厳しく指摘して、反対討論といたします。(拍手)